消えたマリアンヌ
マシューを回収した後、尖塔に掲げられた公国旗を降ろし王国旗を上げ作戦の成功を攻城戦中の王国兵達に知らせた。
上空から私が見る限り二つの反応に別れた。
一つは歓喜に色めく声を上げ武器を天に翳す王国軍。
二つ目は敗戦を悟り武器を捨て絶望にうちひしがれその場にくず折れる公国軍。
マシューを背負い捕虜を引き連れ本陣に戻るとパルメラに出迎えられる。
「閣下、お疲れ様でございます!お早い帰還ですね、見事なお手並みです!」
「うん、皆が頑張ったからね。マシューをお願い、敵の総大将と一騎討ちして消耗してるからベッドで休ませてあげて!」
「ご迷惑お掛けします…」
「全くよ!大体あんたは自分がまだまだ弱いのを分かってて一騎討ちするなんて命知らずにも程があるわ!そんなに死に急ぎたいなら私が…」
私は腰に差した剣の柄に手を掛ける。
「わーわー!姉さん落ち着いて!剣抜かないで!まだ死にたくない!ごめんなさい!反省してますー!」
「ったく…あんたは!ふぅ…冗談よ。もう二度とこんな事はしないで?ガーズ夫人と妹を悲しませる様な真似は止しなさい。良いわね?」
「分かったよぉ…」
このバカは反省という言葉を知らないのかしら?全く…誰に似たのだろう?
「パルメラ、連れてって」
「承知しました!」
きびきびとした動きでマシューの手を取りパルメラは天幕の奥へ向かっていく。
ちらとレイン達を見ると少し落ち込んだ表情をしているのが気になった。
「どうしたの皆?」
「いえ…悔しいですが、私達はマシューさんに劣りますから…リリーの呵責が心に響きまして…私ももっと努力しなければいけませんね…。」
「私もだ。マシュー殿との鍛練では一度も勝てた事がない。剣聖の血を引く者として自分が恥ずかしいよ…マシュー殿の倍は努力せねばかてないのだろうか…?」
「あー…マシューの真似は止した方が良いかも。あいつ、皆の三倍のメニューを朝昼晩三回こなしてるし、寝る前に私と手合わせを倒れるまでやってるから皆じゃ体力が持たないと思うよ?落ち込むことないよ、皆でゆっくり強くなろう?」
ちなみに私はマシューの更に倍はこなしている。
寝る間も削って鍛練をこなさなければ、ジョセフを越える事など夢のまた夢だろう。
まぁ皆には話さないのだけど。
「はい。リリー、そういえばマリアンヌさんの姿が見えませんが、何か頼みました?」
そういえばマリアンヌの姿がない。
もちろん私はマリアンヌに仕事を頼むほど信頼はしてない。
そういえば連れてきた捕虜もいないな…
「いや、私は何も頼んでないけど…捕虜も見当たらないし…皆は知らない?」
するとイシスちゃんが遠慮がちに手を上げ口を開く。
「先程、アポロさんとジョーズさんを引き連れ捕虜を兵士に引き渡してくると仰ってましたよ?それにしては帰りが遅いですが…」
私は少し嫌な予感がした。
トラブルメーカーのマリアンヌが何か行動を起こすとき何かしら事件もしくは問題が起こる。作中でもそうだった。
私は伝言を残し天幕を後にしてマリアンヌを探しに出た。




