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従魔召喚

本日更新二度目です。

お読みでない方は前話をお読み戴いてからご覧下さい。

パーシアス家の領都キャメロンに到着したのは三日後の夕方だった。


キャメロンには多くの公国兵が防御陣地を築いておりジョセフ達は攻めあぐねている様子だった。



「お嬢、着いたのか!すまねえ。流石に二千じゃ、どうも攻めきれねえ…!」


申し訳なさそうにジョセフが頭を下げる。


「謝らないで。明日の朝一番に全軍で包囲、四方の門を破壊して雪崩れ込むよ。北はジョセフに任せるとして、東はアルトリオ、西はバルムンク卿、南は私…と言いたいところだけど、そろそろ聖教騎士の収まりが着かなそうだからセリーヌに任せるか…それぞれ三千預けるから。私は後方で待機してるから四人で打ち合わせしといて。」


「了解。」


返事をするや否やジョセフは指揮をしている三人を探しに駆け出した。


レイン達の元に戻りマシュー達四バカも引き連れ天幕にて話し合いを始める。


「明日、キャメロンを落とすよ。皆にも出てもらうから。ジョセフ達が四方から攻めている間に空中から侵入して私達でキャメロン城を制圧しちゃうよー」


私は軽い感じで伝えたが、皆驚きと困惑の表情だった。


「ね、姉さん!制圧しちゃうよーって軽い感じで言ってるけど本当に僕達だけでやるの?せめてホセさんとか、レオパルドさんとか呼んだら?」


いち早く立ち直ったマシューが弱気な発言をする。


この弟は…全く。


「当たり前でしょ。何のために連携の訓練をしたの?戦うためでしょ?それともあんたは今から王都に逃げ帰る?私は構わないけど。」


「そんなつもりじゃ…わ、分かったよ!僕もやる!やらせて下さい!」


軽く煽るとやる気を取り戻した様でマシューは私に頭を下げた。


ん!良いになった!


「みんなもそれで良い?」


皆に視線を向けると各々頷いているので、大丈夫そうだ。


私は作戦を説明し始めた。



打ち合わせを終え私はルルとイシスちゃんを呼び天幕から離れる。



「よーし、早速試してみよっか。」


何をするのかと言うとルルとイシスちゃんと私三人で合成魔法を試すのだ。


使うのは危険度の少ない【従魔召喚】。


私一人で魔力量は足りるが今回契約するのはイシスちゃんとルルの二人。


魔力が一定量の基準が必要で、今回クリアしたのはこの二人だ。


マシューなんかもギリギリ届くかな、と言ったところだが一角天馬が居るのでまだ大丈夫だろう。


二人の総量に合わせる形で私も魔力を注ぎ込むがどのような従魔が出てくるのかは未知数。


ぶっちゃけキャンセル不可のリセマラが出来ないというリアルであったら炎上不可避のクソゲーである。


だけど二人共従魔を持ちたいというので協力することになった。


ちなみに私はまだ従魔を持つ気はない。


使う総量に応じて格が上がっていく。


せめて竜種を呼び出すくらいの魔力量は欲しい。


「最初はどっちからする?」


「私からでもよろしいでしょうか?」


イシスちゃんがおずおずと遠慮気味に手を上げる。


「えぇ、構わないわよ。」


ルルの同意を得たのでイシスちゃんが魔方陣を構築し始める。


契約者が自ら描かなくてはいけないので私とルルは後方から見守るだけだ。


十分ほど掛けて描き終えたイシスちゃんが手を上げて準備が整ったのを報せたので私はイシスちゃんの元に戻る。


「うん、良い出来だね。きっと良い従魔が現れるはずだよ!私が最初に唱えるから後に続けて唱えてみて?」


「はい、頑張ります。ふぅー…お願いします!」


息を吐き出し覚悟が整ったのか、キリッとした顔でイシスちゃんが頷く。


私はイシスちゃんの手を繋ぎ魔力を同調させる。


少し照れた表情のイシスちゃんに微笑み呪文をゆっくりと唱え始めた。



「我が魔力を糧とし、その身を顕現せよ。我が剣となり盾となれ。召喚サモン!」


目線でイシスちゃんに合図をする。


ゆっくりと、だが確実に音を紡ぎ出したイシスちゃん。


「我が魔力をーーー召喚サモン!」


魔方陣が輝き強い光と共に何かを形作り始めた。


それは巨躯の獣だった。


獅子の半身に鷲の顔、漆黒の翼はその巨体を支え宙を舞っている。


「うん!おめでとう、グリフォンだね!名前を付けたら契約完了だよ。」


流石イシスちゃんだ、一発でレアモンスターを引くとは。


日頃の行いが良いのだろう、その運が形になったようだ。



「はい。実は既に決めているんです。貴方の名前は【ルナ】ですよ。」


ルナと呼ばれたグリフォンは甲高い声を上げイシスちゃんに膝を折って顔を擦り付けている。


どうやら既に主として認められている様だ。


「次はルル、行ってみようか。」


「もう魔方陣は描き終えているわよ、同志。早くこっちに来てちょうだい!」


「はいはい」


急かすルルの元に戻るとイシスちゃんのものより精緻で綺麗な魔方陣が描かれていた。


魔法大全や日々の研究で魔方陣を研究しているだけあるなぁ、と私は考えながらルルの手を握り魔力を同調させる。


「リードは必要?」


「まさか。一人で十分よ。魔法大全に載っている呪文は全ての中に入ってるわ。我が魔力をーーー召喚サモン!」


ルルの呼び声に答えたのは小さいデフォルメされた蛸だった。


背面?に黒い羽を生やした全体的に緑色がかった体色をしており、その足の数は長短合わせて二十もある。


あれ…?


これってルルが昔喚ぼうとした某邪神様じゃない?


TTRPGテーブルトークロールプレイングゲームのあの方だよね…?


「ルル、えっと…」


「流石は私ね。フフッ…狙い通り邪神様を召喚出来たわ。名前はそうね…邪神様に私が付けても良いのかしら?」



「うーん、良いんじゃないかな?一応従魔召喚で呼び出したんだし、ルルが主なんだから。」


「そう。名前…ね。クトゥーー」


「ストップストップ!それは多分種族名とかになるからもっと親近感が湧くような名前がいいんじゃないかな?ほら、信頼?を築けるかもしれないし。」


自分で言ってて支離滅裂だと思った。


邪神との信頼ってなんだろうか。


「それもそうね。…じゃあ貴方の名前はローズマリーよ。よろしくね、ローズマリー!」


ローズマリーと名付けられた邪神は触手をうねうねと揺らしながら体を引き摺り器用にルルの肩にちょこんと乗った。


それで良いのかな、ルル?


名前が気品溢れすぎてるんだけど…



本人が納得してるからまぁ…いっか。


従魔召喚は主の責任だし、召喚した時点でぶっちゃけ私の管轄外である。


「姉さんこれは?ーーッ…!!」


「リリー、強い光が見えましたが何かあったの…グリフォン…とタコ?!」


光を見て駆け付けたのかマシューやレインがやって来た。


マシューは魔物に襲われたのかと勘違いし、素早く腰の剣を構えようとしていたが私はそれを手で制す。


「大丈夫、何も害はないよ。イシスちゃんの従魔のルナとルルの従魔のローズマリーだよ。」


「ルナ、敵ではありません。マシューさんとレインさんに挨拶を。」


「ローズマリーもよ。仲良くなさい。」


マシューが剣を構えようとしたのに反応したのか、グリフォンのルナが空中に上がり迎撃体制になったがイシスちゃんの制止の声にゆっくりと地面に降り立った。


ルルの肩の上に居たちっちゃいタコのローズマリーも同様に、肩から降り触手で空を切り何かしらの動作をしていたのだがルルの制止の声で触手を動かすのを止めていた。



「えっと…ごめんなさい。従魔召喚?そんな話聞いてませんが…」


「あー、もう遅いから皆には先に休んでもらって明日の朝お披露目するつもりだったからねー。皆が心置きなく休めるように配慮して離れた場所で召喚したつもりなんだけど…んーと…ルル、ローズマリーは何をしてるのかな?」


私の肩に伸ばした触手でポンポンと叩く仕草をするローズマリー。


まるで慰められている様な感覚である。


「多分同志を励ましているんじゃないかしら?ローズマリーは優しい子ね。」


んー、どうやら思った通り励まされていた様だ…解せぬ!


一騒動あったが無事に従魔召喚を終えた私は更に集まりだした皆や兵士をどうにか落ち着かせ、天幕へと戻った。

四月中はお休みを戴きます。

また5月にお会いしましょう!

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