豊穣の大樹海1
「ふわぁ~!広いなぁー!」
気の抜けた様なマルシェラちゃんの声が広い森に響く。
依頼を受け翌日、私達はコッペリオン近郊最大の規模を持つダンジョン、《豊穣の大樹海》へと足を運んだ。
入口は洞窟、しかし一歩足を踏み入れると、そこは広大な樹海となっていた。
出発前に調べた結果、このダンジョンは植物系統が多く、王都に様々な恵みを齎している。
味が変化する野菜や三日で五メートルほどに成長する樹木、ポーションの材料になる葉や深層には万病をたちまち直す果物もドロップするという。
それらの殆どはゴールディンモート王家が高く高額で買取り、国内外で様々な用途に使われている。
此度の捜索対象であるクーロン王国の英雄クロッカスも難病に効果ある果実を探し求め、この《豊穣の大樹海》へと足を運んだと記録に残されている。
「マルシェラちゃん。一応ダンジョンだからあまり気を抜かない様にね?」
「分かっとる分かっとる!メルティ姉さん心配し過ぎやで?ウチかて魔王軍に在籍してたんや、ダンジョンの危険性はよう理解しとるよ!」
メルティさんがマルシェラちゃんを諌める言葉を送るもマルシェラちゃんはみぃちゃんの背中をポンポンと叩き、斥候に送り出し、本人も周囲を警戒するように視線を動かしていた。
「お嬢様、みぃちゃんが斥候に出ていますが、ボストンからの提案なのですが、ボストンも偵察に出しますか?」
「俺ァ、何時でも行けるぜ?リリィの嬢ちゃん、どうする?」
「うーん、樹海だしパーティーが散り散りになるのも困るからボストンは一緒に行動で。みぃちゃんなら最悪匂いを頼りに合流出来るし、地図もある。荷物もそれぞれ均等に分けてるから遭難しても大丈夫だけどあまりリスクは取りたくないかな。」
「失礼しました。では私とボストンで前衛を務めますので中衛にマルシェラとメルティ、後衛はお嬢様とダリアの順でお願いします。」
「あぁ、すまんかった。」
「あはは、まぁ気楽に行こうよー。あ、最低限の警戒はするように!」
「おう!」
「はい!」
斥候のボストンに双剣士のランゼ、真ん中に魔術師のメルティさんと個人戦闘力は低いが強力な獣魔を使う魔物使いのマルシェラちゃん、一番後ろに私とダリアが配置される。
多分ダリアは私の護衛を兼任してるんだろうな。ランゼってば心配しすぎだよ。
そうだ、泥沼男をあちこちに展開させてどんどん進ませよう。
今回はダンジョンアタックじゃなくて行方不明者の捜索なんだからそっちの方が効率が良い筈。
んーと、視覚を共有させて、ある程度の防御姓と移動速度が欲しいな。
あーして、こーして…よし出来た!
「うおっ?!何じゃこりゃ?!!」
「んー?泥で出来とるんか?何かボーッて感じの顔してて可愛えなぁ!」
「凄いですね…こんな複雑な術式、初めて…!」
「んお?アタシは魔法にゃ疎いけどこんなの初めて見たねぇ。リリィあんた相当な魔法の腕を持ってるね?この前のスタンピードの時も驚いたが、これもそんじょそこらの魔術師には出来ない芸当さね。」
そういや、四人は初見だっけ?思い思いの感想を述べている。
「フッフッフ…何を隠そう、この《泥沼男》はお嬢様にしか使えない他属性の複合魔法なのだ。お嬢様の溢れても尚止まらぬ才を特と見るが良い!」
ランゼが自分の事の様に自慢し始めたので、とりあえず軽く手刀を入れた。
あまり褒めても嬉しく無いんだからね?!
少し多めに出しとこ。
総勢百体の泥沼男を各方面に向け移動させる。
多少の戦闘なら泥沼男の視界を経由して魔法を使えるのでとりあえずは階段を見付けるまで待機かな。
「今から全方向に向かわせるからここで待機しておこう。マルシェラちゃん、みぃちゃんを一旦戻して万が一魔物が来たら迎撃するように伝えといて?」
「分かったぁ。ん、すぐ戻ってくるで!」
「泥沼男が階段を見付けたら移動するからそれまでは最低限の警戒をしてゆっくりしてて。私は少し泥沼男の方に意識を割くからよろしくー。」
「畏まりました。全員、全力でお嬢様をお守りするぞ!」
「「「おー!」」」
いやいや、そこまで言ってないんだけど…まぁランゼに任せといて大丈夫かな。
はてさて…どのくらいで見付かるだろうか。
世間はGWですねー。
私は仕事ですが…汗
また筆記媒体が壊れましてiPadで更新するつもりです。
頻度がまた低下しますが、なるべく更新をしていきたいと思います。
次回九日更新予定です。




