旅は道連れとは言うけれど…
「ただいまー!これお土産だよー!」
「キャーッ!」
ペイッとメイリーさんをベッドに投げて、帰還を告げた私はランゼに説明を簡単に済ます。
そのまま後を任せると汗を流す為浴場に向かった。
んー、少し狭いけどちゃんと掃除は行き届いてるみたいだ、+10点。
思わず長風呂をしてしまったが入浴を済ませて客室に戻る。
クロッカスやらフルルシカやら将軍に参謀までやって来た。
「カカッ!嬢ちゃんまたやらかしたなぁ?!作戦会議が無駄になったぜェ?」
「あーごめん。何かノリで攫って来た。後悔はしてない。」
「あ、貴方!話を聞けばアムスティアの貴族だって言うじゃない!どうして名乗らなかったのですか?」
「んー、気分?ちょっと悪ふざけしたかったんだよねー。リリアナ•アルデン•センティスですー、よしなに」
「ッ…!?この無礼者!わたくしを誰だと思ってますの?クーロン王国第三王女のメイリーですわよ?!」
「知ってるよ?でも激励に来た前線でうっかり捕まって、それを助けてあげたのに無礼者は酷くない?また敵さんの砦に捨ててこようか?それが嫌なら謝って?」
「グッ……!」
「まぁまぁお二人とも一度矛を収めなされ。今は姫様がこうして無事で戻って来たのを喜ぶべきだ。…少し腰を据えて話がしたい。会議室にご足労願えるだろうか?」
「んー。でもやる事やったし、明日には出発したいんだよねー。私も少し疲れたから眠いし」
「此処で手ぶらで返したと有ってはクーロン騎士の名折れじゃ。今晩は祝賀会をする予定だ!」
「えー?ムサいおっさんばっかの祝賀会なんて参加する意味ある?どうしてもって言うなら代理でうちの男連中参加させるよ。それより敵方の砦、今なら容易に攻め滅ぼせるよ?領地拡大のチャンスだよ?直ぐに兵士達を引き連れて攻めたら出世出来るよ?」
「ぬ…ぬぅ…それは誠か?ぜひ詳しい話を聞きたい!ささ、会議室へ!」
だー!この将軍めちゃくちゃ頭が切れるな…あの手この手で私を会議室へと連行したいらしい。だが私は負けない、リリィ強い子だもん。
「態々会議室に行かなくても此処で話すよ。メイリーさんを助けた時に敵兵がうじゃうじゃ湧いて来たから砦ごと水で沈めたの!その後、流石に死人を出すのは不味いと思ったから門を破壊して水を抜いてから帰って来たの!だから小国連合軍は今ボロボロな訳!はい、説明終わり!んじゃ私は休むから出てってー!」
「うむ…信じ難い話じゃが噂に名高きセンティス卿ならば、その程度片手間で終えるのだろうな。騎士の誉れは剣と槍だけと考えておったがそれは違ったようだの…国に打診し、今から魔法兵を育てるべきかのう…センティス卿、貴重な体験談を有難う。この年になって考えを改める機会を与えられたのう…人間、日々此れ勉強という事か…」
「はいはい、考えるなら他所でおねがい!私は休みたいのでっ!」
むぅ…これ以上将軍に居られたらズケズケと懐に入って来られそうな気がする。
背中を押して追い出して振り向くとそこには満面の笑みを浮かべた《ですわ姫》が…
ぬおぉッ!将軍に気を割いてたからメイリーさんのこと忘れてたァ!!
「えっと…何か?」
「旅をしているですってね?アムスティアまでお帰りになるのですわ?」
「そうだけど…何でそんな事聞くの?」
「私もその旅に同行しますわ。これは決定事項ですの!」
「ふぇあッ?!け、け、決定事項ってどういう事?!」
「貴方が湯浴みをしている間に父上…ゴライオス陛下に通信魔道具で救出された旨を報告したのですの。陛下は恩人には礼儀を尽くせ。さもなくば王家より抹籍するとの御達しですわ。更にクーロン王国の特別親任大使の役職も頂きましたの。お勤めを果たさねばわたくしは路頭に迷ってしまうのですわ…おーいおいおい…」
わざとらしい泣き真似の小芝居を挟みながらメイリーさんはそう告げた。
また同行者が増えるのか…それは仕方ないか…旅は道連れ世は情け、ってね。
ならば仕方あるまい、一度クーロン王都に寄ってメイリーの帰還報告とシュカの実家のある村を通るルートを改めて練り直さなければ。
こうなったら空挺の定期便を利用した方が早いかも知れない。
センティス伯の徽章を出して一台チャーターしたいな。猥雑な空の旅はご遠慮したい。
開発元はルルだしリモーネ商会が噛んでる筈だから多分いけるっしょ!コネは最大限活用しなくちゃねッ!
その辺もメイリーやランゼを交えて話さなければ。
そこまで考えを巡らせてから私は態度を改め、簡略化された貴人への礼を取る。
「畏まりました。仕える王家が違う為、膝を突き平伏する事はなりませんが道中精一杯御守りしましょう。」
「きゅ、急に何ですの?先程までの太々しい態度とは真逆じゃないですの?!気味が悪いので先程まで通りで良いですわ!」
「あいあい〜。んじゃ、適当によろしくー。出発は明日の朝、日が出て直ぐには出たいからそのつもりで!あ、ランゼ!紅茶を出して!喋りすぎて喉が渇いちゃった。」
「直ちに…!」
「あと甘いのもね?あ、マドレーヌお願い!」
「ご用意致します。」
「これはこれで何か嫌ですわッ?!」
んもぉ〜注文が多いな…そっちがいつも通りで良いって言うから直したのに酷いよ!
まぁ、私も軽いノリで接してた所は認めるけどさぁ。
「それと一つ言い忘れてましたわ!わたくしの身の安全はクロッカス中隊が随留するので問題ないですわよ!」
えっ?!まだ増えるの?!!
私はその場で少し頭を抱える事になった。
ニ〜三週間程日曜更新出来ません。
今のところ火、金で考えてますが変わる恐れがあります。ご了承ください。
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