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我が主の為ならば

少しだけお休みを頂きました、何の通知も無く申し訳ございません…


単純に執筆時間が取れなかったんや…orz


風邪を引いた為出来た時間で執筆しました。

今回から通常更新にする予定です。

が、あくまでも予定ですので変更する場合もございます。

御理解の程宜しくお願いします。


新章突入!

今回は第三者視点でロイに焦点を当てて見ました。


ロイって誰?って方は騎馬民族の長レオパルドの孫の少年だと思って読んでみて下さい。

聖歴951年5月20日ーー

リリアナ・アルデン・センティス率いる北方遠征部隊は王国を出立した。


センティス騎士団五千名、近衛騎士団五百名、犯罪奴隷五百名の計六千人による行軍となる。


更に援軍として独立勢力である聖教騎士二千名が後発として送られリリアナに追従する貴族令嬢の実家から私兵を連れ応援に駆け付けるとの一報ももたらされた。


5月20日早朝、北門に並び立つ騎士に向かい18代国王レオンハルト直々に見送られたリリアナは【整地】と名付けた土魔術を使い、荒れ果てた大地を平坦な足場に変え行軍を始めた。


リリアナらしいずぼらな名付けではあるが、その効力は計り知れない。


馬車の往来する街道や、葦や草の生えた土地でも一瞬にして均等に固く均すのだ。


リリアナの魔術チートを見知っているセンティス騎士団からすればいつも通りの光景だが、近衛騎士団、犯罪奴隷達からすれば己の目を疑っただろう。


最前列を九人の少女が先導する。


リリアナ、レイン、ルルイア、アン、タニア、サレナ、イシス、マリアンヌ、モルガナ達である。


朝を迎えいざ出陣!と意気揚々に北門を目指しているとアン、タニア、サレナ、イシスが意思を伝え合流したのだ。


各家から準備を行ってから援軍を送るとの通達も来ておりリリアナは一つ胸を撫で下ろした。


その斜め後ろには一角天馬ユニサスに跨がる少年と、少年にしがみつく二人の同年代の少年の姿も見える。


マシュー、アポロン、ジョーズの三人である。


もう一人の少年ロイはリリアナに恋い焦がれているためかその姿を少しでも近くで見ようと彼女の数十メートル後ろを祖父レオパルドと共に歩いていた。


マシューから共に一角天馬に乗らないか?

と誘われたのだが明らかに定員過多であり、気の優しいロイはその申し出を固辞した。


何より近くでリリアナの姿を見たかったという下心もある。


(あぁ、やはりリリアナ様は今日も可憐だ…!この戦争で僕は戦功を得てリリアナ様に相応しい男になってみせるぞ!でも…僕にそんなこと出来るのだろうか…?)


彼らにとっては初陣であり、緊張と共に逸る気持ちで胸が一杯だった。


彼らの師であるジョセフから昨夜突然伝えられた北方への進攻。


嬉しさと共に緊張によってろくに睡眠を取れなかったのか、ロイは大きな欠伸をする。



「ふぁーぁ…」


「なんだ?寝れなかったのか…仕方ないやつだな…儂が背負ってやるから少し寝なさい。」


強面だが優しい祖父は甘やかしてくれるが、ロイは首を横に振るった。


「ううん。大丈夫、これくらいならまだ余裕だよ。それに成人したんだからこれくらいじゃ爺ちゃんに甘えられないもん!」


成人したといっても騎馬民族内での成人だ。


大人と一対一で対峙し、より早く相手から腰に巻いた布を取れば成人として迎えられる。


アムスティア王国の法では何ら関係もなく、身体も心もまだまだ子供である。


「そうか…じゃあ儂は娘っ子達の様子でも見てくるかね!ーー頑張れよ。」


言うが早いかレオパルドは老齢に差し掛かって長くなるものの全く衰えを感じさせない足取りで、大斧を片手に前方のリリアナ達の元へ駆けていった。


少し自分で考えた方が良いと判断したレオパルド はロイの元を離れる。

孫の成長が生き甲斐となってしまっている自分を老いたな…と攻めながら。


その反面、主に恋愛感情を抱いてしまった孫を哀れんだ。

報われぬ恋など世の中にはごまんと溢れかえっている。これを糧に良い人生を送って欲しいとも。

戦争から帰ったら見合い話でも持って来ようと考えるレオパルド だった。


(そんな気楽にリリアナ様の元へ…なんて羨ましい…!僕も行った方が良いかな…?行けたら…良いんだけど…)


当のロイはリリアナの元へ向かうレオパルド を見て悶々としていた。


普段は優しく理路整然としており、冷静沈着でマシュー達の纏め役で年上なロイではあるが、こと恋愛に関しては奥手であった。


「なんだー、ロイ?またお嬢のケツ追っかけてんのか?男なら一度押し倒しちまえってんだ!そうすりゃ、自然とお前のことを意識しだすもんだぜ?女ってぇのはよぉ!」


「はぁ…」



一人勇気を振り絞り前へ向かおうかと葛藤していたロイに声を掛けてきたのはアマンダというロイより少し上の十八才の少女だった。


アマンダの言葉は主に対しての暴言であり、通常ならば何らかの罰則が有っても良いのだが誰も咎めようとはしない。


それが彼女の個性だと知っているからだ。


第二騎士団長のホセの姪子で若くして実力のある少女だ。


口は悪いが世話好きで真っ赤な髪を一纏めにして揺らしながら何かとロイ達四人の世話を妬きたがる同僚だ。


騎士団の構成は騎馬民族を取り込んだ現在でもジョセフやホセなど重職につくベテラン以外は四割が女性、二割が十代の成人したばかりの若者だ。


国柄成人男性が少なく、重職に女性が着く事も多々あるアムスティアならではの編成ともいえる。


初陣の者もそれなりに多く、皆緊張の面持ちをしている。


その中でもロイ、マシュー、アポロンに続いて良く名前が上がるのがアマンダである。


女性にしては高い身長、荒々しい口調に豪快な性格、大剣を振り回し大笑いする姿は鬼のようだとは誰が言い出した事か。


面と向かって言えば半殺しで済めば御の字であろう。


だれも決して表立っては口にしなかった。


周囲からすれば実力と将来性のある若者同士仲が良いのは好ましい事である。


ただ、ロイの片思いは騎士団にとって周知の事実であった。


「お前は頑張ってるし、お嬢もきちんと評価してくれるさ!オレは男になんて興味ねえけどな!ワッハッハ!」


「そう…かな?」


「おう、行ってこい!ついでにこれをお嬢に渡してやってくれ!お嬢から頼まれた物資を纏めた報告書だ。男なら当たって砕けろ、だ!まぁ失敗したら大声で笑ってやるよ!そんでもってオレの胸で沢山泣けや!ワッハッハ!」


豊満な胸を強調するように持ち上げ、豪快に笑うアマンダに年頃のロイは赤面しながらも勇気を振り絞って駆け出した。


アマンダから切っ掛けと少しの勇気を貰って。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼



「うぅ…駄目だった…レインさん、だっけ?あの人のガードが固すぎて…」


「あぁ、見てたぜ!傑作だよなぁ、おい!笑わせて貰ったぜ!」


その晩、配られた食料と少量の酒を片手にロイはアマンダの元を訪れる。


レイン、ルルイア、マリアンヌ、モルガナ…とリリアナの周囲をまるで何かから守るかの様に一言も会話をすることさえ出来ず情けなくその場から下がったのだ。


報告書を手渡そうとするもレインに取られ、虫を見るような冷たい眼差しで「ご苦労様です、下がってください」と言われた時のロイの心はまるでガラスの様に砕け散ってしまった。


勘違いが無いように弁明するがレインは決して冷酷な人物ではない。


ただ、ことリリアナの周囲に関しては少し感情が冷めてしまうのだ。


「そんな笑わなくても良いじゃないか…!グスッ…」


「おいおい、男が泣くなんて情けねえな、え?オレの胸を貸してやろうか、ん?」


ロイはとろんとした眼差しで頷くとアマンダの胸に顔を埋めた。


からかう為の冗談だったのだが、純真なロイには全く通用せず鑪を踏むアマンダ。


アマンダが戸惑っていると気が済んだのか数分ほど泣き疲れるたロイは子供の様に眠りについた。



疲労に緊張、眠気に苛まれ慣れない酒を飲んだのだ。


成人したとはいえまだ十三才の子供、誰かに甘えたくもなる。


更にロイは生まれてから直ぐに母を亡くし、父も騎馬民族間での衝突により戦死している。


残った祖父は不器用で甘やかしてくれるが適当な性格をしているので頼れる者も少なかったのだ。


ロイは母性に飢えていた。


と言ってもアマンダは年齢的には姉なのだが、その豊満な胸と包容力がある。


「こうやって見てると寝顔は可愛いもんだな。まぁ…オレの趣味じゃねえけど…って!何言ってんだオレ…?」


頬を掻いて、眠ったロイの頭を軽く撫でる。

無意識的に口を付いた言葉に寂しく突っ込みつつも恐る恐るまたロイの頭へと手が伸びる。


柔らかい感触が指を伝うが、一つ鼻を鳴らして立ち上がる。


脇にロイ担ぎ上げるとアマンダはロイの天幕から一番近いマシューの天幕を訪れた。


「よぉ、マシュー!起きてるか?」


「あれ?アマンダさん、こんな時間にどうしたんですか?…ロイ?!」


アマンダの訪問に驚きながらもマシューは脇に抱えられたロイを見付ける。


「あぁ、オレの天幕に夜這いに来て先に寝ちまったんでこうして連れてきたぜっ!」


「あはは、夜這い云々はどうでも良いとして…あー、昼間の一件ですか?」


アマンダの冗談を軽く受け流し一部始終を一角天馬の上から眺めていたマシューは当たりを付ける。


ロイが姉リリアナに恋心を抱いているのはマシューも周知の事実である。


そんな親友を応援してはいるが、恋敵としても意識している。


二人で恋愛話をしたことはないが、お互いが薄々感付いている状況である。


「なんだ、知ってんのか。会話することさえ出来なくてレインの嬢ちゃんに睨まれてビビっちまったみてぇだぜ?あんな品の良い嬢ちゃんが嘘だろ?って感じだよ。」


「あぁ…レインさんは姉さんのことになると性格が変わるから…」


何度か思い当たる記憶を思い出しながらマシューはロイに毛布を掛ける。


レインの性格の変わり様は、正に百八十度、ついさっきまで機嫌良く話していたのに急に霊が取り憑いたかの様に笑みさえ無くなってしまうのだ。


アマンダからすれば、品行方正で気さくな少女だが男性陣からの評価に自らの手で印象との差異に何度も頭を捻った経験がある。


「もう遅いですし、明日も早いですから寝ましょうか?ロイの面倒は僕に任せてください。」


「悪いね、頼んだよ!」


おやすみと言い合いアマンダは自分の天幕へと戻って行った。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


翌朝、ロイは見知らぬ天幕で目が覚める。


身体を起こし記憶を思い出そうと頭に手をやるとズキンと頭痛がした。



「おはよう、ロイ。大丈夫かい?」


その声に振り返ると親友マシューの姿があった。


「ここは?」


「僕の天幕だよ。寝ちゃった君をアマンダさんが運んできてくれたんだ。昨日は随分飲んだみたいだね?」


少量の酒しか飲んでないのだが、ロイはまだ酒に弱く記憶を無くしてしまうのだ。


更に泣き上戸であり、感情が昂ると泣くという姿をマシューやアポロン、ジョーズは何度か目の当たりにしている。


「そうだったのか…」


「後で姉さんに酔い治しの魔法を掛けて貰うと良いよ。僕も用事があるから一緒に行こう。これ、お水!」


マシューに手渡された水を口に含みゆっくりと嚥下する。

それだけで多少なりとも気分は落ち着いた。


「リリアナ様の元に…邪魔にならないだろうか?」


「ロイは難しく考えすぎだよ。姉さんはちゃんと僕たち一人一人の事を評価してくれてるし、その頑張りに報いたいとも思ってる。本当に出来すぎた姉だよ…」


マシューの言葉とアマンダに昨日告げられた言葉が重なる。


(リリアナ様は本当に評価してくれているのかな?)


疑問に思わずに居られなかったが、その答えは突然前触れもなく向こうからやって来た。



「おらマシュー、朝の特訓の時間だぞ、起きろ~。あ、なんだ、ヤダー、もぉっ!ロイも一緒だったんだ?オホホホホ、ごめんね?朝から大声出しちゃって?昨日は報告書ありがとね、あと…レインがごめんね?ちゃんと私から言い聞かせておいたからさ。ーーあれ?頭が痛いの?」


完全に実家暮らしの弟の部屋に友人が泊まりに来ていた時の姉の反応だがリリアナは下手くそに取り繕って返す。


何の隔たりも無く、すっ、とロイの頭に手を翳し呪文を唱えるリリアナをロイは呆然と見るだけだった。


「あー、お酒飲んだでしょ?駄目だよ?まだ身体が出来上がってないんだから。それと少し右肘が痛んでるでしょ?それも治しちゃうね。…ん?」


リリアナの顔が目の前に近付きロイの鼓動は早鐘を鳴らす。


「プッ…あ、すいません。何だか可笑しく思っちゃって…」


年下の少女がまるで自分の事を弟の様に扱う様を見て、ロイは少しだけ可笑しく感じて吹き出した。


自然とリリアナとマシューも笑い出す。


ロイは恥じた。


自分は難しく考えすぎだ、と。


リリアナはきちんと自分の事を見てくれているのだ、と。


そしてロイは膝を付き姿勢を正すと一つ意思表明をした。



「リリアナ様、此度の戦、もし僕が戦功を挙げたら一つだけ願いを叶えては頂けないでしょうか?」


「突然何を言い出すんだロイ?」


マシューは呆気に取られ口を差す。


「うん、いいよ。そうだなー…敵将を三人以上討てたら考えても良いよ?マシューはその倍の六人ね。」


リリアナは少し考える素振りを見せながらも悪戯っぽく微笑んだ。


そして今のロイが達成出来ないであろうギリギリの線で提案を出した。


しかし、ロイはそれしきでは怯まない。どころか、その目はやる気に満ち溢れていた。



「分かりました、僕もマシューと同じ条件でお願いします!」


「本当に?うーん、良いけど無茶したら駄目だよ?」


「えー…?僕もやるの?」


マシューは完全にとばっちりを喰らい不平を並べるもリリアナの一喝により渋々了承した。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


二日目の行軍、ロイは嬉々として望んだ。


リリアナに手を置かれた頭を一撫ですると真っ直ぐと前を歩く自分の主を視界に収め、微笑む。


隣を歩くのはリリアナとの朝の特訓でヘロヘロになったマシューだ。一角天馬は現在リリアナの友人達を乗せている。


そこに飄々とした様子のアマンダがやって来る。


「なんだー?ロイ、随分とご機嫌そうじゃないかい?何かお嬢と進展でもあったんかね?」


ニヤニヤと人好きのする笑みを湛えながらからかうアマンダにロイは顔を向けゆっくり頷く。


「うん、アマンダの言ってた通りだよ。リリアナ様は僕みたいな奴でもきちんと評価してくれていた。それが嬉しいんだ。」


堂々と、ロイはアマンダに告げた。


マシューは隣で苦笑いしながらも親友の悩みが解決した事にホッと胸を撫で下ろした。


「前方に敵影!戦闘準備を開始せよ!」


馬に乗った伝令によってもたらされた情報にロイはマシューと視線を合わせる。


「どっちが大将首を取るか勝負だ!」


「良いよ?そのかわり本気で行くから。」


少年達はまた微笑みあう。

そしてもう一度思いを寄せる主へと視線を移した。


(ゆっくりで良いんだ。でも確実に今回の戦争で戦功を立てるぞ!マシューみたいにリリアナ様と朝の特訓を毎日するんだ!頑張るぞ!)


少年は内なる思いに焦がれていた。


少年の願いは本人に話せば直ぐにでも叶うものだが彼は知らない。いや、知らない方がいいことが世の中には沢山あるのだ。


その願いは少年らしく微笑ましく純朴なものだった。


いやー第三者視点って難しい…汗

上手く書けてますかね?気になる…

宜しければ気軽に感想を頂けたら作者が喜びます。


ブクマ、評価、レビューも随時お待ちしてます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ、レインさんは正妻ですから、ガードはしっかししなければですね(笑)
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