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探し人

「リリチヨ…いや、リリアナ様、我が命、貴方と共に…」


テンカが私の前に跪き頭を垂れる。………よっしゃーい!テンカが仲間に加わった!後はグレイティアを捕らえて…だけど、キーアイテムもないからなー…うーん。


「ありがとう、テンカ。共に魔王軍を打倒しましょう。先ずはグレイティアを捕らえーー」


轟音と共に私達の居る部屋の扉が開く。そこに立つのはボロボロな姿の死天王筆頭【這い寄る死】ゴッサム。そして【万物破砕の拳王】ガーファンクル•ドラクリオン、ダリアの父親だ。


「イヨォ、メスガキ。また会ったな…テンカ、俺様に刀を向けるとはどーいう了見だ、あん?」


「拙者は魔王軍を抜ける。せめてもの心尽し、筋は通す。そしてここに居るリリアナ様に仕え、お前達を倒す。そしてマオ様…マオも倒す!!」


「ほーう?ガーファンクル、こいつぁ面白くなってきたな?!」


「ふむ…テンカよ、自分の道を示す事が出来たか…だが、これからはお互い敵同士。元同胞と言えど容赦はせんぞ?」


「ハッハァー!ご機嫌じゃねえか!グレイティア、お前はテンカ脱退を許可するか?」


「イヤイヤイヤ!テンカっち抜けたら事務仕事誰がするの?!てゆーかあーしは絶対無理!断固拒否!」


え?事務仕事全部テンカに押し付けてたの?!そりゃクマが酷い筈だ。ツッコミが追い付かない。


なんか突然死天王会議が始まったんですけど…私置いてけぼり。。。


「へぇー。テンカ魔王軍辞めるんだ。うんうん、仕方ないねー。よーし、ボクが許可するよ。」


その声は突然、聞こえてきた。聞く者に安らかな気持ちを与える様な優しい声。

いずれ超えなければならない明確な人族の敵対者の王、マオ。

彼女は何処か悪戯っ子の様に嬉しそうな笑みを浮かべていた。


「ほう、マオ。我を超えたか。大事な娘がここまで成長するとは我も感慨深いものがある。テンカよ。良く決断してくれた。共に世界征服をしようぞ!」


はぇっ?!なんか急にプロヴィオンが生えてきたんだけど?!私召喚してないよ?この使い魔自由すぎじゃない?世界征服なんかしないよ?


「ハッ!プロヴィオン様。共に主に世界を渡しましょう!」


「プロヴィオンだ。今は我と貴様は同格、そして同じ主に仕える身だ。過去は流し、今を生きようぞ!」


「承知!リリアナ様、先ずは撤退を。死天王三人と魔王相手では幾ら私とプロヴィオン、リリアナ様でも流石に分が悪うございます。」


「オイラもいるっスよ!ほらほら、ミカエルさんもやる気出して!」


「えー?お仕事…嫌い。けど、安眠するには少し騒音が煩わしいや。リリちゃん、さくっとかたづけちゃおー!」


あれ?どうしてミカエルとイデオラが…あー、甲板で寝てたから送還してないんだっけ?でも丁度良い戦力は有れば有るだけ今の状況には有難い。


「ハッハァー!トカゲに天使たぁ随分な歓迎だな!俺様は一向に構わねえぜ?どうする、マオ?」


「うーん、流石に分が悪いかな。撤退撤退。じゃあねリリアナ。今度は存分にころし合おう?」


「チィッ…ガーファンクル、行くぞ。」


「ちょっと!テンカっち!あーしは納得してないんだからね!事務仕事いやだ〜!!」


「さらばだ!」


ニチャア〜、と効果音が着きそうな凶悪な笑みを浮かべたマオは腕を振ると空間が歪み、手を此方に振りながら闇の中へと姿を消していった。


とりあえずなんとかなった?いずれは倒さなければならないがまだ倒せる様なレベルにまでは至ってない。


「ふむ、去ったか。主よ。我等は常に主と魔力を通し繋がっている。そして我等はそれぞれ一定の能力を持つ実力者だ。主の危機には自己判断してこうして姿を現す。だから安心して世界征服しようぞ。」


「いや、世界征服なんてしないよ?だけど良かった、かなりピンチだったからね。」


正直、うちの従魔で一番常識人なのが大魔王ってどういう事なの?って思うけど、私の感知しない部分を補足してくれるのは助かる。世界征服なんて絶対しないけど!


「リリアナ様、もし差し支えなければ、拙者をリリアナ様の影に住まわせては頂けないでしょうか。一番危険寝所の警備、常日頃から護衛させていただきたいのです。」


テンカからの申し出。影に住む、というのはテンカの種族から来ている。

見目麗しく人と変わらぬ姿ではあるが、テンカは魔族、殺人幻影シャドウキラーの上位種族、無幻ファントムだ。あらゆる影という影を渡り歩き死角から対象を奇襲する本来は姿を持たないそんな魔族。今見える姿は死天王へと至った時、プロヴィオンから肉体を貰った…と、wik○で読んだ覚えがある。


なんて便利な世界だったのか。まぁこの世界での生活も気に入ってるけどね。


「うん、お願い。そろそろここも危ないし、消火してお城に戻ろっか。あー、でも帰りどうしよっかな…飛空艇、全部燃えちゃったし。」


「ご主人!そこでオイラの出番っスよ!大きな籠さえあれば二十人でも百人でも楽勝っス!」


「ありがとう、イデオラ。でも本来の目的は元の時代に戻る事で、マリアンヌ…時空系統の魔法持ちの人間を探す事だから、イデオラの案は一応検討しておくね。」


「うっす!オイラの力が必要な時はいつでも言ってくださいっス!」


そう。最大の要因は失踪したマリアンヌの捜索だ。

今頃どこで何をやっているのだろうか…世間知らずのお嬢様でおっちょこちょいで何処か目を離せない…そんな少女の姿を幻視する。


消火し、空港を出て王城へと向かい歩いていく。


「ねぇねぇリリちゃん。人探しならボクでも出来るかも。特徴を教えて?」


一人物思いに耽っているとミカエルから声を掛けられる。あ!そうかミカエルなら…! 

探知や捜索に特化しているミカエルならば直ぐに見つかるだろう。

私はマリアンヌの特徴を教えていく。大丈夫、原作の知識なら幾らでも覚えている。


「うーん。それだけ分かってるなら直ぐに見つかるかも!ちょっと待っててねー!……あ、見つけたよ!直ぐ近くにいるっぽい?てかリリちゃんの後ろ!」


「え?!」


振り返る。そこには岩の様な磨き上げられた鋼の肉体にアンバランスな燕尾服といった出立ちの顔を仮面で隠した大男と、その肩にちょこんと腰掛けた小柄な少女が蝶々の仮面を付け立っていた。


「紳士仮面さん?!どうして此処に?!」


「お久しぶりで御座います、リリアナ様。いえ…もう姿を隠すのはやめましょう…お嬢、お元気そうで何よりだ。」


「リリアナ様…!」


二人が仮面を外す。そこに立っていたのは私が一番信頼していた騎士と、現聖女の妹分だった。え…紳士仮面さんがジョセフ?私は驚きを隠せない。


「ジョ…セフ?マリアンヌも…」


「お嬢、俺達はお嬢を探して旅をしていたんだ。この呪いを解いてもらう為にな。」


ジョセフが服を脱ぐと炎の様な形の痣がその全身を侵蝕していた。マリアンヌも腕をちらっと見せて同様の痣を見せている。


「呪い?誰から…まさか、魔王軍?」


「いや、邪神アグラゲイルって名乗ってたな。夢枕に立たれて一方的に呪いかけると急に意識が無くなって気が付けば周りが血の海だ。俺は…この手で、メイとジュリアを…今頃ジョーズは俺を血眼になって探してるだろうな」


「そんな…!メイさんとジュリアが…!?」


メイさんとジュリアはジョセフの妻と娘。あんなに仲睦まじい様子だったのに…


「わたくしも似た様な境遇ですわ。偶々暴走したわたくしを止めて下さったのが騎士ジョセフで、もしも現れなかったらわたくしはこの手で弟妹を…恐ろしい事ですわ…」


「呪いを持つ者同士は惹かれ合う。そして邪神はこうも言っていた。『我を倒すか、多元宇宙より現れた真の聖女による祈りによってその呪いは解除される。捥がけ、苦しめ、悲哀の感情は我を満たす』と。なに言ってんか正直分からねえが真の聖女、つまりお嬢の事だ、と俺は勘付いた。しかしお嬢は居ない。ならば時空魔法を使えるマリアンヌ嬢の力を借りれば、と俺は思い付き王都に向かった。」


「そしてこの時代に呼んだのはわたくしですの。それ以降使えなくなってしまいましたが…騎士ジョセフも大剣術を封印されて今は双剣を使って居ますの。五年前、リリアナ様がバルッセ公国で魔王軍の幹部と戦っている時に呼んだのもその為でしたわ。あの日わたくしのせいでリリアナ様はお姿をお隠しになったのだと五年間自分を責め続けていましたが、今日この日の為にあったのだとするとスッと胸に落ちましたの。」


うーん、そういう事かー。あの時のマリアンヌはまだ時空魔法は使えない訳で、五年後のマリアンヌが私をこの時代に召喚した、というのが真相か。モヤモヤが一つ解消された。


「うーん、つまり私がその呪いを解呪すれば良いって事?ていうかそれって私に伝染したりしないよね?」


「あぁ、お嬢の近くに居ると呪いの疼きが和らぐ。普通の人間には伝染しちまうが聖女であるお嬢や、今この場に居る奴ぁ、純粋な人間は居ねえしな。ランゼやナナリア王女に伝染したらお終いだからお嬢が一人、かつ人間が居ない時に接触しようと機会を伺ってたんだ。この仮面は聖遺物から作られている。仮面をしている間なら普通の人間と多少の会話くらいは出来るしな。」


「そうですの。最初の頃は人里を避けて移動して各国の遺跡を回って居ましたの。この仮面もガルム帝国の遺跡で見つけたんですのよ!」


マリアンヌが仮面を私に見せながらそう告げる。


「おっと、マリアンヌ嬢。こっから先に人の気配がする。多分巡回の衛兵だろうよ。そろそろ離れるぞ?」


ジョセフがマリアンヌの肩を掴み忠告する。私は去ろうとするジョセフを慌てて止める。


「ちょっと待って!えーと、つまり仮面をして居ないと他の人の前には現れる事は出来ない、と。飛空艇が使用不可能になってしまったから暫くはクーロンに留まるつもりだけど予定変更する事が有るかも知れない。…テンカ、お願いが有るんだけど、ジョセフ達と行動を共にしてくれる?連絡役になって欲しいんだ。」


私は焼け焦げた空港跡地を振り返りながら告げた。


「でしたら拙者の能力、《影移動》で主とジョセフ殿の影を繋げ行き来すると致しましょう。如何でしょうか?」


「うん。テンカが適任だと思ったから全部任せるよ!お願いね?」


「はっ!」


「へへ!頼れる配下じゃねえか、お嬢!じゃあ近いうち、このテンカの嬢ちゃんにこっちの近況を伝えるぜ。またな!」


「うん、テンカはもう私の大事な仲間だよ!魔族の動きが活発になってるから気を付けてね!またね、ジョセフ!マリアンヌ!」


こうして私達は一度別れた。この先不安も有るけど、何とか探し人を見つける事が出来た。一歩ずつでも前に進んでいこう。その先にきっと未来はあるのだから。



…終わりませんよ?


次回から三章三部に移ります。

邪神アグラゲイルとは…?!

リリアナは無事に元の時代に帰る事が出来るのか…?!

活発化した魔王軍の動向は…?!


その辺も後々明らかになっていくでしょう。


次回更新は12月下旬頃を予定しております。

更新日はツイッターにて報告しますのでお楽しみに…!


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