豊穣の大樹海2
暫く待機していると、北東方向に向かわせた泥沼男が階段を見つけた。
他の泥沼男を階段方向へ向かわせてある程度が二階層に入ってから私達も移動を始める。
「階段見付けたよー。一直線で向かうから着いて来てー。」
「了解しました。各自周囲の警戒を怠らない様に。お嬢様、先導をお願いします!」
「あいあーい!…っと、その前に!【風翔脚力上昇四掛】!」
「なッ!?私が5年掛けて編み出した魔法をこうも容易くやってのけるとはッ?!このランゼ、悔しさよりもお嬢様の才を羨ましさと共に、感動に打ちひしがれておりますッ!!…この姿をヴェイル…貴様にも拝ませてやりたかった…!!」
スタンピードでランゼが使っていた身体強化魔法を全員に掛ける。
ヴェイルのこと死者扱いしてるけど、領地で第三騎士団長やってるらしい。
まぁ、今居ない奴の事は置いといて、、、
私たちが一筋になり、移動していると雑草の魔物ウィードが転ばせようと結んだ葉をあちこちに展開している。
「鬱陶しいなぁ。」
剣で結び目をちょん、と突くと魔石を残して消え去った。
「お嬢様、魔石は回収しなくて良いので?」
「そんな小物要らない。それより今は下へ潜るのが先決だよ。浅層に潜ってる新人にでもくれてやればいい」
「流石はお嬢様!慈悲深き御心に私感動しております!」
うーん、今は回収してる暇が無いもんね。ちょっと勿体無いかもだけど、別に良いや。
中層からは回収しよっと。
一番小さくても一個、銀貨三枚(約三千円)くらいになるし高いのだと金貨手前まで跳ね上がるし!
「ランゼ左にデカい気配五!多分レッサートレント!」
「畏まりました。【疾風刃】!!」
ランゼの剣から飛翔する刃が五つ飛び、魔物の気配が露と消えた。
Sランク(ギルマス補正だけど)は伊達ではない様だね。
やがて駆けること一時間程。
二層、三層、四層、、、と次々階層を更新し、現在は十二階層まで降りてきた。
ここまで来れたのもランゼの魔法を私が使った影響が大きい。普段の最高速度の四倍だから、通常だと四時間ってところか。
少し休憩を挟んで移動を開始する。
十階層から広さが倍になったので更に五十体増やし階段は既に十八階層迄は発見済み。
階段から約二百メートル手前で私は探知に引っかかる魔物を発見する。
「ナイス!もうすぐ階段見えるよ!ムッ……!!階段前に魔物?ちょっとストップして!思ってたより強そうな奴だ!」
木々の間を抜けるとそこには木で出来た人形、ウッドパペットが立っている。
しかしその手に持つのは木製では無く鉄製、それも業物の様に見える。
更に鉄の武具で防備を整え門を守る騎士の如く隙なく構えていた。
「変異体かな?個体としては推定B上位かA下位くらい。ランゼやダリアなら勝てそうだけど、メルとマル、ボスじゃキツそう。私が相手しても良いけどどうする?」
変異体。ゲームでは通常種の二段階ほど上の強さでランクも一つ上がっている。
だが、此方の世界では極々稀に更にその上の強さも現れる事が有るとランゼから聞いていた。
ダンジョン内ではお互いの名前を略称する事にしている。
なんかボストンだけ強そうだけどどうでもいいや。
「ここは私が。お嬢様が相手する程でも無いでーー」
「旦那、待った!ここはオレが!いや、オレたちにやらせてくれ!なぁ、メル、マルよぉ?」
「ええ、私達三人が足手纏いでは無い事を証明します。マルちゃん、行けるわね?」
「勿論やッ!あと三人じゃなくて四人やで、メル姐!」
「フシャアアア!!」
私が問い掛けるとランゼの言葉を遮り、メルティとボストンが一歩前に進み出た。
続けてマルシェラがみぃを撫でながら抗議をして遅れて一歩前に。
みぃは既に臨戦態勢の様だ。
「それじゃあお手並み拝見と行きましょうかッ!危険そうだったら変わるから。」
「「「了解(やッ!)!!」」」
返事と共に駆け出す三人と一匹を待ち構えていた木人形が手にしていた剣をゆらりと動かし、構えを取った。




