紳士仮面
紳士仮面… 一体 何ョ何フなんだ!! ウッ…頭が…!!
「ハッハッハア!!正義の刃の前に立つ、悪が栄えた事は無し!!」
人間隕石の如く地面に降り立った紳士仮面の周りの地表が、そっくりそのまま抉れており大きなクレーターを形成していた。
その場にグレイティアとカーリア、ルッカの姿は無いが死んでは居ないだろう。
仮にも死天王の一角だ、登場から一分で即退場とはいかないだろう。
ほらね、魔法陣が突如輝きだし、そこからグレイティアが姿を現した。
「カチーンってきたー!あーしの芸術を邪魔するなんて許さない!まぢぷんすこスコティッシュフォールドなんですけどー!!」
スコティッシュ…その猫種ってこっちにもいるのかな?
「おや?まだ生きていたのか、邪悪の徒よ…ならば早々に引導を渡してくれよう!!」
「キモーい!筋肉ダルマがッ!!あーしに近づくなしッ!!」
「筋肉ダルマなんかでは無い!ハッ?!この鍛え上げられた肉体美に嫉妬してしているのだな?!よく聞いて覚えて帰ってくれよ?私のぉ、名はッ!【紳士仮面】(巻き舌)だッッ!!」
ほへー…グレイティアの発動する様々な属性の弾が弾幕となって紳士仮面を襲う。
が、紳士仮面は高笑いをしながらそれを二刀の直剣で切り裂き、一度もそのタキシードを汚す事は無い。
更に隙あらば飛ぶ斬撃でグレイティアの虚を突き攻勢に出ている。
上空から観戦ムード出してるけど、私も行った方が良いのかな?いや…無理無理無理!
あんな怪獣大戦争みたいな化け物の中に入れる訳ないじゃん?
てか行ったら一瞬でひき肉にされちゃうよ!
紳士仮面さんやべえ…あれ、きっと人間辞めてるな…
きっと辛い過去を乗り越えて彼処に立ってるんだろうな…
愛と平和と少女達の味方って口上は、きっと妹か娘を亡くしたのかも知れない…
あれ?そう思うと段々、紳士仮面さんに対する印象が変わってくるぞ?
少女達とか言うからロリコンかと一瞬疑ったが、そんな事は無かった!!
しんしかめんさんがんばえー!!
「くぉの…変ッ態がぁ!!」
うお?グレイティアが第二形態に突入するのか?
おぉー!背中から死者の腕の骨で出来た翼が生えた!
しかも白かったドレスが真っ赤に染まってる。
《真紅状態》だ、すげぇ!
あの状態になると魔法を全て無効化してオートカウンターまで付くからかなり厄介だぞ?
ん??紳士仮面さんが一歩、また一歩と前に進み出す。
その両手に握られた剣は白く光っている。
もしかして魔法剣?
だとしたらやばい!攻撃したらその威力を増幅して返されてしまう!
「紳士仮面さん!攻撃しちゃダメ!!カウンターが飛んでくる!!」
「ハッハッハ、ご忠告どうもありがとう!だが紳士仮面に撤退の文字は無いッ!!故に、、、全身あるのみ!!!」
バゴォォオオンと壮絶な音が私の耳に響く。
巨大な破裂音と煙が過ぎていくと、そこには仁王立ちの紳士仮面さんと口から血を吐き、片膝を突くグレイティアの姿が!!
紳士仮面さんマジぱねぇっす!!
「グフッ…何なのよこの変態…!次は…絶対にィ…コロス!!」
「ーーー!!中々…やるではないか…!」
しかしここでまさかの紳士仮面さんの吐血…その場に頽れてしまった。
双方痛み分けの状態。
グレイティアは帰還用なのか【簡易魔法巻物】を取り出し破り捨てたと同時に姿を眩ませた。
私は形振り構わず紳士仮面さんの元へ駆け寄ると治癒魔法を使う。
抱き起こすと、紳士仮面さんは弱々しい笑みを浮かべこう口にした。
「……どうやら…慢心していたのは私の方…だったか…すまないお嬢…さん…私では倒す事は出来ない様だ…コレを…受け取ってくれないか?」
手渡されたのは白と赤の宝珠。これってもしかして…
「何故、私に?」
「君の心に正義の炎が宿っているのが…私には分かるのさ…!だから…コレを…!」
私に正義の炎?
とんでもない…
私は弱いし、面倒くさがりだし、戦いが嫌いだ。
それなのにこの世界は闘争に溢れている。
だから私は剣を握り、魔導書を読み漁った。
そして凡人なりに足掻いて戦う術を身に付けた。
でも周りは強者で溢れていて、牙なき草食獣が抗うことは所詮出来ないのだ。
こんなに情けない私なのに、紳士仮面さんは弱々しくも笑顔を崩さない。
「君が思っている自分自身の気持ちを掴め。私の信じる君ではない。君自身が信じる君を、可能性を信じるんだ!」
「私の信じる私…?」
『お嬢の信じる道を貫けば良い。迷ったら、あっしが探してその手を引いてやりまさぁ!!』
かつてのジョセフの言葉が脳裏を過ぎる。
紳士仮面さんとジョセフは似ても似つかないし、どうしてジョセフを思い出したのかは私自身分からない。
だけどこれだけは分かる。
戦う事を恐れてちゃ前には進めない。私は私の道を貫くだけだ!
「ありがとう、紳士仮面さん。何か大切なものを思い出せた気がするよ!」
「そいつぁ…それは良かった。では私はこれにて失礼しよう。それと一つ忠告だが、剣の手入れは欠かさない様に。剣士として一番大切な事だぞ?」
「え?何でそれを!!あっ…行っちゃったか…」
紳士仮面さんが何故剣の手入れを忘れていたのを知っているのかは知らないが、大丈夫、二度と同じ過ちは繰り返さないよ!!
私は
紳士仮面さんが去っていった方向をぼんやりと見つめるのだった。
ありがとう、紳士仮面さん……!!
×+×+×+×+×+×+×
ふぅー…
危ねえ危ねえ…もう少しでバレるとこだった…
偶々立ち寄った町でまさか本物のお嬢と出会すとはな…
それも何の因果か戦闘に巻き込まれてやがったから内心焦ったぜ…
坊は既に独り立ちし、俺を負かすくらいの技量を身に付けた。
息子のジョーズも戦士としての志を胸に抱き、弟子のボロは…まぁ、ヤンチャだが根は真面目できちんとしている。
思い残す事はない、と妻と娘をマルセムに残しお嬢を探す旅に出たは良いがどうやら俺はツイてなかった。
悪魔に呪いを掛けられ、素顔のまんま他人と会えばその他人も呪われちまうってんだからトンだ笑い話だ。
どれだけ探しても情報なんか一つも出やしなかった。宛てのない孤高の旅の中、何度も諦めかけた。
お嬢はすでに…なんて弱気になっちまう時もあった。
だが、違う…お嬢は生きてた。
最初は夢を見てるのかと思った…
だがその声、姿、戦い方は俺の知っているあの時のままのお嬢そのもので…
仮面の下は今も涙が溢れて止まらない…!
今すぐ正体を明かして、流浪の旅とはおさらばしてえ。
だが、今俺がお嬢と顔を合わせる訳にはいかねえ。
その辺の冒険者や町人にさえ顔を見せられねえ。
厄介な身体になっちまったもんだ。
だが、お嬢…
いつかきっと素顔で顔を合わせる時が来る事を楽しみにしててくれ…
先程の戦場から街を挟んだ森の中、借宿にしている古びた狩猟小屋の扉を開くと同行者が声を掛けてくる。
「あらジョ…ジェントルマスクさん、どうかしたのかしら?随分と砂埃で汚れて居るますわよ。」
「おう《高潔淑女》か…正体がバレちゃ面白くねえからな、少し芝居をしてきたのよ!…それより…見つけたぞ…?」
親子ほど歳の離れた鉄仮面の少女が怪訝そうな声を上げ返す。
「芝居?一体何のことですの?それに見つけたですって?訳が分からないですわ!!ちゃんと説明して下さいまし!」
理解が追い付かず、ぷんすか喚く少女を見て面白くなった俺は少し笑い声を上げると答えを出す。
「そりゃ勿論、俺たちが血眼になって探してたあのお方さ…ククク、五年前から何一つ変わっちゃ居ねえ!あの時のまんまだ!」
現聖女である少女は、コマ送りの様にその表情を変え、最後にはだらしない笑みを浮かべ手を組み、神に祈りを捧げ出した。
「……ッッ!!リリィ様が…デュフフ、、、…そう…それはきっと神の思し召しね…神よ、感謝します…!」
「さっさと借りを清算してお嬢の前に顔を出そうか、マリアンヌ嬢?」
「ええ、そうね。騎士ジョセフ。フフフ、リリィ様お待ちになっていて?この身に掛かった呪いを解呪し、貴方様の元へ馳せ参じますわ!わたくし様の事をリリィ様もきっと探しておられるはず…えぇ、きっとそうよ!」
「さて…これからどう動く?」
「どうせ当ての無い気楽な旅ですわ。リリィ様に見つからない様にこっそりと後をつけましょう?」
「カカカッ…そいつァ良い!どうせお嬢のことだ、行く先々で何かしらのトラブルに巻き込まれるに決まってる。」
買ってきた食材を、ウキウキとご機嫌に調理し始める鉄仮面少女の姿を、
視界の端に収めながら、俺はこれからも続く長い旅に思いを馳せた。
気付いたらヒーローショーのノリで書いてました…ちょっと楽しかったのは内緒。
そしてそしてぇー!!
復 活 の ゲ ー ス ! !
はい、と言うことで、リリアナが探しているふたりが偶然一緒に旅をしているという感じです。
ちょっとした胸熱展開になったらなぁ…と。
二人もリリアナを探してたのですが諸事情が有って素顔を晒す事は出来ません。
ジョセフのハードボイルド感が足りない…
というかさ…作中最強(色んな意味で)の二人にストーキングされる展開ってヤバくね?
作者もびびってる…




