特訓初日
明けましておめでとうございます!
連載を再開致します!
新年一発目は例の聖女擬き…一体誰なんだ?!(白目
私は皆を引き連れ屋敷へと向かう馬車に乗り込む。
皆和気藹々と楽しそうに談笑をしており私もそれに混じって移動時間を共に過ごした。
屋敷に辿り着くとまずはそれぞれの教官となるジョセフ、ホセ、レオパルド、パルメラを呼び寄せると挨拶をさせる。
このアムスティア王国一精強とさえ呼ばれ始めた私が誇るセンティス騎士団の幹部達だ。
武に通じるサレナちゃんは武者震いするかのように震え感動の為か涙さえ流している。
ジョセフは先祖のゴタゴタなどもあり、少し困り顔をしながらもサレナちゃんの手を軽く握って気持ちに答えているのを私は苦笑しながら眺めていた。
結局感極まったサレナちゃんが落ち着いたのは二十分ほど経った頃で、一度モガに紅茶を入れさせ今回は顔合わせということで解散することにした。
翌日、休日であるこの日は朝から秩序管理委員の面子+モガ、呼んでもいないのにやってくるマリアンヌを集め特訓を始めることにした。
初日は基本的な走り込みなどを行い、体力の増幅を促す。
私がリモーネ商会と梟の搭のコネを最大限に使い造り出した魔法薬をそれぞれに渡す。
赤と青の二薬あり、赤が体力を回復するスタミナポーション、青が魔力を回復するマジックポーションだ。
体力の続く限り走らされた皆に蜂蜜レモンと氷魔法でキンキンに冷やしたスタミナポーションを手渡す。
勢いよくスタミナポーションを飲むとその苦さを和らげるために蜂蜜レモンを口へ運ぶ皆を見て私は少し笑った。
尚、この特訓にはマシューとポロ、ジョーズ、ロイ、ついでにマリアンヌも参加しており、その後ろで私が魔法を使い追い回すという数段上の特訓である。
特殊な訓練なんて全く受けていないマリアンヌではあるが、何故か足だけは早く回避能力も高い。
このまま来年入学すれば聖教委員ではなく、うちに来るだろうなと思いつつ彼女の参加を認めたが、思ったよりも動けるので私は単純に驚いた。
原作でも避けて援護する僧侶だったのだが、入学さえしていないのにこの回避力は称賛に値する。
私は素直に褒めたくなったが褒めたら褒めたで面倒臭いので放置することに決めた。
マシューは生意気にもひょいひょい躱しながら、時折此方へ魔法を跳ね返してきたり、遅れがちなジョーズや他を手助けしたりと余裕を見せていた。
流石は勇者になる男だと感心したいところだが、身内びいきは良くない。
私はマシューには更に重石を課すことに決めた。
調子に乗ってるので出鼻を挫きたいという私的な気持ちではないことはここに記しておく。
マシューに対抗心を燃やすサレナちゃんがその特訓に加わりたいと言っていたが、慌ててそれを止めるとまた外周を走り始めた。
あまり男連中に構っていても仕方ない、時間は有限なのだ。
魔法組の特訓を始める事にする。
全員魔法適性はあるが、とりあえずはルルとイシスちゃん、マリアンヌをメインで鍛えて、他の者の指導に回って貰うことにした。
ルルとイシスちゃんは流石と言うべきか既に魔術師の片鱗を見せており、基礎である初級、応用の中級魔術を軽々と見せてくれた。
問題はマリアンヌである。
先ずは彼女のステータスをご覧いただきたい。
マリアンヌ・ゲース
レベル3
棍棒術 光魔法
そう、棍棒と光魔法の二点極振りなのだ。
原作でも彼女は戦場を駆け巡り回復し、隙有れば棍棒で攻撃するという立ち回りをしているのである。
魔力が高く、追加コンテンツで五属性を付与することも出来たのだが、他のヒロインのコンテンツより少々割高だった為かあまり売れなかった様だ。
某動画サイトではマリアンヌ単騎で魔王を倒すという猛者も居たが、真似したいとは思えない。
私はマリアンヌの扱いをどうするべきか頭を捻らせながらも魔法の指導を続けた。
一度昼食の為に特訓を止めると、皆息絶え絶えながらもきちんと昼食を取ることになる。
食べなきゃ戦場では生きていけない。食べることが戦士にとって大事な事だ。
とは、剣を習い始めた私に向けて師匠が言った言葉だ。
昨日の顔合わせの際に改めて私は皆にその言葉を告げた。
皆やる気に満ちた顔をしていて思い思いに頷いていた。
午後、ルルとイシスちゃんと私の三人で対マリアンヌ魔法育成会議を始めた。
どう魔法を教えるのか、理解してくれるのかを話し合った。
光魔法の適性はあるのだ。治癒術は扱えるし、暗所で灯りを点すことも容易なのだ。
では何故使えないのか?
私が思うに魔力回路の回転方向が違うのではないかと思う。
例え話になるが、通常の魔力の練り上げならば野球で言うと直球の回転だが、マリアンヌの魔力の動きを可視すると、フォークやカーブの様な変則的な動きをしているのだ。
回転の方法を変えれば普通の魔法を打てるのではないか。私はそう仮説を立てた。
ルルとイシスちゃんも同様の結論に至ったのか、頷いている。
早速検証してみることにした。
「マリアンヌ、ちょっと来て」
「リリアナ様!ハイッ!!」
声を掛けると私の前に片膝を付き跪いて伏せる。
『マ』の発音だけで此方に掛けてきたのだから恐ろしい。
「今からマリアンヌには他の四属性を覚えてもらうから覚悟してね?先ずは光灯の魔法をしてみて!」
「リリアナ様の命とあらば喜んで!多少ならば痛くしても構いません!寧ろ痛いくらいが…アハッ、アハッ…あん、リリアナ様てば大胆ッ!」
「無駄口は叩かない。黙って魔力を練る」
なんか急にトリップし始めたが、私は構わずマリアンヌを無理やり立たせ手を握り魔力を送る。
光灯を作るのを無理やり水球に書き換え直接体に覚えさせる。
が、しかしマリアンヌの覚えが悪いのか、それとも慣れないからなのか、マリアンヌは折角出来かけていた水球をキャンセルして光灯に作り替えてしまう。
うーん…?
これは苦戦しそうだ。
マリアンヌを育てるのは難儀しそうだ…今は他のメンバーを優先しよう。




