豊穣の大樹海3
戦闘開始と同時にボストンとマルシェラたんが各々の武器で木人へと斬り掛かる。
ボストンは大刃剣、マルシェラたんは何と大鎌である。
何もない空間からニョキッと現れる光景に流石の私も驚いた。
確かに死天王最強、【這い寄る死】のゴッサムも武器として大鎌を使う。
長年ゴッサムの監視下で生きて来たマルシェラたんが大鎌を使うのも利に叶っている…のか、一応。
だがそんなマルシェラたんの渾身の一撃を木人は華麗に捌き、ボストンを蹴り飛ばすとマルシェラたんに肉薄し直剣を振りかぶって今まさに下そうとしている。
助太刀に入る?
いや、ダメだ。それじゃマルシェラたん達の想いを踏み躙ってしまうだけだ。
「グルルゥ…フシャアアア!!」
私が一人葛藤していると大山猫が木々の上から縦横無尽に飛び掛かり主人の窮地を救った。
「みぃちゃんナイスや!ボス、今のうちに態勢取り直すでぇ!」
「あぁ、すまねぇ!みぃ、礼は後でたっぷりさせて貰うぜ!」
「お二人とも、こっちが準備出来次第、発射します!それまでどうか耐え切って!」
「「おぉー!」」
みぃちゃんが作った隙をここぞとばかりに立て直したボストンとマルシェラたんが構えを取り、木人へと攻撃を開始する。
「【致命振斬】!!」
「【ラグネル流暗殺剣•一の型ァ!四肢噴刃】!!」
適切に木人の首へ振われた大振りの一撃と、手足の付け根を的確に捉えた攻撃はレベル差からか頑強な木人の防御力に弾かれ僅かに傷を付けるばかりだった。
「ありゃッ!外してもうたぁ!」
「チィッ!」
二人も外したのを咄嗟に気付いたのか、悪態を吐き舌打ちをした。
木人が身を縮め込ませボストンに上段からの跳躍振斬を発動するも、ボストンは避けたと共に木人の膝関節を蹴り飛ばす。
意思ある無機物と言えども人型を模しているだけあって関節技は通用するらしい。
「二人とも避けて!!【雹晶連弾】」
メルティさんの詠唱が終わったのか二人に注意を促し、幾重もの氷結弾が機関銃の様に木人を穿つ。
「おっしゃ!マル攻めるぞ!」
「がってんや!みぃちゃん一緒に行くでぇ!!」
「こっちも合わせる!【ラグネル流暗殺剣•二の型、刃乱万傷ぉお】!!」
みぃちゃんに騎乗したマルシェラたんによる大鎌の振り下ろしに、ボストンのシミター2本による乱斬撃を受け木人は頽れた。
「ふぅ…どや、リリー!ウチかてやりゃ出来るんやで!」
「マルシェラちゃんお疲れ様!みぃちゃんも頑張ったね!」
「久々に大技を出したらちいっと疲れたぜ…少し休ませてくれ。」
「ボストン、相変わらずの減らず口だね。アタシがそのケツ蹴っ飛ばしてでも連れてってやるから覚悟しな」
「ひぇー、勘弁してくれよー!」
ボストンが良い感じに和ませてくれたのを皮切りに私はまた周囲を警戒する。
そこで木人が居た場所に目を向ける。
後に残ったのは武骨な直剣と小さなポシェットだった。
「おっ?何かドロップしたよ?」
「おぉ?レアアイテムか?」
私の声に気付いたのかボストンが徐にアイテムを拾う。
何を思ったのか直剣をポシェットに差し込んだ。
貫通するかと思われた直剣はそのまま中に収まってしまう。
「思った通りだ!こいつァマジックバッグで確定だぜ!」
マジックバッグ?!
私は一時依頼を忘れてマルシェラたんと手を取り喜び合った。




