ナナリアとの再会
昨晩更新出来ず申し訳ございません…書いてるうちに寝落ちしちゃったんや…俺は悪く…はい、私が悪いですね。ごめんなさい…
銀虎団…義賊を名乗る彼ら、或いは彼女らは各地を回り声太った私欲を貪る貴族、もしくは商人、豪農などから物資を強奪し、貧困に喘ぐ農民、生活的弱者に配り回る。銀虎団が行動を起こした際には必ず、メッセージカードの様な物が律儀に現場に残されている。権力者からは煙たがれ、貧民からは義賊と讃えられた。何も権力者達が無能だった訳では無い。私兵を使い、傭兵を雇い、銀虎団に抗ったが、圧倒的過ぎる【個】の集合体に腕一本も出せなかっただけである。
そんな風に例えられる銀虎団の幹部が私の目の前で子供の様に泣き噦っていた。彼女は私の良く知る人物で、妹分なのだ。
「ナーナ、落ち着いた?」
「う、ん…ごめんなさい、リリィお姉ちゃん…」
私はナーナを優しく抱き締めると一瞬躊躇う素振りを見せながらも抱き返してきた。
抱き付きながらも触診をする。医学的なものであって下心などは断じてないのだ。…訂正、少しだけある…。腰回りは少し肉付きが薄いかな?鍛錬はしてるけど生命活動に不要なものは一切取って無いっぽい。華奢で真面に食事も取って無いのか、少し頬が痩せこけている。
「ううん、詳しく事情を聞きたいから何処か喫茶店に…あぁ、ドロシーを忘れてた!ナーナ少し歩くけど大丈夫?」
「うん、お姉ちゃんに着いてく。」
「その前にこれに着替えて?高貴な王女様が着るにはあまり良くないんだろうけど、ナーナにはこっちの方が似合うよ?」
そう言って私は古着に紛れていた貴族子女が着てたであろう夜会用のドレスを手渡す。使い古しという訳ではなく数回着て下取りに出されたのだろう、少し高めの値段だった。。。周辺を土魔法で囲い二人分のスペースを作るとナーナは「え、え?」と戸惑いを見せながらも意を決して服を脱ぎ出した。薄く割れた腹筋と透けた肋骨。背中には何かの刻傷…あーもう!とりあえずドロシーと合流してご飯食べさせないと!!
土壁を解除し、ナーナの手を引く。「ふぇ?!」とか変な声を出してるけどまだ気持ちの整理が付いてないのだろう。敢えて聞いてない振りをするのが大人(見た目は私の方が下だけど)の対応だろう。ドロシーは…あ、居た居た!
「あら、遅かったわね?この辺では見かけなかったみたいね…うーん、貧民街に入らないといけないわよね…って、その人誰よ?」
「ナナリア。私の国の第三王女様だよ?」
「王女様?!何でこんな所に…?!というか何処かで見たような…手配書に居なかった?」
「うん、銀虎団の幹部みたい。とりあえずこれから詳しい話するから移動しよう。あまり長居して注目されるのも良くないし。」
今居るのは貧民街と市民区画の丁度中間。あまり騒いで衛兵に通報でもされたら敵わない。逃げる事は可能だが、Sランクともなれば様々な責任や権利が生じる。明日の朝には此処を経つのだ、なるべく目立たない様にしなくちゃ。
「ナーナ、ちょっと予定を変えて私の宿に行こう。そこなら落ち着いて話せる筈。」
「分かった、リリィお姉ちゃん」
ナーナドロシーを連れ宿の私の部屋に入る。いつもの様に食堂でクダを巻いてたボストンにランゼが戻ったら私の部屋に来る様に言付けた。部屋に入ると椅子にナーナを、ベッドに私が座りドロシーは扉に凭れ掛かり此方の様子を伺っている。まだナーナを信用し切れてないのだろう。
「じゃあナーナ、私が居なくなってからの事を教えてくれる?」
「うん、リリィお姉ちゃん。あのね私はリリィお姉ちゃんが居なくなって死んだって周りの人は言ってたの…だけど私は信じられなくて、ずっと探してたの。子供一人に出来る事なんかなかったから大きくなるまで…三年我慢した。私の中にあるお姉ちゃんの戦う姿をイメージして少しでも近付ける為にいっぱい剣のお稽古もしたんだよ?学園の入学式の日に王都を出て商人の馬車に乗せて貰って最初は北を目指したの。その時ね、お姉ちゃんから貰ったこの指輪に下僕…マシューから連絡があったの。リアスお姉ちゃんが下ぼ…マシューに形見だって渡したらしくてね?だからげ…マシューだけは私が何処に居るのか知ってるんだ。」
下僕ねえ。懐かしい響きだ…原作でもマシューの事を下僕とナーナは言っていた。という事は第三ステップまでは進めてるのかな?好感度六割でイベントが発生して、犬呼びから下僕に呼び方が変わる筈だ
。
ナーナは思い出す様にゆっくりと言葉をつむぎ続ける。
「お姉ちゃんが居なくなったバルッセの領都まで行ったら見つかりそうになってね?慌ててクーロンへの連絡艇に乗ってガルム帝国に行ったの。此処まで一年半くらい掛かって…銀虎団と会ったのは連絡艇に乗った時。彼らはガルムの皇族から依頼を受けて貴族達を襲ってるの。それで腕の立つ剣士を探してるって言われて行動を共にしてて。私は騙されただけなの。用心棒をしてただけで盗みには貢献してないわ!それだけは信じて?!」
「真面目なナーナが道を踏み外すとは考えてないよ?大丈夫だから続けて?」
慌てるナーナの手を両手で包み込むと、顔を真っ赤にして更に慌てそうになるのを何とか落ち着かせ続きを促す。用心棒で金貨三十枚も懸賞金を出されるのだから相当な大立ち回りをしたのだろう。
「お姉ちゃんが下…じゃなくてマシューと指輪でお話してるのを偶々聞いてね?それでコッペリオンまで来たの。お頭…ガルム帝国の将軍の息子なんだけどね、今は近くのダンジョンの十五階層に隠れてるよ?私はもう抜けるつもりだから捕まえちゃって良いよ?」
あー、指輪の会話が聞かれてたか…まぁ道具の性能上、個別で連絡する事は難しい。それに私は当初ナーナとリアスティーナ二人に話し掛けて居たのだからナーナに聞かれたのは別に構わない。こうして再会出来たのだから。
「分かった。じゃあさっさと捕まえてモヤモヤを回収しちゃおう!ナーナは騙されてたって此処の支部のギルマスには私から伝えておくから…ドロシー、少しギルドまで走ってくれるかな?」
「ええ?…分かったわよ。その代わり後で剣の稽古付き合ってよね?」
「うん!いつでも付き合うよ。じゃあお願いね?」
「はいはい。」
「その必要はありません、お嬢様!フローラを連れ、只今戻りました!お話しは扉越しに聞かせていただ来ました!」
「私が辞めて新しいギルドマスターになったシオンの箔付けには丁度良さそうですね。銀虎団壊滅、お手伝いしましょう。」
「おぉー話が早くて助かるよ!それじゃあ準備して東門前で待ってるね。」
「ギルドでクダを巻いてるCランク以上に緊急招集を掛け三十分後には合流します!衛兵隊には事後報告としますが、彼等は何かと面倒な手続きが必要なので大丈夫でしょう。では、また後ほど。」
フローラはそう残すと宿を後にした。
「じゃあランゼ、うちの人達集めて東門に行くよ!ナーナ、この人はランゼ。私の騎士だよ。ランゼ、目の前のお方はーー」
「存じておりますナナリア殿下。不肖ランゼ、力不足では有りますが、全身全霊を持って御守り致します!」
「騎士ランゼ、よしなに。巷を賑わせる盗賊を捕縛するのにお力をお借りします。」
ランゼが膝を着き、最高位の礼をするとナーナが言葉を返す。アムスティアの伝統的な作法だ。
「ドロシー予定変更。レイアさん、シズさんを呼んできて!ファニちゃん達はお留守番だけど…メルティさんに頼もっかな。」
「了解。それじゃ行って来るわ。」
ドロシーがギルドに向かうのを見送ってから私はナーナに振り返る。
「ナーナ、出掛ける前にご飯にしよ?お腹空いてるでしょ?」
「そんなことーーぐーぎゅるるるるーーあ…あう…」
うんうん、口ではそう言っても身体は正直だマジックバッグから白パンと具材たっぷりのスープを取り出した瞬間ナーナのお腹は盛大な大合唱をしたのだった。




