入学式の登校風景
新章突入です。
遅くなりましたー
今回は入学式のさわりだけ。
聖歴951年4月5日ーー
今日から私はアムスティア学園の一年生として17歳までの六年間この学舎で勉強していくこととなる。
そして物語の主人公であるマシューが入ってくるまでの一年間、しっかりと自らの地盤などを固めていく必要がある。
今年の一年生は148名、事前に行われた成績順でA.B.C.D.Eの五クラスに分けられ私はAクラスの主席一位で入学を果たした。
レオンハルト、タニアが同率で一位である。
上位三名と成績が良く望んだ生徒は生徒会委員、風紀会委員、貴族会委員、聖教会委員を総じて四会と呼び、これらに所属することが出来、それだけで卒業後は優遇される。
また、四会に所属する生徒には様々な特権が与えられる。
例えば学内の施設で消耗品や必需品が何割か値引きされたり、授業の免除や研究室の所有など自由に時間を使えるのだ。
生徒会委員、風紀会委員は直ぐに想像が着くと思うが、貴族会、聖教会は少しイメージしづらいか。
貴族会委員は階級を重んじて華々しい学園生活を謳歌することを主張しており、まぁ所謂嫌われ者の集団だ。
聖教会委員は文字通り、学園のスポンサーである教会の教えを重んじており、まぁこっちも厄介で濃い面子が盛り沢山である。
原作でのリリアナの所属は生徒会だった。
私もその道筋に進もうか今は悩み中だ。
色々ねじ曲げてしまったのだから今さら正しい道(リリアナ・アルデンとしての生き方)を進む必要はない。
私は私(リリアナでもあり志波梨乃)なのだから。
原作ではタニアちゃん、レイン、私の順の成績だった。
レオンハルトは継承権の無い王子だったから先輩だったのだ。
タニアちゃんや三位内にはいないがレインもきっと生徒会を目指すはずだ。
いや、もしかしたら私が原作から色々と曲げてしまったから生徒会以外のどちらかに入る可能性もある。
特にレインの私への依存率は異常だ、本当に分からない。
今年から13歳までの男子生徒も多く入学しており、人口に比例して三対七の割合で男子生徒が在籍することになる。
男子は男子で貴族学院というものが存在するので大抵はそちらに通っているのだが、在校生も減ってきており、数年後には閉校することとなる。
男子生徒の多くは貴族会委員に流れるのではないかと考えている。
これから入学式へ向かうのだが、レイン、タニアちゃん、アン、ルルが私の屋敷を訪れ一緒に登校することになった。
レインなどはまだ日も昇らない早朝に訪れ私のベッドに潜り込む始末である。
まぁ、メイドや守衛達にはレイン達が来たら通せと言っているので気にしていないのだが、制服を脱いで下着姿でベッドに潜り込むのはどうかと思う。
春とはいえまだ寒いのだ、登校初日から風邪を引かれては困るのでレインにそれとなく注意はしたが。
ルルなどは私の家からの方が学園が近いというずぼらな理由で客室に泊まっており、魔術研究で徹夜していたらしく、いつもより目の下の隈が酷い。
本人曰く、凄い発想が思い浮かび、筆が止まらなかったとのことだ。
素晴らしいことではあるが、もう少し身体を大事にして貰いたい。
彼女らしいと言えばそうだが、ルルにもそれとなく注意をした。
そして現在、登校の道中である。
「リリーちゃん、凄いよねー!入学生代表で挨拶するんだもん!私じゃ緊張してそんなこと出来ないよ、タハハー!」
「正確には陛下…レオンハルト殿に押し付けられたんだけどね…まぁ、執務の間に内容は固めたけど、私も緊張はするよ?というかタニアちゃんも断ったから私に回ってきたんだし。」
「でも、同志なら当然よね。これまでの並々ならぬ成果と貢献を王国に刻んだのだもの。」
スピーチは現国王であるレオンハルトが行うのが道理なのだが、何故か私がすることになった。
レオンハルトに転生した前世の親友である美樹は上がり症だからなぁ。
相手の目を見て話すことも出来なかったが、そこは王子教育で克服したとは思うけど、臆病な性格は治ってないはずだ。
ルルの言う通りかもしれない。私がこれまでやらかしてしまった事を功績と言えるのならば、選ばれて当然なのかも知れない。
「リリーちゃん、それは言っちゃいけないよ?でも嬉しいなぁ!皆おなじAクラスなんだもん!これからもずっと一緒だよ?」
あまり突っ込まれたくないのか話題を変えるタニアちゃん。
悪気はないのだろうがあからさま過ぎて苦笑もでない。
「そうですね!リリーと共に学べる事、とても光栄に思います。それはタニアもアンもルルイエさんにも言える事ですが。」
レインが空気を読みそれに乗るが、アンちゃんは我欲を訴えた。
「私はプリンさえ食べられれば良い。うん…想像したら食べたくなってきた…」
「はいはい。プリンクッキーあげるからお昼まで我慢してね?」
「同志ってば準備が良いのね?あら、美味しいわ!」
私は鞄から昨夜作ったプリンクッキーを取り出しアンちゃんに差し出した。
腹ペコプリンモードに入ったアンちゃんはプリンを食べられるのなら学園を休む事も辞さないのである。
それで出席日数が足りず今年も一学年をやるハメになっているのだから洒落にならない。
「リリー…!私の為に用意してくれたの?」
「うん。だから、二度目の入学式からサボるなんて止めてね?」
「分かった!リリーには従う。」
それで良いのか、アンちゃん?
まぁ、本人が言っているのだから良いのだろう。
と、そんなこんな話していると学園が見えてくる。
広大な敷地に幾つもの校舎が並び立ち、中央には聖堂の屋根部に飾られた教会の聖印とされている十字架に翼のシンボルが、煌めく太陽を反射して輝いていた。
「あ、見えてきましたよ!」
「本当だ!うわー、桜の花が散ってキレーイ!」
「どう、すごい?!」
レインとタニアちゃんがはしゃいでいるのを見て、アンちゃんが鼻息荒くドヤ顔しているが、私は前世から飽きるくらい見ている景色である。
私達が正門に立つと、祝福するかのように何度も鐘の音が響き渡る。
これから五年間、ここで沢山学ぶんだ。
沢山の希望とほんの少しの不安を持って、学園生活の第一歩を歩き始めた。
もう少し絡みを書きたかったのですが、蓋を開けてみればただの説明回になってしまった…




