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乙女は竜の背より降臨す

とりあえず事情をイデオラに説明した私は背中に跨ると移動の準備を開始した。ランゼに事情を説明して伊座飛び立とうとしたその時、リンドブルム何故か送還した筈のプロヴィオンとミカエルまで付いて来ると言うのだから不思議だ。


「この様な面白そうな催し、参加しないなど勿体ないわッ!我を連れていけ!」


「んー僕はリリちゃんと一緒が良いな?ダメ…かな?」



プロヴィオンはほっとくとしてミカエルにそんな事を言われては仕方ない。あどけなさの残る中性的な顔立ち、サラサラした白の髪にまつ毛が長くサファイア色の瞳は吸い込まれそうだ。こんな可愛い子にお願いされたら仕方なかろう。


「しかたないなー。だけど勝手な行動は禁止、私の言うことはちゃんと聞くこと!良い?」


「はーい!リリちゃん優しいから好きー!」


むぅ…ここで送り返すのは簡単だけど、友好度のパラメーターが下落して天界から天使軍団を召喚されては大地がクレーターになってしまう。ここは友好度稼ぎに徹底しよう。まぁ、あるのかも分からないんだけどね、そんなパラメーター。


「じゃあイデオラ、お願いしても良い?」


「オッス!そんじゃ行くっすよぉー!」


イデオラが浮上し、気づけば地面があんなに遠くに…どんどん加速していき景色がどんどん流れていく。イデオラの心遣いか全く風の抵抗を受けない。ポケーッと景色を見ていると魔王軍領土近くの上空にて巨大な飛空挺が魔物に襲われているのを確認した。


「イデオラ、あの魔物の群れに突っ込んで!」


「おっしゃー!任せるっすよー!」


イデオラの咆哮と共に私達は魔物の群れに突っ込んだ。



「もう…ダメかも知れない…」


姉さんとの通信指輪が途絶え僕は姉さんに伝えられた指示をルルイア師匠とイシスさんに伝えた。僕も重力魔法で応戦するけど、敵の指揮官であるハーピィはひょいひょいと僕の魔法を避け、無駄な消耗ばかりしてしまう…僕の魔力もすっからかんでルルイア師匠とイシスさんの消耗も激しい。このままでは…


「アハはハハハ!ソンな攻撃当たラないヨ!ふぁイアーばード、突撃!」


「クッ…リサーナさん、お願いします!」


「フフッ、あーしに任せんしゃいッ!《光り輝く我が勇姿(あーしを無視するな!)》」


しゃなりしゃなりと、落ち着いた佇まいのリサーナさんが自身に強化魔法を、敵に弱体魔法を放つ。軌道を変えリサーナに特攻するファイアーバードの群れを横から現れたレインさんとユグドラ…お姉ちゃんが次々と切り捨てていく。サレナさんも加わり上手く凌げたが、いつまでも持つとは限らない。


「キャー!離しなさい!離してよ!マー君助けてぇ…!」


「タニアさんッ!」


その時僕に助けを求める声が。タニアさんが指揮官以外のハーピィに捕まり、上空へと連れ拐われてしまう。


タニアさんは僕に助けを求めてきた。こんな無力な僕に。その瞬間僕の視界が真っ赤に染まる気付けば僕は空を飛んでいた。僕の左腕には柔らかな感触が…タニアさん?!


「マー君、ありがと!でもどうするの?このままだと私達地面に真っ逆さまだけど…」


「クッ…ルルイア師匠!助けて下さい!」


僕はルルイア師匠へ視線を向ける。今にも魔物の群れに襲われそうなルルイア師匠がそこまで大きくない声量だが良く通る声で叫ぶ。


「今は無理、自分でどうにかしなさい。」


無慈悲な宣告。だがしかし、僕も無理を言った自覚はある。だから少しでも足掻いて見せよう。


「重力魔法…姉さんは極めれば空をも制す…って言ってたけど…」


僕にはそんな方法思い付かない。だけど、何故か先ほどすっからかんになった魔力はいつの間にか回復していて頭がスッキリしている。精神状態も良好。左手には守るべき人を抱えている。


「やるしか…ないよね…?」


僕はゆっくり息を吸い込み、吐き出す。姉さんが残してくれた言葉、重力魔法は空をも制す。ーーーそれが意味することは…加重ではなく、軽減だ!


「《反重力化アンチグラビティ!!》止まれぇーー!」


僕に掛かっていた圧力が無くなる。身体が落ちていく感覚が消え自由に動けそうだ。今なら空を歩ける…気がする。



「ふぇ?!マー、君?お空を歩けるの?スゴいスゴーい!」


「ちょっ!タニアさん暴れないで!お願いだがら大人しくしててください!」


はしゃぐタニアさんを落ち着かせようと声を掛けるけど、興奮したタニアさんは僕の腕の中でもがき暴れていた。


何とか宥めすかすと僕は大きく跳躍し飛空挺に降り立つ。タニアさんをアンさんに預けると僕は未だに効果が続いている《反重力化》を使い魔物の群れへと突っ込んだ。同じタイミングで漆黒の竜が魔物の群れへと突進してくる。すれ違い様、僕は見つけてしまった。


「姉…さん!!」


「あら?重力魔法、使えてるじゃない?言ったでしょ、アンタは出来る子だって!」


まるでこの五年間の空白を無かったものの様にそう言ってのける姉さんは何も違いを感じさせず自然体のままだ。僕の気持ちも知らないで…戦いが終わったらいっぱい甘えよう…!僕はそう決めた。


竜の背から舞い降りた姉さんは飛空挺へと降り立った。その姿は居なくなったあの日から何も変わらない。僕の、僕達の姉さんそのままだぅた。


「リリー!」

「同志!」

「リリーちゃん!」


「へへへ、皆久しぶりー。再会を喜びたいのは山々だけど、先にアレかたづけちゃおうか?《百式火弾幕バルカンフレイム!!》プロヴィオン、指揮官のハーピィは生け捕りにして!情報を吐かせるから!」


「我に命令とは中々魔王遣いの荒い主よな…クククッ…これもまた一興ということか。良かろう、そこなハーピィよ。大人しく投降するもよし、抵抗するもよし。だが後者を洗濯した場合、我も容赦はせんぞ?」


「魔王サま…ナゼ人間の味方ヲ?…投降しまス」


姉さんの横に立った角が生えたおじさんがハーピィを一睨みするとハーピィはその場で蹲る。どうやら投降するようで姉さんが取り出した縄によって縛られあっさりと捕獲された。


姉さんが来てからの後処理は早かった。あれだけ沢山の魔物が群れを成して居たのに竜の一鳴きで半数以上が塵と化し消し炭となった。残りの半数以下も姉さんと共に来た、白い髪の女の子?が欠伸を必死にこらえながら気だるそうにかざした腕から放たれる衝撃波で土塊に変わった。これ程の人達を連れている姉さんは一体何処まで強いんだろう。僕には想像も出来ない…それでも、レインさん達に笑顔が戻って良かったと心から思える。




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