帰り方模索中…
ランゼが落ち着くまで暫く時間が掛かった。
今、私はランゼと二人でギルドマスター部屋に来ている。
ダリアも一緒にと思ったのだが、巻き込むのは宜しくない。
私は過去に戻らなければならない。
世話になった分は返すがこれ以上深入りさせるわけには行かない。
それに、ゴッサムがもしかしたらこの世界に居るかも知れない。
奴は執念深い性格だから一度獲物と決めたなら必ずしつこく追ってくるはずだ。
私一人なら対処出来るが、人を守りながらなんて戦えない。
そんな余裕が無いのだ。
「リリアナ様…!よくぞご無事で…!」
「もう…良いから。私が居なくなってからの事教えてくれる?」
「分かりました。まず、マシュー様ですが…」
その後ランゼが語ったのは驚きの事実だった。
15才となったマシューは迷宮を十個攻略し、爵位を上げセンティス侯爵を名乗っているという。
13才の時にジョセフから勝利をもぎ取る様になると今度は魔法を鍛える為迷宮へと入りひたすら自分を磨き上げる事に邁進したらしい。
重力魔法に目覚めたのはつい最近だと言う。
マシューに負けたジョセフはパルメラに騎士団を任せ、自分は放浪の旅に出たという。
『お嬢は今も何処かで生きている。』
そう言い残してセンティス領を去ったらしい。
そして残された騎士団の隊長格はある者はジョセフを追い、ある者は冒険者として活動し情報収集に励んだという。
ランゼも後者なのだろう。
高位冒険者になれば、情報が勝手に舞い込んでくる。
それを逆手に取り、さっさと引退し、グランドマスターであるジェシカのコネを使ってギルドマスターへの席を簡単に勝ち取ったという。
「そう、マシューが…」
私は驚愕した。
あの泣き虫へっぽこマシューが今では迷宮攻略者、しかもトップランカーだという。
人生何があるか分かった物じゃないなぁ。
これも世界の求心力なのか、はたまたマシューの努力が実ったのか。
あのジョセフから一本取るなんて中々やるじゃない。
私でさえ一本取った事もないのに…!
「それでリリアナ様、今後の動きですが…如何しましょう?」
「んー、とりあえずアムスティアを目指すよ。ランゼ、地図はある?」
「えぇ、此方に。現在地が此処。アムスティアは此処です。丁度大陸の反対側です。」
マジか…滅茶苦茶僻地じゃん!ここゴールディンモートのマルバラは海の近く、しかも南の端の端だ。
そして四国を越えた北の北。
アムスティアはかなり遠い。
「ねぇ…歩いたらどのくらい掛かる?」
「およそ半年ほどでしょうか。ですからあまりオススメ出来ません。それに帝国をどうしても突き進まなければなりません。あそこは魔王軍との最前線、リリアナ様でも命が幾ら有っても足りないでしょうね。」
マジか…
「他に移動方法は?」
「海路と空路が有りますね。最近になってルルイア・エンディミオン様が開発された飛空挺が帝国南のクーロン王国に月三度、それか聖教所有の大型帆船が月に一度この地にやって来ます。」
ふむ…此処からクーロン王国までは約二ヶ月か。
ならば海路一択かなー?
でも色々な国を見て回りたいしー…よし、決めた。
歩いて帰る!
別に急ぐ旅路じゃないし、何が私の時代に戻るヒントかも分からない。
それならあちこち見て回るのも悪く無いよね!
「決めたよ、私は陸路でーー」
「失礼します!ギルドマスター!緊急事態です!スタンピードがこの町目掛け接近しています。」
およ?
「数と種族は?」
「二万以上の混成部隊です。分かっているだけでも、ゴブリン、オーガ、オーク、ハーピィ、ユニコーン、コボルド、サイクロプスと多いです!各種の変異種、上位種も確認されています。」
およよ?
「ヤバいな…!!まずは非戦闘者の安全の確保、そしてギルドの名で緊急強制依頼を出せ!この際衛兵隊にも協力を仰げ!」
「直ぐに手配を!」
「もしかしてピンチ?」
「ええ、生きるか死ぬかの瀬戸際です。」
あちゃー…
「手伝おっか?」
「ッ!是非お願い致します!」
五体当地するかのような綺麗な土下座をランゼが見せた。
私の出陣が決まった瞬間だった。
本日でリリちかっ!は二周年となります。
拙作ではありますが、今後もよろしくお願いします!
本日は七話更新致します。
感想、ブクマ、評価、レビューお待ちしております。
※誤字を訂正
ユーロン王国→クーロン王国




