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使い魔の定義とは?

ゲイルホースに跨り揺れる事約四時間ほど、山と山の間にぽっかりと拓けた草原地帯にクーロン王国王都リンシャルは在った。北南は山、西は海、東は草原が広がっている。


「漸く見えて参りましたね!」


「そうだね、ランゼ。一度この辺で小休止を入れようか?」


「そうですね。私は少し周辺を探索して参ります。メルティ、フローラ行こう!」


「「はい!」」


うーん、どうやらランゼと二人の恋人達の中も順調そうだ。このままゴールインするのかな?まぁそれは私の預かり知らない所なので割愛!


リンシャルに着いたら宿を取って冒険者ギルドでボストンと合流して王城に向かう手筈だ。メイリーが歓迎の場を用意して居るらしく道中で伝令から報告を受けている。


武器を扱うのに邪魔だった通信の指輪を革紐で首に下げていたのだが、突然マシューからの声が響く。


『姉さん!姉さん?聞こえてる?』


「マシュー。どうしたの突然?こっちから連絡するまでしないでって言っていたのにしてくるなんてよっぽどの事よね?」


『あ、うん!えっと今ガルム帝国の魔王軍地帯の上空なんだけどね…その、怒らない?』


「はっきりしないわね。良いから先ずは簡潔に述べなさい!」


『あ、うん…実は…えっと…そのぉ…』


「何よ、はっきり言いなさい!」


『飛行系の魔物に襲われてるんだ。飛空挺には四公令嬢やレインさん達が居て…今頑張って僕とルルイア師匠、イシスさんで対応してるんだけど、数が…うあぁ!』


「マシュー!?」


『グッ…大丈夫。姉さんを迎えに行こうと思ってみんなでこっそり来てたんだけど、こんな事に巻き込まれるなんて、僕の責任だ…ごめんね、姉さん…』


「バカ!諦めちゃダメよ!アンタはやれば出来る子よ!ルルやレイン達が着いてるんだから負ける筈無いわ!」


『それが…物凄く強いハーピィの女の子が居て…僕の魔法やルルイア師匠達の魔法を尽く避けるんだ…それに、統率力が高くてこっちの魔法がちっとも当たらないんだよ…』


ハーピィ…もしかしてメリッサ?

でもここは原作と掛け離れた世界と言っても良い。確証は無いけど試して見る価値くらいはある…かな?


「そのハーピィ、もしかして全体的にエメラルドグリーンで足とか髪の先が赤くなってたりする?」


『えっと…うん!姉さんの言う通りの特徴だよ!それがどうかしたの?』


「なるほどね…マシュー、アンタ重力魔法はもう使えるの?」


『ウッ…ま、まぁ、少しくらいなら…』


「少しくらいならって…私、口を酸っぱく言ったわよね?重力魔法だけは重点的に修行しなさいって!重力魔法は極めれば空も海も制す事が出来る。その為にルルにも修行手順書を渡してあるし、レインには逃げ出すならシメてもいいって伝えてた筈だけど…」


『ご、ごめんなさーい!だってあれ、他の魔法と全く扱いが違くて…物凄く疲れるんだ…レインさん、僕の事嫌いみたいでグチグチうるさいし…』


「バカ!全部アンタの為にやってくれてるんだからアンタに文句を言う権利なんてないわよ!!」


原作で攻略を進めていく内に各プレイヤーがもっとも効率的に進めるためのマシューの育成方法は二通りある。


剣型と魔法型だ。


剣型は高い攻撃力、守備力、素早さで対ボス戦に重点を置いた型。


魔法型は高いMP、知力を生かした集団殲滅型と言った方が良いだろうか。


マシューには魔剣と重力魔法という二つの利点がある。その利点をどう生かすかによって原作の攻略にも関わってくる。例えば剣技型にすればサレナちゃんやレインと仲良くなりやすかったり、早い段階で七魔剣を入手出来たり…と、色々な特典があるのだ。



私が予想するに、多分剣技にのめり込んで魔法の方はおざなりにしてしまったと予想する。まだ原作の始まる一年前なのに、《アムスティアの宝剣》と呼ばれる作中最強キャラの内の一人、ジョセフに勝っちゃったみたいだしね。そのジョセフも今は行方不明だけど…


「とにかく説教は後!私も急いで向かうから何とか持ちこたえなさい!それとメリッサ…指揮官のハーピィは土属性に弱いからルルとイシスちゃんに伝えて!アンタはなるべく重力魔法で攻撃しなさい!」


『分かったよ姉さん!』


私は通信を解除すると一人考えを巡らす。ここからガルム帝国までは約500㎞、空を飛べれば楽なのだけど…


「リリィお姉ちゃん…?」


「大丈夫だよ、ナーナ。私が皆を助けるから、ね?」


「うん!リリィお姉ちゃんに任せておけば大丈夫だよ、きっと!」


心配そうに覗き込むナーナの頭を優しく撫でると年相応(私より年上…なんだよね…)な笑みを浮かべる。ナーナも剣技の腕は立つが、ここは私一人の方が良いだろう。ナーナはアムスティアの姫で王妹だ。今後の両国の関係を考えたら歓迎会には参加した方が良いだろう。


むぅ…何か、手はないだろうか?クーロンの王族に頼めば飛空挺の一挺くらいは貸してくれそうだが、理由を説明して人員を集めて、と時間が掛かりすぎるのは目に見えている。それに相手は魔王軍だ。死傷者を出しては今後の外交に亀裂が入る恐れもある。なのでこの案は却下だ。


何か…何かないかな…?



「ーーーあ!」


一つだけあった。空を飛べるかは分からないが一つだけ可能性が残っている。《使い魔召喚術》、私はまだ何も呼び出してはいない。ルルが呼んだ某TRPGのタイトルになってる蛸っぽい邪神みたいなのとか、サレナちゃんが召喚したグリフォンなどだ。


私は一旦見送りしたが、今なら良い感じのものが召喚出来るかも知れない。まぁ、私を乗せて空を移動できるのかは分からないが…他にやりようが無いのならば賭けてみても良いのではないだろうか?


私は皆から少し離れた場所に移動し、覚悟を決める。やるしかない…か。


「ーーーふぅ…よし!《使い魔召喚》!!」


文字と数字が光輝きながら浮かび、魔方陣が幾重にも形成されていく。それはどんどんと広がり直径十メートル程にまでなった。通常はここまでおおきくなったりすることはない。光の粒子が人を象っていく。ん?おかしいな…三つに分裂して一つはどんどん大きく。


二つは人型、一つは…有翼種の様だ。



「我を呼んだのは貴様か?小娘よ。ククク、マオに玉座を明け渡し強者を求め海を渡ってみたが珍妙な小娘に呼び出されてしまった…という所か?ククク、人生とは奇妙なものだな…!」


「あれあれー?お昼寝してたのに…ここどこー?地上?地上だよね!やったー!ボク憧れてたんだー!」


「ちゃっす!貴女様がオイラの召喚主ですか?オイラ西の山脈で頭張ってた覇竜っす!よろしくっす!」



魔王っぽいのと、天使っぽいのと、嫌に腰の低い覇竜。


これ全部私の使い魔ってこと?!!



「えーと…私はリリアナだよ!三人?とも、私と契約を結んでくれるって事で良いのかな?」


「フッ…この大魔王プロヴィオン・オーガスタ・シュブラス・エルフォンリートの上に立つというか…良いだろう小娘。中々面白そうだ…ククク!汝が契約、我が結ばん!共に世界征服を成し遂げようではないか!ハーッハッハッ!!」


「いや、世界征服はしないよ?大魔王…ここはプロヴィオンって呼んだ方が良いのかな?まぁ、よろしくね」


この人、原作のラスボスさんなんだよね…


「はいはーい!ボクはミカエルだよー!熾天使やってまーす!リリちゃんよろぴくー!」


「ミカエル、よろしくね!」


「オイラは…」


「貴方の事は知ってるよ、覇竜イデオラ。よろしくね?」


「オッス!」


ミカエル、イデオラは所謂ゲームクリア後のエンドコンテンツにて登場するキャラ達である。


《八竜大戦》、《天使の口付け》というタイトルである特定の条件を満たすとプレイ出来る。しかも二人?ともそのメインキャラクターというかラスボスである。他にも《悪魔の小競り合い》、《氷炎の双角》などがある。


プロヴィオン、ミカエル、イデオラ、三人が三人ともラスボスという共通点があるのだ。


「ぬぅ?そこの蜥蜴、中々強そうだな?よし、我が飼ってやろうか?」


「遠慮するっす!オイラの主はリリアナさんだけっすよ!ミカエルさん助けてくださいっす!」


「んー…ごめん、少し疲れたからまた後で相手してあげるー。」


「どうしてこうなったの…?」


誰か教えてくれませんかね…?私の漏らした呟きは風に掻き消されたのだった。

2021年08/3014時時点でブクマが777件…だと?!感謝感謝です!何か凄くご利益が有りそうでここまで頑張ってこれたのも皆様の応援のお陰です。ありがてぇ、ありがてぇ!これからも遅筆ではありますが自分のペースで頑張って参ります!宜しくお願いします!

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