病み上がりの温泉にて…
私!ふっかーつ!!
ナナリアが持って来てくれたというアムリタと高級回復薬によって万全の状態だ。まずは報告をしないとね!
「ランゼ!ランゼ居る?」
「ハッ!此方に!」
「体調が治ったから今日はゆっくり休んで明日からリンシャルに向けて移動するよ!準備をお願い!」
「畏まりました!既にメイリー様はフローラと共にリンシャル入りを果たして居ります。同行していたナナリア様が紳士仮面と名乗る者からアムリタと高級回復薬を渡され引き返したとお聞きしております。後程お礼を言った方が宜しいかと!」
そういえば回復薬や魔力回復薬はたくさん手に入ったのにアムリタだけは一つも手に入らなかった。ドロップ率がかなり低いか、もしくは特殊な条件が必要だったのかも知れない。そんな貴重なアムリタをポンと渡してくれる紳士仮面さんマジリスペクトっす。今度会ったらキチンとお礼を言わなければ…!
「ナナリアが紳士仮面さんに?良いなぁ、私も会いたかった!あ、ナーナは何処に?」
「はい、現在別で取った一室にてお休みになっておられます。夜通し看病したいと言われておりましたが、そこは私が止めました。大分疲弊していた様子なのでお休みになられているかと。」
「そう、ナーナは無理をし過ぎるから…それで良かったのかも。じゃあ明日でいいや!私の為に頑張ってくれたんだからちゃんとお礼しなくちゃ!」
「その方が喜ばれるかと。では私は諸々の準備が有りますので、これにて。不寝番にレイア殿を立たせていますので何か有ればレイア殿に言伝を。」
「うん、ありがと!ランゼもちゃんと休むんだよ!」
「鋭意努力します」
あー、これ休まないで無理する時のパターンだな。窓を見ると真っ暗だ。懐中時計は…あった。えーと、深夜二時頃か。少し温泉でも入ってこよーっと!メイリーに言われたのをなんとなーく覚えてるんだよねー。あ、そうだ!どうせだからレイアさんも誘ってみようかな!
「レイアさんー!居るー?」
「あらあら、どうしたのかしら?喉でも乾いたの?」
「ううん。それもあるけど寝汗が気持ち悪いから温泉に、と思って。良かったらレイアさんもどう?」
「あら、素敵なお誘いね!ご一緒するわ!」
よっし!おっぱい要員確保!
「ドロシーやシズさんはもう寝てるー?」
「ドロシーならまだ裏庭で剣のお稽古をしてるんじゃないかしら?シズは多分秘事を綴ってる時間帯かしらね。」
「ん?秘事?レイアさんは読んだことあるの?」
「ええ、少し前に部屋の掃除をしていたら出てきたのを少しだけ。とても詩的で個性的な日記だったわ。」
「じゃああまり邪魔するのも悪いしドロシーだけ誘ってみようか!」
「ええ、そうしたら私が呼んで来るからリリアナさんは先に向かってて?直ぐに私も行くわ!」
「ありがとうレイアさん!じゃあ後で!」
いそいそと着替えを用意して私は宿に併設されている温泉へ。確か宿は貸切状態だから誰も居ない筈だ。
いざやって来た温泉はファンタジー色の強い露天風呂だった。風呂釜には特殊な耐熱金属が使われ簀子が中に落としてある。
おおきな口を開けたライオンの顔から源泉が流れていて大きな石で囲まれた浴槽によく分からない葉っぱが辺りに敷き詰められていて木の椅子と桶があった。
椅子に座り体を洗っているとレイアさんとドロシーの話す声が微かに聞こえてきたので耳を澄ませる。魔力で聴力を強化すればやってやれない事はない。
「ほら!早くいつものやってよ!レイアもシたくてウズウズしてるんじゃないの?」
「ダ、ダメよッ///は、恥ずかしいわ!ここはホームじゃないのよ?!それにリリィさんも居るし…。」
「そんなこと言って身体は正直じゃない!ほら、胸も楽しそうに跳ねてるじゃない!何よそのデカパイ!…フ、フン!どうせ私は平均以下よ!まぁ、それは置いといて…フフッ…リリィもこういうの好きっぽいしきっと気にしないわ!一緒に混ざるんじゃないかしら?あの子も中々素質がーーー」
ふぉぉおお!
聴覚を強化し音を拾うと百合百合しいやり取りが聞こえてきた。
身体を洗ってる場合じゃない!
急いで身体を洗い流し風呂場と脱衣場を区切っている扉を開ける。と…
「仕方ないわね…けど、少しだけよ?最近上腕二頭筋が落ちてきてバランスが悪くて…」
「レイア、キレてるわよー!本当惚れ惚れしちゃう腹筋よね!って…あれ?リリィどうしたの?」
扉を開けるとあらゆるポージングを繰り返すレイアさんの腹筋を見て喜ぶドロシーの姿が。レイアさんの身体は鍛え抜かれておりまるで鋼のようだ。しかしお胸はたゆんたゆんである。どれ程の厳しい鍛練をすればあの肉体を手に入れるまでに至るのか…それを見ているドロシーは
ああ…ドロシーは筋肉 フェチの方でしたか…
「いや、あははー…お邪魔しましたー!」
ピシャリと扉を閉め移動すると私は湯船に浸かる。
なんか…年上の友人の垣間見てはいけない部分に触れてしまった様な微妙な気分になってしまった。
考えてみればただのレイアさんの筋肉鑑賞会だったのだろう。
自分のお腹に視線を移す。うーん…このままだと私もレイアさんコースまっしぐらなのかな?昔に比べて大分板チョコっぽくなってる…まぁ、そのときはその時だ。レインだったらそのままの私を愛してくれるはず。きっと、多分、メイビー……
「何や、リリィ?ショボくれた顔して…?体調も良くなったんか?なんかレイア姉やんが凄いポーズしてたけど何かあったんかな?」
トコトコと現れたマルシェラちゃんがそんな事を言う。人間見て見ぬ振りをするのも大事だよ、マルシェラちゃん?
「あ、マルシェラちゃん!起きてたんだ?ううん、少し未来の事を考えてただけ…大分体調も良くなったし、明日にはリンシャルに向けて動けそうだよ!レイアさんたちの事はそっとしておいてあげよう?ね?」
「ふーん、ならええわ!ウチもナナリアに言われてた資材の購入がさっき終わってやっと一息着いた所やねん。肩凝ったわー。」
絶壁だから揺れるものはないけど、大分疲れてるらしいマルシェラたんは肩を揉む仕草をしている。その顔色は少し青ざめていて体調が悪そうだ。
「大丈夫?顔色悪そうだけど…?
「なぁ、リリィ。ウチ、頑張っとるからご褒美が欲しいねん。」
「ご褒美?私に出来る事ならしてあげられるけど、なにが欲しいの?」
「リリィになら話してもエエよな…ヨシ…!あの、なぁ?ウチ、ゴッサムに魔人に作り替えられて吸血鬼やねん…病み上がりのリリィにこんな事お願いするのは最低やと思うけど…血ィ、今まで我慢しとったけど、限界や。吸血鬼に変えられてから古城では冒険者から吸っとったんやけど、辛抱ならんねん。ちょこっとだけ…分けてくれへん?」
可愛らしく小首を傾げ尋ねてくるマルシェラたん。少し成長したリビーを思わせるのは血筋だろうか。直接吸血鬼と言われたのは初めてだが、私は彼女が吸血鬼だったことを知ってる。原作知識からの流入ではあるが、年若い女性冒険者、あるいはアムスティア軍の女性兵士を捕らえてはその血を啜り渇きを癒す…というマルシェラたんの一枚絵を頭に浮かべた。
知っているのを察知されない様に驚いた表情を作りマルシェラたんに話し掛ける。
「そっか…私の血で良ければ良いよ?あ、ここじゃダメだよ?お湯汚れちゃうし!上がったら私の部屋に来て?」
「ええんか?リリィの優しさに付け込んで、ウチ最低やな…けど、これ以上は歯止めが効かんねん…もしかしたらウチ暴走して誰彼構わず襲ってしまうかも知れん…それが怖いねん…ビビやファニ、ネルを襲ってしまうのが…折角仲良くなれたのにその関係を打ち壊してしまうんじゃ無いかって考えるだけで夜も寝れへん…!こんな事頼めるのはリリィしかおらん…そう思うねん。。。」
「マルシェラちゃんのバカ!なんでずっと我慢してたの?私達友達だよね?もっと迷惑かけて良いんだよ?信頼していいんだよ?もしマルシェラちゃんが暴走したら私が絶対に止める!ていうか暴走するまで放置させない!私を信じて!」
「リリィ、ありがとなぁ!ウチはッ!ウチは幸せ者やッ!リリィ、大好きやでッ!!」
「ーーーッ!!!」
ガバッと立ち上がり私に抱き着くとマルシェラちゃんに唇を奪われる。
ファッ?!
レインにもまだ許して無いのに!私のファーストキスは強引にマルシェラちゃんに奪われてしまった。
何をされたのか理解した瞬間、レイアさんとドロシーが浴場へと姿を現す。
「あらあら…!まぁ…?」
「お邪魔したわね?ごゆっくり!」
「二人とも!これは誤解で…?!ちょっ、マルシェラちゃん!」
「ええやんか!ウチの思いが止まらへん!何度も言うで?リリィ、大好きやッ!」
「お熱い事で…!レイア、少し経ってからまた来ましょうか。」
「そうね、二人の蜜月を邪魔しては悪いものね?」
その後、マルシェラちゃんをどうにか引き剥がし、二人に吸血鬼の事を内緒に説明すると誤解を解いて何とか一緒にお風呂に入った。レイアさんのおっぱいを堪能して充電が済んだ私はマルシェラちゃんと部屋に戻るのだった。




