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殺したいほど愛したい

透け透け黒肌角男は突然私に向かって駆け出した。


拳を振り抜く姿勢で構えるも、此方も食らう訳にはいかないので下から腕を殴ると足を掛け転ばせ背中を踏みつけた。


捕獲完了、いっちょ上がりってやつだ。


「マルシェラちゃん、こいつ知ってる?」


「全く知らへん。見たこともないわ。」


ふむ、マルシェラちゃんが知らないならきっと原作には深く関わってないモブか。


多少手荒に扱っても平気だろう。


最近原作で目にした名前が多いからこいつももしかしたら…って思ったけどそんな事はなかった。


「き、貴様ッ!何者だァ!【あの方】の計画は必ず遂行しなければならないのだッ!なのに、何故だ?!」


目の焦点が合わず、口角泡を吹き出し妄言の様にひたすら何かを言い続ける。


正直視界に入れたくはないが、そうもいかないだろう。


男の話す、その何れにも【あの方】と言う言葉が含まれていた。


「正直に話してね。じゃないと痛い目を見るよ?」


「リリー、尋問慣れしとる。怖いわー。」


そんなことないよ、とマルシェラちゃんに返してから男を早く話せとばかりに睨み付ける。


「ふ、ふざけるなッ!この私が捕まるなどあり得ん!きっと何かズルをしたに違いないッ!」


うーん、少し黙らせようか。


火弾を顔面にぶつけてやると男は静かになった。


「怖い怖い…やっぱ慣れとうねぇ…」


「……良い?二度目はないからね?私の質問に答えなさい!」


よっぽど効いたのか、男は何度も頷いた。


「あなたの目的は?マルシェラちゃんに【天魔の縛鎖】を使ったのは誰?」


「ま、待ってくれ!一辺に言われては理解が追い付かない!一つずつ答えさせてくれ!」


「良いわよ。まず…そうね、あなたの名前と種族から教えて貰おうかしら。その後に目的を話して。」


私は油断しないように火弾を五つ浮かべると男はそれを見て変化の分からなそうな真っ黒な顔を青くした。


「私の名はベッコ、魔王軍諜報機密部隊の者だ。種族は、メタモルスライムだ…です。」


ふむふむ、やっぱりスライムだったか。


メタモル…つまり変身能力に特化していて、それで呆気なく倒された、と。


さっきの動きを見るからに武術の心得がないのも分かっていたが、これで確信を得た。


「次の質問。この古城で何をしていたの?」


「……マルシェラの監視と護衛、そして【天魔の縛鎖】の管理だ。その女は死天王や【あの方】から高い評価を得ている。戦闘の心得はないが、ここの魔物は【あの方】の息が掛かった奴らばかりだからな…私の仕事が楽で仕方ないよ。」


どや顔でそう宣言したベッコ。


正直イラッ、と来たので火弾を倍に増やすと青を通り越して真っ白になった。


「質問を変えるよ。スタンピードを起こしたのは誰?」


「【あの方】の命令で私が起こした。」


「そう、じゃあ最後の質問。【あの方】とは一体誰?」


「…」


ベッコはこの質問には固く口を閉ざした。


「言えば解放する。命も保証するよ?」


「ほ、本当か…?言う!【あの方】は魔王軍のーーうぎゃあッ!!」


突然苦しみだしたベッコは数秒のたうち回り息を引き取った。


その間私は治癒をせずに傍観していた訳ではない。


突然送られてきた不可解な魔力の根源を探っていたが、どうやら私より魔法の扱いが上手いようだ。


むぅ…

悔しいけど、私じゃこの嫌な魔力を止めることは出来ないっぽい…


「マルシェラちゃん、行こう。」


【天魔の縛鎖】をリュックに仕舞い私は怯え震えているマルシェラちゃんに声を掛けた。



「……え?あ…うん…」


どこか上の空なマルシェラちゃんの手を引き、マルシェラちゃんの私室へと向かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ゴールディンモート王国都市マルバラ上空


ーー???


「ベッコの奴しくじったみたいだねぇ…」


誰に言うでも無く外套を纏った男とも女とも判別出来ない者が独り言の様に空中に言葉を投げ掛ける。


「【使徒】の…仕業ですか?」


似た様な格好の者が一歩後ろから独り言を呟いていた者に確認を取った。



「そうだねぇー、それも飛びっきりの力を持った奴さ。長い間行方不明だったゴッサムが帰ってきた途端、コレだよ。クフッ…面白いねぇ…!」


「何とッ?!その様な者が要るとはッ!」


「ボクもビックリだよ。《勇者》なんかとは比べ物にならない魔力量だよ。うーん、魔物使いはもうダメだねぇ。研究は諦めよう。」


少しも惜しくない様な口調で古城を見やる者は笑みを深めそう告げた。


「では《狂乱の古城》、破棄しますか?」


「い~んや、面白そうだしこのまま残しておこうか。そうだ、魔物使いを救ったご褒美をあげないとねぇー。」


「褒美とは如何様な物を?」


「マルバラにけしかけたスタンピードを解除してあげようかなー。【使徒】が本気を出したらこの辺り一帯の地形が変わっちゃうからねぇ~。これ以上は無駄な浪費だよー。ダラス、君は絶対に手を出したらいけないよ?五分と持たずに塵になってしまうからね。」


「何と…ッ!?ッ…畏まりました、マオ様。」


「ボクは楽しい事が好きなんだよ。今は収穫を待って大事に大事に育てなくちゃねー。クフフ…あー早くあいしあいたいなぁ。ダラス、次の計画の準備しといて。」


「畏まりました。」


「クフフ…!【使徒】、早く会いたいなぁー!」


マオと呼ばれた者は一人何かを考える様に、手の甲を顎に当て隠った笑いを一人妖しげに浮かべるのだった。

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