体力測定
とある王都の貴族邸。
そこに数人の官職を持つ貴族が集まっていた。
「噂の方はどうなっている?」
上座に座った屋敷の主が他の貴族へ声を掛ける。
五十代後半に差し掛かった壮年の貴族は頭髪のあちこちが白く染まり始めていた。
「上々と言った所か。平民を中心に話題に上がることが多くなっている。」
「そうか。そろそろ次の段階に進んでも良いかも知れん。」
「うむ、では手筈通りに実行しよう。邪魔が入るとすればレオンハルト派の奴らか…ソラージュめ、今に見ていろよ…!」
「センティス伯とレオンハルトの婚約が成立すれば我々の地位や発言件も上がるはずだ…!怨みなど成就した後に何とでもなろうよ…!のう、アルデン伯?」
「クク…然り。では我が孫リリアナとレオンハルト陛下の婚約を成立させるため各々頼むぞ?」
その場に集まっていたのは魔法省、宰相に怨みを持ち宮廷で働く文官、教会の主だった面子だった。
リリアナが彼らの企みを知るのは少し先の話である。
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学園生活二日目、教室に登校した私は自分の席に着く。
予礼五分前という時間帯で既に殆どのクラスメイトは登校していた。
アンちゃんやレインの姿はあるのだがタニアちゃんの姿が見えない。
「わぁー!!遅刻しちゃうー!あれ?ギリギリセーフかな?」
予礼がなると同時にタニアちゃんが慌ただしく教室に飛び込んでくる。
髪はボサボサで制服はボタンを一つ掛け間違えている。
「おはよー、ギリギリだね?」
「おはよー!うん、寝坊しちゃって…てへへ!」
私の斜め右前の席に座るタニアちゃんに、挨拶をすると照れた様に頭を掻いた。
「ほら、タニア前向いて?髪直すから。あとボタン掛け間違えてるよ?」
「ありゃ…!恥ずかしいなぁ…」
「私が前隠すからレイン髪お願い。」
「分かりました。タニアさん失礼しますね?」
「あい、お願いしますッ!」
シュバッと敬礼し、微笑むタニアちゃん。
クラスメイトの目があるのにも関わらず自然体で居られるのは彼女の長所だろうな。
「はい、簡単ですけど出来ましたよ?どうですか?」
「うわぁー!すごい!編み込まれてる!」
「タニアちゃんは少し癖っ毛ですけど、きちんと手入れすればもっと色々な髪型にアレンジ出来ますよ!今度時間がある時に教えますね?」
「わぁー!!ありがとぉー!持つべきものは親友だよー!レインちゃん大好きッ!」
「キャッ!タニアさん、そろそろ授業が…へ、変な所触らないで~!」
「ぐへへ、良いではないか、良いではないか~!」
タニアちゃんがレインに抱き着き体のあちこちをまさぐり始める。
レインは変な声を上げてしまい二人で盛り上がり始めた。
ぐぅ…私も混ざりたい…が、男子生徒のヤラしい目付きが気になるので一応睨んでおいた。
まだ十歳そこらのお子ちゃまだが、貴族は子を残すことも立派な義務であり、性教育が早い。
平均すれば十五歳には親となっている世界だ。
他にも要因は有るが、人口も減る訳である。
母子共に体調を気遣うのならば最低でも十八歳くらいにして欲しいものだ。
漸くタニアちゃんがレインを解放すると担任のミュウちゃんが入ってくる。
「はーい、皆さんおはようございます!授業始めますよー?席に着いて~!」
のほほんとした口調でミュウちゃんが仕切ると皆席へ着き姿勢を正していく。
「今日はクラスの役職と委員会の所属希望を確認しまーす。じゃあまずは…クラス委員やりたい人居ますか~?」
シーン…誰も手を上げない。
もちろん、私も上げない。
やりたいことがあるし、他の事に時間を取られたくないもんね。
「んー、弱りましたねぇ…じゃあ男子と女子でくじ引きにしましょー!実は先生、こうなると思って徹夜で作ってきちゃいました!お陰で寝不足ですぅ…」
妙な所で力を入れるよね、ミュウちゃん。
まぁ、そんな心遣いがミュウちゃんの良いところなんだけど。
「レオン君、リリアナちゃん、タニアちゃんの三人は委員会に所属する為免除しまーす!」
「えぇー!やりたくない!」
「俺もだ!戦技部に入りたいし、面倒事は却下だ!」
「はーい、静かに!じゃあ窓側から一列ずつ前に聞いて引いてね?まだ見ちゃダメよー?」
数分経ち私とタニアちゃん、レオンハルト以外の全員がくじを引き終わる。
「それじゃ皆さんいっせーのせで開きましょうー!」
「先生ー…なんか僕の紙、既に赤いインクが透けてるんですけど…」
「私のもです…」
「あー、バレちゃったかな?でもそういうのは黙っていた方が面白いのにぃ…!けど、おめでとうー!これから二人にはクラス委員をやってもらいまーす!はい、拍手ー!」
うん…何て言うかフリーダムだな、ミュウちゃん。
せめて分からない様に同じインクで書けばいいのに態々色を変えている。
しかもそれを良かれと思ってやっているのだから、怒るに怒れないのだ。
おめでとう、クラス委員の二人。ミュウちゃんにいっぱい振り回されてくれ。
「はーい、じゃあここからはクラス委員のお二人に進行をお願いします!ささっ、二人とも前に来て自己紹介をしよー!」
ほわほわした笑顔でクラス委員を前に呼び寄せるミュウちゃん、何故かすんなりと進む事に疑問を持ちながらもクラス委員の二人は前に出た。
「あー、何故かクラス委員になったボトル・メディスンです。」
「同じくクラス委員のパーラ・ソロイトです。」
不運な二人に憐れみの視線を送りその言葉に耳を傾ける。
そこで、またミュウちゃんが介入してくる。
「こんなこともあろうかと!先生、今日一日の進め方をここに書いてきました!見てみて?この子猫ちゃん、すごく可愛いでしょ?」
ミュウちゃんの指差す場所にはどうみてもゴブリンとしか表現出来ない緑色の奇妙な絵が描かれている。
うん、画才無さすぎじゃない?ミュウちゃん…
「えー、じゃあ次に体育祭委員、文化祭委員を決めたいと思います。方法は立候補、もしくは推薦で…ーー」
それから二十分ほど掛かったが各クラス内の役職が無事決まっていき次は四会への入会確認となる。
レオンハルトは生徒会を選択し、他に数名が各会に入会したいと意思表明した。
「えっと、リリアナちゃんとタニアちゃんはどうしますか?」
「それなんですが、私は新たな委員会を新設したくて。放課後に学長とお話したいのですが、先生の方から確認を取れますか?」
「私もリリーちゃんと一緒でーす!」
「おー!素晴らしい心掛けですね!リアスティーナちゃん…じゃなくて学長に私から掛け合ってみましょう!リアスティーナちゃんが貴方の事を気に入る訳ですね…先生納得しました!」
何故か私の目の前まで歩いて来てそう告げるミュウちゃん。
少し自由すぎませんかね?
「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
「はいッ!きちんとお礼言えて偉い偉い!」
と、頭を撫でられる。
小学生扱いか!あ、まだ子供か私…
精神が大人なのでたまに忘れてしまうが私はまだ数え11の少女だったな…
裏表なく生きてきたからか忘れてしまう小さいミスが多い。
これからは意識していこう。
その後諸々の話が着き午前中はの授業は終了。
午後からは第二体育館にて身体能力検査だ。
食事を済ませるとジャージに似た素材の服に着替え、移動を始める。
男子生徒は第一体育館での検査とのことで既に別々に別れていた。
反復横飛びや前屈、五十メートル走、考えられる限りの運動能力を測定された。
私は汗だくになりながらも全課程を比較的早く終えた。
他の生徒達はあまり運動を得意としないためか少し時間が係っている。
張り付く薄い体操服を今すぐ脱ぎたい衝動に駆られながらも我慢し、親友達を応援して待つことにした。
「ふぅ…リリー、お待たせしました!」
私の次に終えたのはレインだった。
何故か数年前から剣の稽古を始めたという彼女は同クラスでは私の次に体力があるらしい。
レイン曰く『リリーは危ないことに首を突っ込みがちなので一人にさせて居られません。これからは私も同伴します!』とのことだ。
私、もしかしてレインの中で問題児扱いされてる?
「お疲れ様ー!はい、タオル!それとお水だよ!」
「ありがとう。ごくっごくっ…はぁ…生き返ります!」
学園側から支給されたタオルに浄化魔法を掛けてからレインに手渡して、植物魔法で木のコップをクラスの女子生徒分精製し、中に氷を浮かべた水で充たす。
受け取ったレインはぷはぁーと勢い良く飲み終えたのを見て私は微笑んだ。
「リリーの魔法、本当に便利ですね。何でも作る事が出来て羨ましいです…!」
「んー、良かったらレインにも魔法教えようか?簡単なものから中級者、上級者向けのものまで何でも教えてあげるよ?」
「本当ですか?!お願いします!フフッ…リリーと二人きりになれるチャンス…絶対逃しませんよ?」
あー、レインさんや…喜んでくれるのは嬉しいんだがそういうのは離れた所で言わないといけないんじゃないかな…?
ばっちり聞こえてしまったのだけど…まぁ、いっか!
「何の話してるの?」
続いてやって来たのはアンちゃんだ。
細身の身体ながら体力は割と有るらしく汗を拭いながら此方に近付いてくる。
濡れ羽色の髪をしっとりと汗で湿らせ上気する真っ平らな胸。
うーん、こっそり写真取ったらアウトだよね?
青い服の大きなお友だちは居ないけど衛兵さんはいっぱい居るのでお世話にはなりたくない。
まぁ、ロリコンおじさんは沢山居るんだけどね…
「魔法の話だよ。レインに魔法を教えるって約束をしてたんだー!タオルとお水!私が魔法で作ったお水だから飲んでみて?」
「魔法かー。私も覚えたいなぁ。」
「アンちゃんにも教えようか?一人も二人も変わらないし!」
「本当に?私、身体が小さいから何かしら取り柄がないと将来が不安。リリーが教えてくれるなら安心して教われる。」
そっか、アンちゃん体格の事を気にして…
私は少し潤むとアンちゃんの手を掴み何度も頷いた。
「一緒に頑張ろうね!」
「リリー…!うんッ!」
「……」
レインさんや、無言で頬を膨らませないでくれ…可愛すぎてキュン死しそうだ。
「レイン!」
「ブフッ…!」
レインの膨らんだ頬に人差し指を刺して口内の空気を一気に吐き出させた。その反動でレインが少し噎せたがこのくらいスキンシップの範疇だろう。
二人で顔を合わせ笑い出す。アンちゃんもそれを見て笑った。
それからタニアちゃんや他の生徒も能力検査を終え一番最後にルルが合流する。
息絶え絶えで最近留まることを知らず成長していく二つの脂肪の塊を揺らして…おっと、口が悪くなってしまった。
尚、私のお胸はうんとも寸とも言わない…
もう少しルルには運動をさせた方が良いだろう。
将来的には迷宮探索に連れていくつもりだ、魔法の試射にはこんなうってつけの場所はないだろうし。
五人揃った所で備え付けのシャワー室へ移動。
お互い洗いっこして楽しんでさっぱりしてから学長室へと向かう。
リアスティーナから面談の許可が下りたとミュウちゃん伝いに聞いたからだ。
レイン達にはスイーツショップで待機してもらって私は一人リアスティーナと対面する。
さて、どうなるかな?




