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二つ名

「あーあー。ジェシカ聞こえる?こちらリリアナ•アルデン•センティス。リリアナだよー、応答願うー。」


『ー…ーー……リ…アナ…ま?ほん……に?リリアナさ…!お声を…う…ちどおき…出来…るな…て…!』


「あー、離れ過ぎて聞き取り辛いのかな?」


「この通信装置は子機なので少し精度が悪いんです。ですが、此方の声は全て聴こえている筈ですよ?」


「じゃあ要件だけ伝えるね。私が居なくなって五年?経つのかな?心配掛けてごめんなさい。けど私は元気でやってます。今はゴールディンモートに居てクーロン、帝国経由でアムスティアに帰ります。ランゼと愉快な仲間を連れて二ヶ月くらいで着く予定だけど大きい街に寄ったら連絡を都度入れるからさ!風邪引いちゃダメだよ?仕事もし過ぎちゃダメ!ジェシカは頑張り過ぎちゃうからね…凄く心配!あ、訳あってSランクになったんだー、二つ名はねー【ーー】ーーー」


ジェシカの声は聞き辛かったけど、元気そうで良かった。

思ったより時間をかけ過ぎて大量の魔石の半分を使ってしまったのは誤算だったけど。


幼い頃を思い出してついつい話し過ぎた。


「さて…名残惜しいけど、今度はクーロンの王都に着いたら連絡するね!それじゃーバイバイ!」


『おか…だに、き……けて!お待ちし……ります…。』


本当はレインや皆の近況を聞きたかったけど、仕方ないか。

次に連絡する時は魔石をもっと集めておかないと!


「フローラさん、ありがとう!もう大丈夫だよ!」


「ふふ!素晴らしい主従の絆を拝見しました。ギルドカードの更新終わりました。ですが、Sランクの二つ名…【ーー】で良かったのでしょうか?」


「うーん、他に思いつかなかったからさ。でも割と気に入ってるんだよ?ランゼのゴリ押しだけど、私もパッと思い付いたのがそれだし、他に思いつかないもん。」


「当然です!お嬢様を素晴らしき活躍を民衆に知らしめるにはこの言葉以外では形容出来ないでしょう!」


んー…そうかな?ちょっと忠誠心が高過ぎて時々ランゼが怖く感じるのは気のせい?気のせいか。


「うーん…【戦場ウォー聖少女セイント】ねえ…」


これ聖教会に喧嘩売ってない?


というか聖教会といえばマリアンヌは史実げんさく通り聖女になったのだろうか?



ギルドを出て宿に戻り、身体を清め夕食を取り、すっかり暗くなった頃。


私は思考を巡らせる。


…ふと、ここで気付いた。


あれ?私、通信の魔道具持ってなかったっけ?


リモーネ商会で作らせて細かい連絡系統を出す為に作らせたっけ。

結局単独行動してて鞄に押し込んでそのままだった気が…


確か戦争に出る前にナナリアとリアスティーナに渡してた様な…

ガサゴソ…あ…あったよ…!


私のバカー!これなら自前の魔力使えば魔石使わないで済んだじゃん!勿体ないー!!


いや、違うんだ!


最近色々と濃密すぎたり、大陸超えて戦場行ってゴッサムに殺され掛けたりして一時的に記憶の彼方に飛んでたんだよ!


うん。大丈夫、私悪くない!


指輪を嵌めると私の指に吸い付く様に大きさを変える。

凄いなこれ…ハウリングバットとかいう魔物の素材と虹魔晶レイニウムって稀少金属を使っていた気がする。


「あーあーあー、こちらリリアナ。リアスティーナ、ナナリア、何方でも良いから返答求む。」


『姉…さん?』


ん?この間の抜けた甘ったるいボイスは…


「もしかして…マシュー?」


『マシューだよ!やっぱり…やっぱり姉さんなんだ!でもどうして?何処に居るの?ちゃんとご飯食べてる?いや、それよりレインさん達に教えた方が…イレーネ、イレーネ!』


「あーもう、バカ!一々大事にしてどうするの?私の話を聞きなさい。あんたに通信の指輪を渡した覚えは無いけど、どうしてあんたが話してるの?指輪の持ち主は?」


『ご、ごめん…この指輪はリアスティーナ学長から姉さんの形見だって言われて渡されたんだ。私よりマシュー君が持つのが相応しいだろうって。』


「そう…理由は分かったわ。これから私が話す事、よく聞きなさい。あの日私が居なくなった後の話と…そうね、考察の域を出ないけど…ーー」


私は順序立ててマシューに説明をする。


粗方居なくなった後に起きた出来事を話す。

あの後突然五年後に飛ばされた事。

偶々ギルドマスターをしていたランゼと行動している事。

現在地とこれからの旅程、細かなルートを話したらこいつは一角天馬に跨り私に会いに来るだろう。

だがマシューにはマシューのやる事が有る。そこに私が関与するのはこの子の為にならない。



そして、私とゴッサムが消えたのはマリアンヌが関与している可能性を示唆してマリアンヌの現状を確認する。


「ーーーこんな感じね。それでマシュー、マリアンヌが今何処にいるのか分かるかしら?」


『ごめん姉さん。僕も分かって無いんだ…一昨年にジョセフが旅に出てから一年後、去年の春、マリアンヌさんも忽然と姿を消して…ゲース教皇は面会出来なくて、マリアンヌさん姉妹にも聞いたけど修道女としての修行の旅に出たとしか言って来れなくて…多分僕の責任だ…僕が姉さんが消えたのはマリアンヌさんの責任だと追及したからそれで…』


あー…マリアンヌなら責任を感じて私を自力で探そうとするかも知れない。マシューに指摘されて抱え込み、行動するまで秒読みだったろうな、簡単に想像出来る。


「分かった。こっちでも一応探してみる。あんたもマリアンヌとジョセフは探しておく様に。ギルドに依頼を回せばその内連絡が来るでしょ!一人で抱え込まないで周りに相談しなさい!それとレイン達にはまだ私の事は伝えなくて良いから。余計に気を揉む事になる。だから軽率な行動は控えなさい!良いわね?」


『はい…姉さん、また会えるよね?話せるよね?』


「当たり前じゃない!こっちから折りを見て連絡するからそれまで待ってなさい、良いわね?」


『はい…!』


「それじゃ、おやすみ?」


『おやすみなさい』


ふぅ…何とも疲れた一日だ。

マシューの奴、隠してたけど泣いてたな。

最後のおやすみなんて鼻声だったし、分かり易すぎよ。


あーもう!私までしんみりして来たじゃない!


寝るッ!



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