閑話 姉の居ない日々5
やがて、他の貴族達の挨拶が終わり、場のムードが盛り上がっていく。
音楽隊が華やかなメロディを奏で、次々と中心で踊り始めた。
参ったなぁ…クトゥリカさんの告白に返事をしなければならない。
あれからじっくり僕は悩んだのだが、答えは未だに見つからない。
勿論、好きなことは好きなのだけど、身分差が邪魔をしてしまう。
「マシュー様…!」
ウッ…そんな潤んだ瞳で僕を見ないで欲しい…!
助けて、ジョセフ!
後ろに居たであろうジョセフはニヤニヤと僕を笑いながらこうやってやるんだよ、と教える様に綺麗なお姉さんの手を取って中央へ向かった。
綺麗なお姉さんは目がハートマークになったかのようにジョセフへしなだれかかりその腕を掴んでいた。
むぅ…僕としては親友の父親の浮気現場を見たかのような不快感を受ける。これはジョーズママに報告しなくちゃ。
だが、それとこれとは別だ。
未だに僕を潤んだ瞳で見つめるクトゥリカ様の手を取り、僕は口付けをした。
覚悟を決めよう。
「クトゥリカ様、僕と踊って頂けますでしょうか?」
「ええ、勿論ですわ。」
クトゥリカさんは凄く嬉しそうに顔を真っ赤にしながら微笑んだ。その表情はまるで天使を彷彿とさせてーー
「え?」
僕が掴んでクトゥリカさんの手が無理矢理引き剥がされる。
「おいおい、我の舎弟にちょっかい出すたぁ、どこの女狐かな?」
「はいはい、姉様もユグドラも落ち着きなさい。」
掴み合いの喧嘩に発展しそうになったクトゥリカさんとユグドラさんの仲裁にルルイアさんが割り込んだ。
「あらあら、マー君てばモテモテね!」
「レイン、今がチャンス!二人が睨み合ってるうちに早く!」
「何故わたくしが…?って、私は良いですわ!ハッ!サレナさん、チャンスですって!」
「レインさん、上手いですぅー!」
「わ、私か?うむ…今まで剣しか握って来なかったこの武骨な手で良ければ好きなだけ握ってくれーー」
「マシュ、ぼくと踊ろ?」
サレナさんが僕の手を取ろうとした瞬間横からオリヴィエ様が僕の両手を取った。
「えっと…はい?」
そのオリヴィエ様の腕を掴み引き剥がし、リサーナ様が僕の前に立つ。
「私と踊る機会なんて他の木っ端貴族にはあり得ないチャンスよ?良かったわね!」
「なら王族と踊るなど一生に一度有るか無いかであろう。マシュー、私の手を取る名誉をやろう。」
「あ、え、えっと…ごめんなさーい!」
僕は逃げ出した。
それはもう全力で。
けど、何故だろう?
姉さんの友人達から好かれているのは有難いけど、僕じゃ役不足だ。
本当に何処に居るんだろう?
姉さん、早く帰って来てー!
これにて第二部終幕に御座います。
ここまでお付き合い頂き有り難う御座いました。
最後の最後に滅多に出番の無かったヒロイン達も出せて良かったな、と作者は満足しております。
え?一人忘れてるって?
誰の事かなー?(ゲース顔
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