閑話 姉の居ない日々4
銅鑼の音と共にレオンハルト陛下に王妹ナナリア様、王姉リアスティーナ様、僕が知っているのはこの三名だけだけど、他の方々も名前だけは知っている。
第一王妃であるシアーナ様に陛下の生母マリアナ様。
他の王位継承者の方々は体調不良でお休みらしい。
陛下が玉座から立ち上がり声を張る。
これから陛下のお言葉があるのだろう。
「皆のもの、本日は良く集まってくれた。去年は色々と有った。惜しい英雄も姿を眩ませてしまった…だが、我々は今日を、そして明日を、生きねばならない!前を向こうぞ、余からの挨拶は以上とする。今宵は存分に楽しむが良い。」
拍手喝采の元に陛下のお言葉を頂き、爵位の高い順に陛下へ挨拶へと伺う。
何故か僕はユグドラさんに腕を掴まれ一緒に謁見することとなった。他の四公家、レインさん達、それにサレナさん達も一緒だ。
えー?良い…のかな…?
僕、レオンハルト陛下に嫌われてるっぽいし、なんか同年代の男の子達の視線が痛い。
それにこんな大人数で挨拶したら迷惑じゃないかな…?とビクビクしていると、陛下の前にあっという間に着いてしまった。
「陛下、新年のご挨拶申し上げます。所用が有りまして大人数での謁見、ご容赦下さいませ。」
「良い、パーシアス公よ。そなたが無事で余も嬉しい。どれ、ナナリア、お前も皆の輪に加わって来い。どうせ退屈だろう?」
「陛下、お戯れを。しかし、暇をしているのは事実ですわ。マシュー、と言いましたわね?あなた何かして下さる?」
はへ?まさかのナナリア様からの突然の無茶ぶりである。
だが、事ある毎に姉さんの玩具として鍛えられた僕の即興力を舐めて貰っては困る。
「そうですね…では、こんなのは如何でしょうか?」
僕は少し離れ、光の玉と氷の玉を上空へ打ち出す。
勿論天井に当たらないように配慮はしているし、僕のコントロール下にある。
それを幾重にも作り出し回転させ、光の玉はその場で強く輝かさせ、氷の玉はその場で粉々に粉砕させる。
風の魔法を操って氷の破片をナナリア様の顔に似せ配置して手元に置く。
「ふむ…やはり凡才な身なれば、殿下の美しさをこれ以上再現できない事をお許し下さいませ。」
そう言って僕は手に持ったナナリア様の顔を上空に投げ、分解し、花束へと変えた。
「殿下には此方の方がお似合いでしょう。どうぞ!」
「す、すごい!凄いわ!兄上、見た?ナーナの顔が一瞬で花束に…ハッ!ごめんなさい、私はしゃぎすぎてしまいました…!」
「良いんだよナーナ。マシュー、ありがとう!」
「いえ、私は…」
陛下とマリアナ様の瞳には涙が浮かんでいた。
リアスティーナ様の瞳にもうっすらと涙が伝った後が。
「フフッ…許せ。王の身分と言えど、愛する妹の久方ぶりの笑顔を見せられては兄として涙の一つくらい溢すさ。ナーナ良かったな。」
「はい、兄上!」
そういえば風の噂で聞いたことがある。
姉さんに懐いていたナナリア様は姉さんの真似をして剣の稽古や魔法の稽古を始めたって。
そんな敬愛する姉さんが戦争から帰ってこなかったと聞いたナナリア様はそれはそれは落ち込んでいたとか。
笑顔に出来て良かった。僕は心から思った。
他の貴族に順番を譲り、僕は皆を引き連れ陛下の前から離れた。
何故かナナリア様も着いてきており、今は僕の腕を掴んであれやこれやと魔法や剣について聞いてくる。
偶然陛下と視線が合う少し嬉しそうでかなり寂しそうな微妙な顔をされたので僕は慌てて視線を反らした。
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