自由を夢見る古城の眠り姫2
思わずテンションが上がって私は敵地だというのに大声で叫んでしまった。
それもそうだろう。
サブヒロインの中でも私がかなり好きなキャラが目の前に現れたのだから。
彼女の名はマルシェラ。
魔獣使いという特殊なジョブの彼女は別名【怠惰の魔女】と呼ばれている。
見た目は中学生くらいだけど、四百…げふんげふん…才で所謂ロリババア枠のサブヒロインだ。
姉萌え系作品ではあるが、ババ…お年を召しすぎているので登場時は賛否両論あったものの可愛らしい言動とルックス、あと悲惨な過去を持つキャラで感情移入しやすいのが私的にかなりグッと来る。
手に持っている抱き枕はうん…ゴッサムである。
あのゴリマッチョ親父、訳有ってマルシェラたんの保護者役なのだ。
マルシェラたん、可愛いよハァハァ…おっと、ここは紳士(私の場合、淑女?)的に接しておこう。
生憎彼女の攻略方法は既知である。
敵対心を抱かれててもまだ挽回出来るチャンスがあるのだ。
「ん?初めまして…やんな?ウチ、人族の知り合い居らへんし…えっと?敵…で合ってるん?」
「初めまして、で合ってるよ。私はリリアナ、気軽にリリーって呼んでね?古い文献で貴方の事を知って魔族から助けに来たって言えば理解してくれるかな?」
「ほんに…?でも、ウチ隷属魔法を掛けられとぉて…ここから出られへんのよ…」
「敵意は無いから城の中に入れてくれる?私なら何とか出来るかもしれない…いや、して見せるよ!」
彼女が登場する場所は全く違うのだが、解放は出来る筈だ。
確証は無いけど、アレがダンジョンの何処かに仕掛けてある筈…!
「でも…おとーさん…ゴッサムに見付かったら…!ウチ、死天王の直属部隊やし…」
「私に任せて!ね…?」
「うーん…?」
まだ信用度が足りないかな?
そりゃ、そうか。
いきなり現れて
貴方を解放します!
なんて言われても、信用出来る筈が無い。
けど、彼女の中で自由になりたい葛藤と、義理の父親代わりであるゴッサムへの恩が競り合い葛藤しているのだろう。
「【天魔の縛鎖】。」
「え?どうして、それを…?ウチとおとーさん以外誰も知らない筈やのに…!」
「私はね、これでも賢者って呼ばれてるんだ。貴方の過去も【過去読み】の能力がある私にはぜーんぶ丸見え!」
まるっきり嘘ではない。
私には原作の知識があるのだ。
まぁ、賢者っていう部分は多少盛ったけど、多少原作知識を濫用したって誰も文句は言わないでしょ。
「分かっ…た。少しだけ…少しだけ貴方を信じてみる。けど…もし、悪意を感じたら、ウチのお友達たちに襲わせるからね?」
「うん、わかったわ!」
私は優しく微笑み彼女の横へ歩み進んだ。
少しでも信用度が稼げるならば、安いものだ。
「あ、あんまり近付いちゃダメだってば!まだ信用してへんのやからァ!」
「だいじょぶだいじょぶ、直ぐに慣れるって!」
彼女に見えない角度でニヤリ、と笑った私は警戒しながら距離を離そうとするマルシェラの背後に、ピタリとくっつきながら古城の奥へと進むのだった。
あー、めっちゃ楽しい!
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