秩序管理委員会
リアスティーナとの会談から三日が経った。
話はトントン拍子に進み、私が設立する委員会の名は【秩序管理委員】という名になった。
業務は主に二つ。
一つは学内での暴力沙汰や迷惑行為を取り締まったり、困っている生徒の相談に乗る事。
もう一つは王都近辺の迷宮などに遠征し、魔物氾濫…スタンピードの阻止なども含まれる。
要するに学内外での戦闘ありの何でも屋という立ち位置である。
仕事は多いが自由な時間が多いため気楽にやっていいとリアスティーナからは許可を得ている。
生徒会や風紀会などと業務が被っているのはご愛嬌だ。
本来は後者の業務が主任務の意味合いが強い。
リアスティーナ曰く、秩序管理=民の暮らしを安全にーーという思いでこの名を付けたらしい。
今年始め、王都の周辺に四つの迷宮が発生した。
ジェシカによって発足したばかりの冒険者ギルドだけでは人手が足りないのだ。
私も兵士を引き連れ、時間が空いている時にはなるべく駆除に貢献しているのだが、兵士を率いる隊長格が私とパルメラだけでは出来ることなどたかが知れている。
ジョセフが王都に来た際、更に二百名を連れてこさせ現状は何とかなっているが、各領地からのギルドを通しての救援に出向したりと忙しいらしい。
その前に先ずは戦力を整えなければならない。
現在秩序管理委員に立候補したのは、私、レイン、アンちゃん、タニアちゃん、ルルイアの五人。
ルルは魔法を、レインは最近細剣の練習をしているらしいから良いのだが、アンちゃん、タニアちゃんはまるで戦闘手段を持たないのでこの辺も上手く私が鍛えてあげないと。
他には面接を行い各学年の上級生から五名選出するか、合計十名になるようにメンバーを集めることになっている。
まずはお試し、それから私の学年が上がると同時に数名増やしていくという流れだ。
一年生だけでは他の委員会との均衡を保てないから、という理由らしい。
私的には剣術部に所属しているサレナちゃんと帰宅部の四公令嬢の一人ユグドラたん、魔術部のイシスちゃんあたりに来てほしいのだが…誘いに乗ってくれるだろうか?
そういえばユグドラたんは半年振りくらいに会うな。
元気してるだろうか?
イシスちゃんは二年振りくらいだろうか?
魔法研究施設『梟の塔』を立ち上げる際、宮廷筆頭魔術師であるパルコシア家当主に何度か訪問した時、数分ほど会って以来だ。
最近よく訪ねてくるサレナちゃんは多分、入会の条件に私との試合を持ってくる可能性がある。
とりあえず今日は放課後に二年の教室を訪れることに決めた。
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放課後五人で二年生の教室がある棟へとやってきた。
「ふぇー、二年生の教室なんて初めて来たー!」
タニアちゃんが好奇心旺盛に呟くと、全員が同意した。
「アンちゃんとルルは年齢的に二年生なんだけどね…」
ボソッと呟くとルルはつまらなそうに、アンちゃんはたははーと笑いながら頭を掻いた。
「リリー、それは別に良いでしょう。それで目星は付いてるんですよね?」
「うん、サレナちゃん、ユグドラた…ちゃん、イシスちゃんを誘ってみるつもり。」
「クラスは分かっているんですか?」
「うん、サレナちゃんとユグドラちゃんがB組でイシスちゃんがA組みたい。」
「それなら部活へ行く前に声を掛けたいですね、急ぎましょう。」
あー、そういえば部活に入ってたんだっけ…すっかり忘れてた。
しっかり者のレインが居てくれて助かる。
「あら、噂をすれば何とやら…みたいね?」
ルルが指差す方向には制服を着崩し、ポケットの中に手を突っ込んだまま此方(階段の方)に桃色の長い髪を揺らしながら歩いてくる少女が居た。
ユグドラたん…!キター!!
「ユグドラちゃん!少し良い?」
「んあー?お前か。二年の階に来るなんてどうしたんだ?我に何か用か?」
「うん、実はお願いがあってね!あ、皆はイシスちゃんとサレナちゃんを探してきて?待ち合わせはいつものお店で!教室に居なかったら戻ってきて良いから!」
「分かりました。ではルルイアさんは私とB組へ、タニアとアンはA組へお願いします。」
それぞれ返事をし、目当てのクラスへと向かっていった。
「何なんだ?一体…」
「ユグドラちゃん、甘いもの好きだったよね?」
「う…ま、まぁ好きだけどよ…あ!もちろん、お前の言い付け通り食事量は増やしてねえし間食もしてねえぞ?」
たじろぎそっぽを向くも、必死に弁明する姿が可愛らしい。
「流石ユグドラちゃん!私の方も引き続き呪いを解く方法は探してるからもう少し我慢してね…?とりあえずその話は置いといて行こっか?」
私はユグドラちゃんを引き連れスイーツショップ【スイートキッス】へと足を向けた。




