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お嬢様は何かを思い出しました

マシューがうちに来てから一ヶ月が経った。


「『我が真なる願いをかき集め水球をここに顕現せよ』アクアッ!」


私の詠唱に応える様に目の前には水の塊がプカプカ浮かんでいる。


マシューのやつ、私が書斎で本を読んだり魔法の練習をしているとこちらをじっと見たり、メイドと戯れたりしているのを覗き込んでいる。


なんなの、こいつ?


私は頭を抱えながら新しく出来た住人に悩んでいた。


この時辺りから変な頭痛が私を襲いはじめる。


ずっと監視されているみたいで腹が立つ…!




ある日いつもの様に書物を読みながら魔法の特訓をしているとマシューがまたこちらを覗いていた。


いい加減頭に来たので文句の一つでも言ってやろうかと思い勢い良く立ち上がろうとしたその時、例の頭痛が私を襲う。



「あんたね…!毎日毎日人を覗いてなんのーーウッ…!」


そのまま私は床に倒れてしまった。





「あれ?ここ…は?」


目が覚めると私は自室のベッドに寝かされていた。体が熱い、熱があるのだろうか?


すーすーと寝息を立てる音が聞こえる。


ベッドの横には座りながら眠っているマシューが見えた。



こいつ、人の部屋にまで入り込んで…!


「お嬢様、お目覚めになりましたか?マシュー様が部屋まで運ばれ、心配してずっとベッドから離れず見守っておりました。」


入り口の前に椅子を置き本を読んでいたジェシカがそう教えてくれた。


そうなの?私を心配していた?どうして?


「マシュー様はお嬢様と仲良くしたかった様なのです。しかし真剣そうに書物を読むお嬢様の邪魔をしまいと機会を伺ってたみたいですね。ですからあまり邪険に扱わないであげてくださいね?」


「そっか…」


私は初めて弟の頭を撫でる。




「ウッ……なにこれ」


その瞬間、私の脳裏にはある光景が浮かぶ。


弟の幸太がやっていたゲーム、『聖アムスティア女学園』の一枚絵が画面に浮かんでいる記憶。


主人公をヒロインが心配そうに見つめ頭を撫でているシーン。


いわゆるギャルゲーとかいうジャンルのゲーム。


姉弟揃って、一緒にやってた思い出深い作品だ。


だけどなぜ私がそのゲーム今この瞬間思い出すの?


「うぅッ…!」


痛みに耐えかね声を上げてしまう。


「姉さん…大丈夫…?」


心配そうに見つめるマシュー。


その姿が弟の幸太と重なって見えた。


「うるさい!出ていって!」


私は激しい頭痛に耐えながらも複雑な気持ちになり、マシューを追い出すとふて寝した。

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