マリアンヌ捜索
二時間ほど掛けてマリアンヌを探したのだが、手掛かりはパッタリと消えて何も掴めなかった。
イシスちゃんに詳しく聞くと城から本陣に向かう途中に捕虜とポロ、ジョーズを連れていったらしいがその姿を見た兵士は一人も居なかった。
私は暗くなる前に見つけたかったのだが、時の流れには抗えない。
遂には日が暮れてしまった。
領都と本陣のすぐ近くには森が拡がっておりそこに隠れられていたら捜索は困難を窮めるだろう。
私は魔力関知をする事が出来るロイ、スカウト術に長けているモガ、子供だけで行かせるのは偲びないと勝手に着いてきたパルメラとマリキチ(マリアンヌキチガイの略)のセリーヌを引き連れ森へと入った。
他の皆にはもしも自力で三人が帰ってきた場合入れ違いを考慮し、天幕に待機して貰った。
一抹の不安も残るが捜索に支障は出ないだろう。
「何処に消えたんだろ?」
「一緒に居るポロとジョーズも心配ですね」
私の隣に立つロイが私の呟きを聞いていたのか、心配そうな顔で答える。
「お姉さま、あれを!兄の槍では?」
森を散策しているとモガがポロの槍らしき物を見つける。
うん、確かにポロへ私があげた槍だ、センティスの家紋も入っている。
「どうやら森の中に居る様だね。此処からは慎重に行こうか!」
私は結界で足場を作り木々の上から探索する。
今宵は満月、月明かりだけで十分捜索出来そうだ。
輝く星々に照らされ私達は歩を進める。
暫く歩くと月明かりに何かが反射して居るのをパルメラが発見した。
「閣下、アレは何でしょうか?何やら腕輪の様な物が…」
ん?この世界に来て視力は上がったのだが、山暮らしをしていた目の良いパルメラには勝てない。私には鉄の塊にしか見えないのだけども…
「あるいは手枷でしょうか?縄も括り付けてあるので間違い無さそうですね!」
「手錠?捕虜が外したのかも知れない。ロイ!周辺の魔力を感知、見つけ次第報告して!」
「承知しました。……見つけました!十二の反応、ここから南西の方角です!数もポロ達を入れれば一致します!」
「急ごーーあ、セリーヌ!単独行動は止して!」
「お嬢様!今、不肖セリーヌが参りますよ!うぉおぉおお!」
やはり感が当たった。暴走を始めたセリーヌは私の静止を待たずして一人で突っ走り始める。
勘弁してほしい…これだから連れてくるのは嫌だったのだ…
どうやらマリアンヌの事になると周囲の事などお構い無く優先してしまうらしい。彼女の優先順位は自分や軍、あるいは聖教よりもマリアンヌ第一の可能性がある。
「はぁ…行こうか。」
「お嬢様、いけません!足下に鉄線が!」
え?うわっとと!慌てて踏み出しかけていた足を引き戻した。
下草に隠れる程度の高さに上手く隠されていた様だ。
走り去ったセリーヌは聖教騎士たる証の白銀に輝く鎧に身を包んでいるし、大声を上げ全進している為もはや気にさえしていないだろう。
「私達は安全面を考慮して上空から探索しよう」
私は三人に伝えて結界で上空からマリアンヌ達を捜索するのだった。




