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襲来

マシュー達と合流した私はそのまま飛空挺で移動することに決めた。前甲板は広く設けられておりイデオラが前肢を交差してゆったりと休んでいる。急速移動したからか疲弊しているらしく、疲れたっす~等と言っており私は水魔法で大量の水分を取らせた。


「お疲れ様、イデオラ。ゆっくり休んでね!」


「お水ありがたいっすー!オイラはなんて幸運なんだ!こんな優しい召喚主に恵まれるなんて…うぅ…感激っす…!姉御と呼ばせて欲しいっす!」


「あはは、大袈裟だなぁ。まぁゆっくりしてて?戻りたかった何時でも言ってね?」


「姉御、分かりましたっす!」


何か舎弟感が益々上がったがこれでも竜を統べる真の覇竜なんだよね…多分この飛空挺に乗ってる全員で攻撃しても毛ほどもダメージを受けないだろうな。プロヴィオンやミカエルなら対等に渡り合えるだろうけど、敵対する意味なんてないし、私に従がってくれるのならそれで十分だ。


「リリーちゃんー。ボク疲れちゃったからここでお昼寝しても良い?」


地味に活躍していたのはミカエルだ。イデオラが取り零した魔物を聖波動という技で次々と仕留めていった実力、槍を持たせても一流、更には天使団召喚という切り札も持っている。殲滅力は私の使い魔の中なら一番だろうな…おぉ、怖い…こんなに可愛い見た目してるのになぁ。


「良いよ。後で運んであげるからイデオラの所で寝てきな?イデオラ良いよね?」


「もちろんっす!さぁオイラのお腹の所に来るっす!ここは鱗が薄いから寝やすいはずっすよ!」


「わーい!イデちゃんもリリーちゃんもありがとー!大好き!」


きゃっきゃっとはしゃぎながらミカエルはイデオラのお腹の部分に寄りかかり数秒で寝息を立てた。あれでも三つある熾天使団の一角を担う第一熾天使長

で最も神に近い存在なんだよなぁ。愛嬌振り撒いてるから全くそうは見えないんだけど。


「ふむ…小娘よ。ハーピィを捕まえて来たぞ。次に我はどうすれば良い?」


一番規格外で扱いに困る魔王…元魔王か、プロヴィオンが私の背後に立つ。基本的には命令というかお願いをすれば従ってくれるので凄く助かっている。マオに魔王の座を譲って南大陸で暴れまわってたってどれだけ頭魔王なの?脳細胞一欠片取ってみても全部が魔王色してそう。どす黒くて赤とか金が混ざっている感じ。


「うーん、とりあえず待機…かな?それとも送還する?」


「いや、よい。このままだ。何やら少々懐かしい気配が近付いてきて居るようだ…クク…我の魔力に釣られてきたか…?」


「え?誰か来てるの?」


その時、私とプロヴィオンの前にザザッと音を立てて降り立つ一人の姿が。捻くれた角、大鎌、そしてケヒヒッ、という特徴的な笑い声。ゴッサムである。


「いよぉ、魔王様!…と、俺様を時空間魔法で飛ばした小娘じゃねえか…?何で二人が一緒に居るんだ…?」


理解出来ないという風に首を傾げるゴッサム。私の額から冷や汗が流れていく。此処で戦うのは不味い…不味いが、これはチャンスでもある。覇竜イデオラ、熾天使長ミカエル、プロヴィオンというこの世界でも有数の実力者が集っている。というか全員私の使い魔だ。一言命令すれば攻撃することは可能だろう。


「フッ…ゴッサムか。何しに来た?我は既に魔王を娘に譲った隠居の身、貴様には我の最後の命としてマオの助力を頼んだ筈だぞ?」


「あン?お嬢なら既に俺より強くなっちまってお守りなんかいらねえくらいだぜ?ありゃ、すげぇ。帝王を体現したかのような方だ。例えば其処にいる蜥蜴や見てるだけで胸糞悪くなる天使なんか執務の片手間に相手しちまうだろうな…カカッ!魔王様、アンタも例外じゃねえぜ…?」


「奴の本質は我が良く知っておるわ!もう一度問おう。ゴッサム、貴様何のために我の前に姿を現した?」


ゴッサムはニタァ、と笑い当然の事かのように宣言した。


「おいおい…正気かよ?俺様の願いは只一つ…!そりゃ魔王様、アンタを倒して最強になるためだ!」


「ほ…う?吐き出した唾は飲み込めんぞ?」


「へへっ、上等だぜ!掛かって来な!」


え?え?何か私、スゴい空気なんですけど…!一難去ってまた一難…いや、厄災がバリューセットで私の前に姿を現したって感じだ。どうしよ…?助けてぇ、ジョセえもん~!




「ーーん?」


「どうしたんですの、騎士ジョセ…オッホン!紳士仮面?」


「いや、多分気のせいだ。だが…お嬢に呼ばれた、そんな気がしてな…」


「そうなんですの?そういえばそろそろ着いてもおかしくない頃合いですものね。」

確かにマリアンヌ嬢の指摘する通りお嬢の率いる一団が姿を表してもおかしくはないが未だに城壁の上からそれらしい姿は見えない。


お嬢…一体何があったんだ?



ジョセフを呼んでも来るわけないので私はゴッサムの一挙一動を余すことなく伺う。最悪飛空挺を放棄し、イデオラに全員を乗せ待避することも視野に入れる。


ゴッサムやプロヴィオンはやる気満々なのか構えておりどちらかが動き出した瞬間がこの飛空挺の末路だろう。


「プロヴィオン、ゴッサムと遠くに移動できない?このままじゃ飛空挺ふねが沈んじゃう。」


「ふむ…良かろう。ゴッサム移動するぞ?貴様とて死合いに邪魔が入る様な状況は嫌であろう?」


「ハンッ!俺様としてはどっちでも構わんが、まぁ、いいぜ?従ってやるよ!」


そう言い終えると共にゴッサムは飛空挺から飛び降りた。プロヴィオンも後を追い飛び去った。


えっと、ここ上空二千メートルは有るんですけど…まぁ、怪獣大合戦はほっといて急いでここから待避しなくちゃ!


「ルル!リンシャルに向けて全力前進ッ!此処に留まってたら化け物達の喧嘩に巻き込まれるよ!?」


「分かったわ、同志!目標リンシャル、全速前進!全員近くのものに掴まりなさい!」


私の声を聞くや否や私の知らない声を張り上げた勇ましいルルの言葉に全員が従い近くのものに掴まっている。


「うひゃあ!」

「キャアッ!」

「あぶべひッ!」


色々な驚きや呻き声やらが聞こえたが飛空挺はどんどん速度を上昇させていく。見る見るうちにガルム帝国から距離を離しリンシャルが見えてくる。しかしまだ危機は去っていなかった。


「アハァ~!見ィ、付けたァ…ッ!」


【絢爛にして豪胆】グレイティア•フルバスターが私達の前に姿を現したのだった。

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