閑話 姉の居ない日々3
「マシュー様!お会いしとうございました。」
エンディミオン公爵家ご令嬢の双子姉妹が僕の元へ近付いてくる。
一人はマイペースに、もう一人はプレゼントを見つけた子供の様に一目散に。
前者が僕の魔法の師匠である妹のルルイアさん、後者が完全に足が治療された姉のクトゥリカさんだ。
「クトゥリカ様、ルルイア様、ご無沙汰しております。お元気そうでなによりです。」
「まぁ、マシュー様ったら他の方々の前だからって、他人行儀すぎはしませんか?クトゥリカは悲しゅうございます…オヨヨ…」
「姉様、お戯れは程々に。マシュー、元気そうね。魔法の鍛練もしっかりしている様ね?また魔力が上がっているわね。」
「はい、師匠…じゃなくてルルイア様。僕なりに鍛練のやり方を工夫しまして、気付いたら効率化しました。」
「それは興味深いわね。後で聞かせて貰えるかしら?私も実践してみたいわ。」
「勿論です。後で清書してレポートにて報告します。」
などと僕とルルイアさんが魔法談義をしていると、泣き真似をしていたクトゥリカさんが僕とルルイアさんの間に割り込んだ。
「もー!ルルばっかりズルい!私だってマシュー様とお話したいのにぃー!ムゥー!」
「はいはい、そんなに睨んでも姉様のマシューは取らないから安心してちょうだい。マシュー、姉様の相手お願い出来るかしら?」
「アハハ…僕で良ければ。クトゥリカさん、少し歩きましょうか?」
「ッ!ええ、是非ーー」
僕がクトゥリカさんの手を取ろうとしたその時、間に割り込む者が現れた。
「マシュ!久し、ぶり。」
ジェネシス公爵家令嬢オリヴィエ様だ。
「オリヴィエ様、ご無沙汰しております。」
「ん!マシュ、背伸びた?」
「そうですね?少し伸びたかもしれません。」
「ん!いっぱい、成長してズルい!はんぶん、身長わけろー!」
ぽかぽかと僕の胸元を殴るオリヴィエ様。
全く痛くも痒くもない、僕の一つ下の姉さんの幼馴染みだ。
あまり話が得意じゃなくて片言混じりだったけど、以前より話せる様になったのだろうか、スムーズに会話を楽しめる。
「こんな所に居たか、マシュー殿!っと、取り込み中かな?ハッハー!」
「あ、サレナ様。えっと三日ぶりです。」
「サレナちゃん、公女様達の前だよ。私達が話すのは後。ね?」
「イシスさん、気を遣わせてすみません。また今度菓子折りでも贈らせて頂きます。」
メルトリア伯爵家ご令嬢サレナさんとパルコシア子爵家ご令嬢のイシスさん。
この二人は親友でいつも一緒に居る。
仲が良くていいなぁーと僕は思っている。
「出たわね、お邪魔虫!」
「クトゥルカ?仲良くする!」
「ハッハー、エンディミオン家が怖くて剣聖が目覚めるか!マシュー殿、手合わせ願おう!」
「あ、えと…今はちょっと!それに今日は王妹さまのお披露目会ですし…!」
「オリヴィエさん、私らクトゥルカではなくクトゥリカですわ。何度教えたら覚えて下さいますの?」
「そだっけ?ごめん。」
んー、どうして僕の回りにはこう、色んな女性が集まるのだろうか?
それも全員姉さんと関係のある人達ばかりだ。
「オーホッホッホ、私を拝みなさい!下級貴族共!」
「おい、リサーナ!目立ちたがりなのは分かるが、場を弁えろ。というかお前を見てると私は二つの意味で目が痛いぞ?」
「ん?あれは、リサーナ嬢とユグドラ嬢か。珍しいな、四公家が一同に介するとは。」
クライシス公家令嬢のリサーナ様、パーシアス公家令嬢ユグドラさん…じゃなくてご当主様のユグドラ様が騒ぎ立てながら入場する。
後見人として名乗り出たクライシス公家の令嬢、リサーナ様と仲良さそうに話している。
そっか、ユグドラさん回復したんだ。
失ったものが多くあっても、姉さんがどうしても助けたかった人がこうして元気に歩いているのを見て僕は少しほっとする。
助けて良かった、と素直に思えた。
そんな風に考えていたらユグドラ様がリサーナ様を連れて僕の居る方へ向かってくる。
「ん?マシュー、息災か?」
「ええ、ユグドラ様も順調に回復したそうで嬉しゅうございます。」
「ハハ、そんな畏まるって、一緒に寝た仲だろ?あと、我のことはユグドラさんか、ユラ姉ちゃんって呼べ!」
「いや、あれは不慮の事故ですから。それと他言無用なのでは?それにこのような場では外聞が御座いますので…」
一緒に寝た、と言っては流石に周りが騒がしくなる。
それに一緒に寝たではなく、寝かされたが正解だ。
何て事ない、姉さんとの訓練中に二人して軽く転がされたのだ。
ユグドラ様は取っつきにくい性格だけど、僕にはフランクに接してくれる。
年下の面倒見が良いというか、姉御肌というか。兎に角優しくして貰っている。
本人は周りと関わるのは面倒だと言うけど、姉さんとの仲も良かったし、ルルイアさんとも交流がある。
少し口下手なだけだ。
そんなユグドラさんの事を僕は慕っているし、ユグドラさんも公爵家当主としての責務もあってあまり会えてなかったが、たまに文のやり取りをしている。
まぁ、何が言いたいかと言うと、僕のもう一人の姉さんみたいな人である。
「王家の方々のおなーりー」
僕達が騒がしくしていると銅鑼がなり、王家の方々が入場してきた。
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