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銀虎団の最後

ナーナが食事を終えた後私達は東門へと移動した。シュカとメルティに、ファニ達を預けてきた。このまま一気にダンジョン《豊穣の大樹海》まで行きたいが、そこはそれ。他の冒険者やフローラの公認であるギルドマスターに手柄を上げさせたいし、大手を振ってフローラを引退させたい。つまり利害は一致するのだ。銀虎団を捕縛出来れば貴族にも恩を売れる。一石二鳥と言うやつだ。


指定の時間になると冒険者やギルド関係者、衛兵隊の隊長が十名ほどを引き連れやってくる。手配書ビンゴブックとの照らし合わせや、報償金の手続きなども有るため同行することになった様だ。


人数が揃い、第一陣が出発する。人数は約四十名、銀虎団はナーナの情報によれば約百人はいるらしいが戦闘力は疎ら、此方は最低Cランクとある程度の基準設けている。それに私を含めSランクが三人、Aランクが五人居るのだ。負けることはないだろう。


「よう、リリィの嬢ちゃん?随分と物騒な集まりだな!カカッ、祭なら俺も参加させてくれよ!」


「あ、クロッカス!これから銀虎団の大捕物もするから暇なら手伝ってよ!人数がいた方が楽だし!」


「おうおう、構わねえぜ?鍛練ばかりしてちゃ脳まで筋肉になっちまう!たまには実地も悪かねえぜ!っつぅことだ、フルルシカ、ちょっくら行ってくるぜ?」


「はぁ…分かりました、部隊の事は私が管理しておきます。ですが、くれぐれも羽目を外しすぎないように…これから明日からの工程を詰める会議をしたかったのですが… (もぉ…) (隊長のばかァ…)


「すまんすまん!だが、命の恩人の力になれるならば俺は少しでも手伝いたいのだ!分かってくれるな、フルルシカ?」


(そんな目で) (見ないでよ…)…はぁ…分かりました。お気を付けて…」


「おう、じゃあ行くか嬢ちゃん!」


「う、うん、フルルシカさんまた明日ね!」


フルルシカさんも難儀だなぁ…さっさと告白しちゃえばいいのに。 


そのまま私達は後へ続き豊穣の大樹海へと向かう。最後尾をゆるゆると続くだけで楽っちゃ楽なんだけど普段ダンジョンに入らない衛兵やギルド職員も居るので時間だけが過ぎ去っていく。こんな大人数で捕縛に来たものだから逃げられては困る。うーん…仕方ないか、私は魔力を練り【泥沼男】を百体作り上げる。ひっ?!とか何事?!とか周りから悲鳴が聞こえるが、ランゼが私の魔法だと説明してくれる。今度はもう少し見た目にもこだわってみようかな?今のムンクの叫びみたいな顔じゃ余計な混乱をさせてしまうかも知れない。まぁそのうちやっておこう。


「見付けた。呑気にお酒を呑んでるよ。」


一時間が経過して泥沼男が銀虎団らしき一団が屯しているのを発見。油断しきって酒を呑んでる奴が居る始末で警戒されている様な気配は感じない。私達は今十二階だ、この人数でこれだけ早いのは私が泥沼男の道程を辿り先導し速度強化の魔法を使ったからである。実際効果は上がったし、移動速度が先程の三倍になったのだ。これで見つかるリスクも下がるだろう。


「んーと数は九十八人か…少し足りない?」


「頭と側近はもっと深層に居るかも知れない。リリィお姉ちゃん、私が先に接触してみる。」


「待って、私も一緒に行く。途中の道案内は任せて。」


ランゼに一団を任せて私とナーナは十五階層へと走った。捕縛隊は泥沼男を道中改良した指で行先を示す小さな女の子の姿をした案内人女ガイドガールと名付けたものを預けてきたので後からでも追って来れる。十四階層と十五階層の階段前に辿り着いたが銀虎団は階段を背に天幕を張っている。忍び込んでも良いが、頭と側近を先に見つけて雑魚は後続に任せるべきだろう。


「ナーナ、奥に進もう。頭と側近に逃げられちゃ意味がない。」


「分かったよ、お姉ちゃん!でもどうやって?」


ナーナが不思議そうな顔をして私を見て来る。大丈夫任せて!光と闇の魔力を混合し、身体に纏わせる。私自身に変化は感じられ無いがナーナは驚いた顔をしている。


「お姉ちゃん、何処に行ったの?」


「ここに居るよ。大丈夫、こういう魔法だから。今ナーナにもかけるよ」


ナーナの手を握り同じ魔法をかける。光学迷彩のアレンジ魔法だ。これ結構便利なのよね、お風呂とか寝室に潜り込むのに重宝している。まさか覗き以外にも使えるとは?!(本来の用途は覗きでは無く潜入や尾行であって、覗きを主目的とするものでは無い。また元来のこの魔法は精々が薄ぼんやりと認識されるものであって完全に姿を消すことは出来ない。)


「流石リリィお姉ちゃん!早く行こ?」


「わっ!ちょっ…!?音や匂いは消せないから慎重にね?」


(はーい!)


なるべく音を立てずに慎重に進んでいく。まぁ殆どの奴が寝ているか酔い潰れているので問題無いだろうが、何人かは酒を飲まず得物を近くに置き要心深く周囲を警戒している様だ。泥沼男を消しといて正解だったな、見つかったらこんなに上手くはいかなかった。寧ろ捕縛隊の奇襲がバレる可能性もあったかも知れない。


銀虎団の脇をすり抜け奥へ進む。完全に離れたであろう位置で光学迷彩の魔法を解く。また泥沼男を二十体召喚し、先の階層に放った。十五、十六階層に頭らしき姿はない十七…もハズレか。うーん、二十階層でボス戦でもしてるのかな?ん…?あ、見付けた!手配書にあった整った顔の眼帯の優男。うん、間違いない。取り巻き達も五人、数は合ってるっぽい。


「ナーナ、見付けたよ。手にドロップアイテムを持ってるからボス戦後っぽい。場所は十八階層の階段を上がって来てるからこのまま進めば鉢合わせるよ」


「分かったよ、リリィお姉ちゃん。どうする?進む?それとも待つ?」


「んー、どうせなら此処で待ってようか。泥沼男達に監視させとけば大丈夫でしょ!」


「分かった、じゃあ少し休憩しようかな。ふぅ…お姉ちゃんはアムスティアに帰るの?」


「うんアムスティアに行ってマリアンヌを探すよ。私のいた時代に帰るつもり。」


「そっか…またいなくなっちゃうんだね…?寂しいなぁ…」


「私が五年前に帰れば、この時代の私がナーナの側に現れる筈だよ。だからそんな顔しない…の!」


ナーナの頬を掴み変顔をさせる。思わず王女様が出してはいけない声を聞いて私は笑った。


「へびゅッ…!」


「あははは、変な顔ー!」


「お姉ちゃんがいきなり私のほっぺを掴んだからでしょ!うりゃ、お返し!」


「ほびょッ!」


「あははは!お姉ちゃんも変な顔ー!」


「やったなー、このぉー!」


ナーナの腋に手を滑らせ擽り始める。そしたらナーナも真似をして私擽って…一頻り大笑いをしてスッキリした様なナーナの表情を見てもう大丈夫そうと判断した私。此処がダンジョンじゃなくベッドの上だったら良かったのだが…まぁそれは帰ってからのお楽しみだ。そろそろ頭が十五階層に上がって来る。意識を切り替えなくては…




頭と幹部をあっさりと捕縛した私達は縄で縛り、猿轡を噛ませると天幕の方へ戻る。ランゼ達はまだ交戦中の様だが相手は雑魚、大した怪我人は出ないだろう。出ても私が治せるし、大丈夫大丈夫。思う存分たたかうが良い、ふははー!


頭との戦い?カットカット!迷彩魔法で近づいて足掛けて転がして首トンッ…で終わりたからね。いや、実際にやると結構難しいのよねこれ。顎殴って脳震盪させた方がまだ楽だよ!


「お嬢様、盗賊共の捕縛完了しました。」


「はいはい、頭と側近は少し行った所に転がしてるからそっちもお願いね。」


「畏まりました。」


予想通り怪我人もなく突然現れた冒険者達に混乱した盗賊共はあっさりと捕縛され縄で縛られていく。よーし、終わった終わったー。帰ったらご飯食べて早めに休もう。私はそんな事を考えながらも盗賊を縄で縛る作業に没頭した。


こいつは後ろ小手縛り、次が背面観音縛り…あー忙しい。

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