表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/232

飛空艇上の戦い

んげぇー、グレイディアッ!?


そのうちまた出会うだろうとは予測していたけど早すぎない?!一ヶ月も経ってないないんですけどぉー!!ま、まぁ、戦うとは分かっていたから過去げんさく記憶こうりゃくほうを思い出して必要な道具は用意してあるんだけど…即席の対応策で何とかなるだろうか。


イデオラとミカエルは面白そうだとプロヴィオンに付いて行っちゃったしどうしようか?


「姉さん!僕はどう動けば良い?姉さん、聞いてる?」


「アレはグレイティア•フルバスター、魔王軍の最高幹部の一人よ!それとさっきのハーピーの上司ね。」


「えぇッ?!!」


「魔法特化型で防御も固い。四元素は無効だし、武器での攻撃にも耐性を持っているわ。皆は少し下がってなさい。」


死天王最弱だと言われているけど一軍を任せられるくらいの力は備えている。元素四属性(火水土風)魔法は完全無効、打撃、斬撃、刺突にも耐性が付いているし、高いヒットポイントまで持っている。実は他の死天王のヒットポイントを合わせてもグレイティアの半分にも届かない。カッチカチの上にバカスカ超級魔法を全属性使い熟しおまけに空を飛ぶ高機動要塞という訳だ。


「アハァー!?あーしを無視するなんて生意気ぃー!ぷんすこスコティッシュフォールドなんですけどぉ!この前のゴリマッチョマスクは見当たらないみたいだけどまぁいいわ…おチビちゃんだけで我慢してあげるぅー?」


「姉さん!危ないッ!?」


おっと考え呆けてる場合じゃなかった。

私は上空に跳び上がると《喜望峰》を抜きグレイティアに向けて振り下ろす。

途中で飛び込んで来たマシューは邪魔だったので足蹴にしておく事も忘れない。

ジョセフに勝つくらいだからレベルもそこそこ上がってる筈だ。


「シィッ!!」


「危なッ!?あーしの美しい髪の毛が切れちゃったじゃない?!ちょこまかちょこまかとぉー!この借りは返して貰うわよ?おチビちゃん!!」


チェッ…避けられたか。《喜望峰》の能力を発動し木の根を背後からグレイティアに襲わせる。拘束出来れば良かったんだけど逃げられてしまった。植物系統は四元素属性の枠組みからは外れているので効果はあるかなぁと思ったが擦り傷一つしか与えられなかった。


「ふぅ…どうやらあーしも本気を出さなくちゃいけないみたい…あんまり美しくないから使いたく無いんだけど…やるしかないか…」


瞬間、途轍もない圧力が私を襲う。低く冷たい声…この世の者とは思えない声だ。


パキパキパキ…と音を立てて人骨で作られた翼を背に携え白のドレスが髪色と同じ真紅に染まる。グレイティアの奥の手、《真紅状態スカーレットモード》だ。


ブォンーーと耳に風切音が聞こえた時には私の頬に浅い裂傷が出来ていた。治癒魔法で治しながら振り返り、私は背後に迫るグレイティアに向けて《光条収束砲フォトンレイザー》を放つ。今の私が使える最大火力の光魔法だ。


「マシュー!何でも良いから光魔法でグレイティアを狙って!光魔法を使える人が居たらお願い!」


私の声に即応するマシューに遅れ、レイン、リアーナちゃん、リビー、タニアちゃんが《光玉弾ホーリーボール》を放つ。所々命中してはいるが防御が高い上にヒットポイントまで高い。だけど、攻撃は徐々に効いている。


実は《真紅状態》にこそ攻略の糸口はあるのだ。通常時に比べて《真紅状態》は所謂狂化状態で攻撃力は上がるが耐性が少し下がる。攻略サイトの検証班によると8%から14%近く下がるらしくグレイティアを倒すRTAリアルタイムアタック動画が一時期ネットに上がっていた。普通に攻略するなら一戦で三十分から三十五分程で、早々にグレイティアを怒らせ《真紅状態》にした場合だと大体二十七分四十秒が世界記録だったかな?


皆が攻撃してくれている間に私は紳士仮面さんに貰った二つのオーブを取り出した。ビビの特殊能力《物品鑑定》によると赤いのが《溶熱宝珠レッドオーブ、白いのが《破邪宝珠ホワイトオーブ》という名前だけ分かった。ビビ自身のレベルが低いのとあまり能力を使わなかった弊害だろうけど、名前さえ判れば十分。私はこのアイテムを知っていた。


「ふぅ…やりますか。【合成】」


喜望峰と二つの珠のうち白い方、《破邪の珠》を合わせる。トクン…と鼓動するように喜望峰が震え、魔力を吸われる感覚と共に白い宝珠は吸い込まれるように消えた。刀身は白と翠のマーブル模様になり波打つ黒の刃紋が美しい。直剣だったのが少し反り返り曲剣シミターぽくなった。銀色に輝く柄に手甲ハンドガードが付き、その中心には黒い薔薇の装飾が施されていて重さが少し増した様に思える。使い方は…うん、頭にスッと浮かんでくる。これなら使い熟せそうだ。


「とりゃー!!」


生まれ変わった喜望峰を構え全速力で駆け出す。走りながら詠唱し身体強化も忘れずに掛けておくのも忘れない。魔法攻撃を受けて意識の蚊帳の外に居た私に気付く前に渾身の横凪ぎ払いを放つとグレイティアの背にある骨翼の一部が塵となって消えた。まだッーー!!


「シィッ!ハァッ!」


正面からは魔法、後面からは私の連続斬撃を受け、見る見る弱っていくグレイティア。そろそろカウンターが貯まるはず…よっし!四十八回目の斬撃で残っていた骨翼は完全に消滅し、白銀のいばらがグレイティアを拘束する。


「《吸魔棘ドレインソーン》」


「な、何よコレ!あ、あーしを捕らえるつもり?!」


取り乱すグレイティアだがそれでも一部は冷静さを保っているのか、四方八方に向かって魔法を連続発動している。白銀の棘が時々光っているのは魔力を吸収しているからだろう。吸収した魔力は持ち主である私に供給されている。


「はぁ…はぁ…何よアンタ?前に会った時はこんな強くなかった筈…なのに何故?!」


「降参…する?」


「ふぅ…分かったわよ、あーしの負け。だからコレ解いて?気持ち悪くなってきた…ウッ…」


「ルル、魔法無効拘束縄具アンチマジックロープはある?」


「ええ、同志の命令通り開発は進めていたわ。完成品も飛空艇内に常備してある筈。」


ルルが持ってきた魔法無効拘束縄具で縛ったグレイティアから白銀の棘を解除すると個室に閉じ込めた。これで一応の危機は去ったが、まさかグレイティア相手に殆ど被害無く完勝出来るとは…


「ふぅ…色々あったけど、これだけは言っとかなきゃね?皆、ただいま!」


「リリィ…!ウゥッ…どれだけ心配を掛けさせるのですか…バカ…」


レインが私の声を聞くと同時に私を抱き締める。甘い花の香りと共に柔らかい感触が私を包み込む。温かくて懐かしいけど新鮮な感触だ。


「ダァーッ!レイン!どんだけリリィを独占するつもりだよ!オレ達にも回せっての!」


「ヒック…だって…リリィが…」


ユグドラちゃんがレインの首根っこを引っ掴むと後ろに連れて行った。どうやら感激したレインを宥める貧乏籤を自ら買って出てくれた様だ。ありがと、ユグドラちゃん。お礼は後で。


「リリィちゃん!むぎゅーッ!」


「リリィ、おかえり。」


「リリアナさん、きっと無事だと信じていました!」


「リリアナ殿!更に研鑽を積んだ様だな!ハッハッハ、これは手合わせを願わずには居られないな!」


タニアちゃん、アンちゃん、イシスちゃん、サレナちゃんが私を囲んでもみくちゃにされる。ヒロイン中一位と二位の発育の良い大っきいお胸とあまり育たなかった残念パイが私に当たる。


柔らかい!固い…柔らかい!固い…何この天国と地獄。最高かよ!



「つぎはボク達。リリ、おかえり…なさい。ん。しんちょー、追いついた?んふーッ!」


「ちょっ…腕を引っ張らないで下さる、オリヴィアさん!?えっと…リリアナさんお帰りなさい。こうしてお会い出来るのをお待ちしてました!」


「同志、いつ見ても楽しそうね。皆心配してたみたいだけど私はしていなかったわよ?だって信じていたもの。」


「うおっ、とと!ハハァ、何言ってんだルルイア?二年は取り憑かれた様に死者蘇生の禁忌魔術を研究してたってのに!うぉ?いきなり魔法を打つな!止めろって!」


四公女がタニアちゃん達を押し退けて私の前に並ぶ。リビーは相変わらずゆっくりと話しながらも私と背比べをしているのか手を頭に当て背伸びして何故か鼻息荒く勝ち誇っている。何この可愛い生き物、可愛すぎ(語彙力皆無)だけど、背伸びしてるんじゃリビーの負けだよ?そんなところも可愛らしいんだけどさ。


リサーナちゃんは過去三回くらいしか家に招いてないがそれでも記憶はあるらしくモジモジしながらもリビーに手を引かれながらおかえりなさいと言ってくれた。


ルルとユグドラちゃんは相変わらず仲が良いみたいで見てて和む。


やがて四公女が傍に移動して私の目の前に二人の男女が立った。


「リリィお姉さ…リリアナ様、お待ちしておりました。こうして再び眼前にてお会い出来るとは夢にも思いませんでした。」


「モガも素直じゃないな。こんな時くらい甘えたら良いのに?」


「坊っちゃまには言われとうございません。それに甘えるならば、二人きりベッドの上…こほん、もとい必要に応じてするつもりです。坊っちゃま、私は坊っちゃまの様に強くありません。こうして虚勢を張らなければ惨めに泣き喚いて居たでしょう。それもこれもリリアナ様にご指導頂いた賜物です。そして以前から言っていた通り私の主人はリリアナ様ただ一人ですから。それと軽々しくモガと呼ばないで下さいませ。」


「んー、相変わらず毒舌だなぁ、モガは。ふぅ…なんか色々有ったけどこうして姉さんの顔をもう一度見れて安心したよ!元気そうで良かった。」


マシューとモガの主従?漫才を見ながらも自然と笑みが溢れた私はモガを抱き締める。二人きりで甘えたいなら後で沢山甘やかすからもう少し我慢しててね?モガを離し、私はマシューの前に立った。ニヤリと笑うとマシューは怒られると思ったのか、体を強張らせた。が私の口をついたのは怒りの言葉では無い。


「ん、まぁね。アンタも相当頑張ったみたいね?偉い偉い。」


「ひっ?!…ね、姉さん…?」


手を上げた私に殴られルルと思ったのか顔の前で腕を交差させていたマシューは拍子抜けた声を上げる。が、私はその後を続けた。


「でもね…少し言わせて貰うけど…皆を巻き込むのはあまり感心できないわね?全員学生の身分でしかも爵位の高い子女と当主ばかり!今頃王都は大パニックよ!?アンタは後先考えずに周りを巻き込んで!怪我人が出たらどうするの!?それと重力魔法の練習をサボっていたわね?私言ったわよね?絶対に必要になるって!大体アンターーー」


マシューへのお説教を二時間ばかり続けていると飛空艇はいつの間にかクーロン王都リンシャルへと辿り着いていた。


当初はリサーナとグレイティアをぶつける予定でした。題して《あーし対あーし》!ドーーン

うん、ややこしくなりそうなので没案にしました。ちょっと書いて見たかったけど…


さてリリアナの主武器《喜望峰》ですが、少し解説を入れておくとーー


元々《緑樹宝珠グリーンオーブ》によって植物属性を持っていたんですが、聖属性の《破邪宝珠ホワイトオーブ》と融合して聖樹属性となりました。


正式名称は《喜望峰•イグドラシオン》となります。その内本編で出すつもりですが。


主な能力として攻撃対象に対して連続して攻撃を加えれば加えるほど威力が上がりキーワードを唱えると聖属性の棘で対象を拘束し、魔力吸収を行う、という性能です。

斬撃回数計スラッシュカウンターというものがあり、斬る度に貯まるポイントに応じて吸魔棘ドレインソーンの効果が増減します。

普通は十回も斬りつければ妥当なのですが、今回の相手が固さと高魔力のグレイティアだったのを考慮し多めに斬りました。


また、棘で拘束した相手を更に攻撃し続けると…!?続きは本編にて語りますのでご期待ください。


不死系魔物に対して特攻のおまけ付き。



さて…私事ではありますが、先日フォークリフトの免許を取りまして、ただでさえ忙しかった仕事が更に忙しく心身共に疲れ果て、食事も一日三食しか喉を通らず、大好きなビールも一日三本しか飲めず、夜しか眠れません…


執筆時間が日曜の夕方以降くらいしか取れません…遅々としか進みませんがゆっくりじっくり書いていくつもりです。こんな作品ですがお付き合い頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ