豊穣の大樹海6
新キャラに暫く出番は無いと言ったな?
アレは嘘だ!!
「ふおぉぉおー!!」
剣を支えに立ち上がる。
「お嬢様!」
「ランゼ救助優先!私がコイツを抑えているうちに!」
「ハハッ、笑わせてくれるじゃないか!このボクに勝つつもりかい?」
突然の奇襲に不覚を取ったが、もうやられないもんねッ!
「上等ッ!【自動再生】!!【身体能力倍化五掛】!!」
「おっと!クフ…そう簡単には倒せない…か!」
袈裟がけに斬り掛かるもバックステップで避けられる。
グヌヌ…舐めおってぇ!私も直面蹴り決めてやるー!
「ほッ!はぁッ!たァ!!」
「あはは、早い早い!でも…まだ足りないよッ!」
「これならッ…どう?!」
剣で斬り付けるかと思わせての飛び付き腕拉ぎ十字固めが決まる。
「へぇー、関節技かな?人族なら簡単に折れちゃいそう。でも、ボクには効かないよ?」
しがみ付いた腕ごと大木にぶつけられ、肺の息を全て吐き出して私はその場で蹲る。
「カハッ…はぁはぁ…マオ…一体誰なの?」
私の記憶に全くない…恐らく魔族であろう敵。
原作には一切登場しない故に私は知らない。
「フフッ…【神召の英雄】と言ってもボクの事は知らないみたいだね。改めて自己紹介しようか…?ボクは先代魔王のーー」
「お嬢…探したぞ?いきなり座標転移しやがって。緊急事態発生だ急いで帰るぞ?」
「え…ガーファンクル•ドラ…クリオン?」
「ん?ほう…ゴッサムのお気に入りか…悪いがこっちも遊んでいる暇は無いんだ。行くぞお嬢。またな、【使ーー」
「見付けたよ、このクソ親父ィ!!」
「ダ、ダリアか?!何故此処に?」
えーと…一瞬の事で理解出来てないから整理すると…。
腕拉ぎ→気に叩き付けられる→マオ知らない→ 【神召の英雄】?→先代魔王の???→ガーファンクル登場→マオの首根っこ掴む→後ろからダリアの不意打ち顔面パンチ→ガーファンクル驚く→今
って感じか。
うーん、カオス。
はっ!そういえばメルティさん…は、良かった。
マルシェラちゃんがみぃちゃんと救出してた。
「十年も母さんとアタシを放ったらかしにして、よくも抜け抜けと姿を現したさね?ぶっ飛ばしてでも母さんの墓前に連れ帰る!!」
「全く…今日は厄日だな。テンカ、直ぐに転移を」
「……(コクコク) 」
「いや、お前の出る必要は無いだろ。」
うへぇ…囁き忍者テンカさんだ、ちーす!
いや…ここは、アイエー!ニンジャ!ニンジャナンデー?!が正解だろうか。
参ったな、死天王が二人に謎の強キャラか…たははぁ〜、勝ち目が無いや…
でもさっさとお帰り願えるならそっちの方が良いかな。
さすがにダリア、ランゼを加えての三対三+巨大樹じゃ勝てそうにない。
ていうかガーファンクルだけでもキツいのに下手したらテンカさん一人で全滅ですよ…
ニンジツジッサイスゴイ…ハイクヲヨメ!
「行かせないよ!【マグナムフィスト】ォオ!!」
「チッ…【マシンガンシュート】」
「おぉー!もしかしてあの人がガーファンクルの娘?でも黒化が右腕だけだね?弱っちそー」
「まだまだ未熟だなッ…とォ!」
「うあッ……!」
「テンカ!今だ!」
ガーファンクル強すぎッ!ダリアが蹴連打で十メートルくらい吹き飛んだ。
むぅ〜…このまま逃すのは癪だ…!一発くらい入れてやる!
ガーファンクルに抱えられたマオにターゲットを絞る。
横向きの態勢だから直面蹴りは出来ないけど、顔面に入れても良いよね。
叩き付けられたダメージは【自動回復】で回復している。
剣を構えていざぁ!
と思わせて此処で宙返り!
宙天蹴りがマオの顔に当たった…かに見えた。
が、ガーファンクルに防がれ私は足を掴まれ壁に叩きつけられる。
「カハッ…!」
口から血を吐き、また蹲る。
クソッまた届かなかった!
その時、ハラリ、と。
マオの被っていたフードが捲れる。
え?私と同じ、顔?
いや、違う!似ているけど、部分的に違う。
それに右目元にある稲妻型の痣…何処かで…
その間に印を結び終えたテンカが、忍びの極意•忍術を完成させる。
「 」
ドロンという効果音と共に周囲に煙幕が漂い、三人の姿が消える。
「くそッ!!折角見付けたのに!!うおおぁぁぁッ!!」
「はぁ…はぁ…ダリ、ア…キレるのは後…!今はアイツを倒さ…ない、と!」
私はフラフラしながら【範囲回復】を発動し、自分とダリアを回復する。
一人で救助を優先しているランゼを手伝いアイツを倒さないと!
ダメだ…魔力も体力もガス欠…喉がカラカラ、頭痛が酷い…それでも!
「ハンッ…!リリィの言う通りさね!こんな所で立ち止まってる訳には行かないさね!リリィ、ヤルよ!」
「合点!!」
+×+×+×+×+×+×+×+
結果を言えば激闘だった。
最大火力の禁呪の発動に失敗して、枯渇気味だった魔力で頭がフラつきながらも魔力回復薬をガン積みして、お腹がタプンタプンになりながらも枝鞭攻撃や根っこ槍攻撃を避けながらヘイトを稼ぎ、一時間以上飛んだり跳ねたりとパルクールじみた動きをすると説明すれば理解して頂けるだろうか。
その間に救出を終えたランゼ達に少し交代して、魔力が回復し切った所で禁呪発動。
中央から真っ二つに避けたお化け大樹は幾つかのドロップアイテムを残して消え去った。
あー疲れた…暫く動きたくない。
ダリアを護衛に残しランゼ達には先にダンジョンを出て貰い、ギルドに報告してそのまま宿で先に休んで貰う様に指示。
私はそのまま天幕を一つ借りて泥の様に眠った。
起床。おはようございます。
天幕から出るとダリアが入り口で胡座を掻き左膝に左肘を置いて掌に顎を乗せ、何かを考えている様子だった。
「ダリア、おはよう。」
「やっと起きたさね?奴さん達、何人か起き出してるよ。」
「ずっと見張っててくれたんだ…!ありがと!」
ダリアの顔をよく見ると目の下に大きな隈が出来ている。
私が眠りコケていた間に魔物から守ってくれたのだろう。
ダリアの脇には山になったドロップアイテムが大量に置かれている。
「ふんッ!別にリリィを守ってた訳じゃ無いさッ!単なるレベル上げさね。リリィ目当てなのか魔物がうじゃうじゃ出て来るからついでに倒しただけさね。今回の事で自分が未熟だって事は体感したよ…化け物親父がッ…絶対捕まえて母さんの墓前で土下座させてやるさね!」
あっ、ツンデレ?かと思ったがガーファンクルとの力量を見せ付けられてアドレナリンが出てガムシャラに戦ってただけか。
だが、それでも私は嬉しかった。
ダリアの背中に抱き付き囁く。
「それでも、、、ありがとう。ダリアが居なかったらどうなってたか分からないもん。だから、今度は私がダリアを守る番。ゆっくり…休んで?」
「〜〜!!!わーったさね!アタシャ寝るよ!おやすみ!…フンッ!」
顔を真っ赤にして抱きつく私を振り解くとダリアは天幕の中に入った。
言動は余裕のある姉御肌なダリアだけど、時折見せる少女的な献身さ、そして周りに気を使い過ぎてる所を偶に見掛ける。
精神ズタボロなのに、無茶し過ぎだよ、もう!
だからゆっくり休んで?
「おやすみ、ダリア。」
さて…今度は私が頑張る番だ!




