豊穣の大樹海4
マジックバッグ、それは今私が欲しくて欲しくて堪らないアイテムの一つだった。
本当はクーロン王都にいる錬金術士に依頼するつもりだったのだが、ここで手に入ったのは幸いだ。
「要領はァ、そうだなぁ…平民の使う安宿くらいってとこか?俺もそこまでは詳しくないんだが、まぁ平凡な代物だ。」
ダンジョン産のマジックバッグでは最低クラスの物らしく、ボストンも微妙な顔をしている。
「ボストンってもしかしてマジックバッグに詳しいの?」
「ん?あぁ、一時期このダンジョンでマジックバッグを回収しまくってな。そん時はAランクのパーティーに所属してたんだが、腹に大怪我を負っちまってよぉ、渋々パーティーを解散したのさ。当時は貴族の屋敷が丸々入る様なマジックバッグなんかも手に入れて、相当な額を稼いだんだよ。賭博で全部摺っちまったがな…」
「あぁ…」
私が憐れむ様な視線を送るとボストンは苦笑いをして誤魔化す様に装備を点検し始める。
マルシェラちゃんとみぃちゃんも水を飲んだり軽食を口に放り込んでいる。
「さて…そろそろ行きますか。」
「お嬢様、泥沼男達は現在何階層まで先行しているのですか?」
「んー、十九階層まで行ってるんだけど、二十階層の階層主に苦戦中…私達が着く頃には倒せるんだろうけど。」
休憩中に泥沼男八十二号に意識を向けて戦ってたんだけど、中々厄介そうだ。
ランダム判定全体防御無視攻撃とか反則でしょ…
「ほう…中々楽しみ甲斐がありそうですな!」
「うーん、でも倒せそうだし私達の出番は無さそうだよ?再出現時間もあるだろうし。」
「そうですか…残念です。」
ランゼも大分戦闘凶染みてきてるな。
五年間で何かあったのかな?
まぁ、それは私が知らなくて良い事なんだろうけど。
十三階層への階段を上がり私達は少し駆け足気味に探索を続行した。
階層更新は順調に進みやっと二十三階層まで来れた、二十階層主は十八階層に辿り着く頃に倒せたのでランゼの望みを叶える事は出来なかったが、勝利した代償は中々に大きい。
泥沼男が半数やられてしまったのだ。
ぐぬぬ…私は魔力を再度練り、今度は二百体まで泥沼男を召喚した。
一個中隊並みの量だがここから二十五階層までが捜索範囲だ。
早く見付けて私は観光がしたい。
ケモ耳を合法的に撫で回す為に気合いを入れ直した。
暫く進み二十四階層の階段前へ到着する。
まぁ請け負ったから最後まで責任は持つけど。
既に二十三階層は隅々まで探索を終えていて、今は二十四階層の六割と言った所だろうか。
階層が増える毎にどんどん広くなっていくダンジョンに辟易しながらも皆に待機を告げ、私は泥沼男に意識を集中させた。




