死の足音
「初めまして、かな?リリアナ・アルデン・センティス嬢とお見受けする。私はバルッセ帝国皇帝ヨハンだ。さぁユグドラ、挨拶は?」
「妻の…ユグドラ…です。初めまして、さようなら。」
少女から放たれたのは、決別の言葉と短剣だった。
私はそれを足蹴にして短剣を遠くへ弾くと身構える。
ユグドラちゃん…やっと会えたのに、どうして?
おかしい…何かが…
私は目に魔力を集中させる。
すると不可解な魔力の流れが見えた。
操られている。
精神支配系の魔法か何かだろう。
「ユグドラちゃん!リリアナだよ!私の事忘れたの?!」
私の呼び掛けに何も反応を示さないユグドラちゃん。
もう一本隠し持って居たのか懐からもう一本の短剣を取り出すとレインの元に駆ける。
「レイン!」
私の意思を汲み取ったのか、レインはユグドラちゃんを傷付けない様に、いなしていた。
ユグドラちゃんはレインに任せて大丈夫、なはず。
ならば…!
私はヨハンに集中する。
「ヨハン!お前だけは絶対許さない!」
洗脳なんて最低だ、まだ幼い少女を縛り付ける為に施すなんて卑劣過ぎる。
絶対に…許さない!
「リリアナ、私はお前にも興味が有ってね。今なら洗脳しないで私の元に置いてやるがどうする?」
下卑たニヤけ面を浮かべ、舌舐めずりを始めたヨハン。
ヨハンの言葉を無視し、私は自信最大の剣速でそれを振り下ろした。
ヨハンはギリギリで反応したのか頬を薄く斬っただけである。
チッ…構わず私は次々と剣を振り回す。
私は今、ちょっとだけキレてる。この勘違いロリコン野郎にユグドラちゃんを洗脳され、あまつさえ私まで嫁にするだと…?
貴様ごときに私の人生を決められてたまるか!私の命は私の物だ。
右頬、左膝、右手小指、左手人差し指と中指ーー
私の剣速は尚も加速し、ヨハンは捌ききれなくなっている。それでも私の一方的な怒りは止まらない。
「グッ…ガハッ!き、貴様…此方が手加減してやっているのに漬け込みおって…!ユグドラ、何をしている!私を助けろ!」
「させない!」
今まで見守っていたマシューが私とユグドラちゃんの間に割り込み、ユグドラちゃんに抱き付き組伏せた。
ユグドラちゃんはもがくもマシューの組み付きによって行動が不能だ。
私はユグドラちゃんをマシューとレインに任せヨハンとの決着を着けよう。
「この役立たずがッ!この…皇帝である私が一方的に負けるだとッ?!あり得ん!あり得んぞッ!」
「ヨハン、さようなら。」
私は持てる技術を収束した剣技を放つ。
その一合は確かにヨハンの首を捉えた…はずだった。
しかし、何者かの爪によって防がれてしまった。
「オイオイ、ヨハン。何死にそうになってんだよ?仕方ねえ、俺様が助太刀してやんよ。」
捻くれた四本の角、三対の翼、紫色の肌、三メートルを越える巨体に同サイズの命を刈り取る形をした得物を携えた魔人。
死天王最強のゴッサムの登場である。
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