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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
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ゴイア教上級司祭

目の前の男が杖を構えた。

上級司祭、と自分で名乗っていたが。


確かに、そう言うだけの実力はあるようだ。

さっきから、相手の取り巻く魔力がこちらの肌に触れてくる。


「・・・!」


強い、そう感じる男だ。

ドギーも同様に思ったようで、警戒しながら相手の出方を伺っていた。


「さあ、死になさい!」


杖を天高く構えると、その杖に雷が迸る。


「主様、まずいぞ」


「分かってる」


懐からナイフを取り出し、それを投げようと構える。

相手に一瞬でも隙が出来れば、斬り込むタイミングが出来るはずだ。


「!」


投げようと、ナイフを振りかぶった瞬間。

男から飛んできた何かが頬を掠めた。


「おっと、下手に動くと死にますよ?」


飛んできた何かは、近くの木に衝突すると、

木を破壊しながら直進を続けて行った。


「雷属性の魔法でも、濃縮すれば物理的にも使えるんですよ?」


男の周りに飛んでいる、光を放つ球体。

電撃を纏ったそれは、先ほど飛んできた何かだった。


「濃縮じゃと?なるほど、そう言う事か」


「どういう事なんだい、コトハちゃん」


「あれは雷エネルギーの集合体じゃ、ようはエネルギーの塊。

 触れるだけで物を破壊するほど、濃縮されておるようじゃの」


「触れればまずいってか」


ドギーは剣を構えながら、男の側面を突こうと移動を始めた。


「格の差を見ても、まだ勝つ気でいるのか?」


男の目が、ドギーを追う。


「!」


その瞬間、セオドアが走りだした。

盾を構え男の攻撃を引き付ける様に。


「む!」


目線をセオドアに変えると、球体をセオドアへ向けて飛ばした。


「っく!!」


盾に球体が衝突すると、爆音を立ててその場で弾けた。


「ぐぁぁぁ!」


盾を通し、セオドアは感電しているように見えた。


「セオドア!っち!」


ドギーが軽いステップを踏み、男へと向かう。

男の照準がドギーに向かうが、その前に間合いへと入り切った。


「はああぁ!!」


剣を一閃が、男の腹を割いた。


「ほう、一瞬の隙をついて攻撃か」


男は、痛みも感じていない顔で立っていた。

その筈だ、切れた衣服の下には。


「ミスリルの鎧かよ・・・畜生が」


ドギーの剣が欠けていた。

薄いミスリルの鎧を着ていたお陰か、男にダメージは無い。

いや、ドギーの武器にダメージを入れた分、相手方の方が有利になった。

それに・・・同じ手は2度は通用しないだろう。


ドギーは傷ついた武器を捨て、懐からナイフを取り出した。


「魔法使いにとって近接戦は避けるべきもの。

 その保険くらいは打っておいて然るべきでしょう?」


「厄介な相手だぜ・・・全くよぉ!」


男の周りに雷を纏った球体が無数に現れる。


「ふふふ、この距離ではかわせまい」


球体がドギーに向かって飛び始める。

ドギーは焦った様子も無く、その球体をじっと見ていた。


「・・・おっと、舐めて貰っちゃ困るぜ!」


向かって来る球体を、身体を反らしてかわす。

少し掠った場所もあるが、何とか全てよけきっていた。


「何・・・!?」


「近すぎるんだよ、距離が。

 魔術一辺倒の男じゃ分かんないかな?」


「っく!」


再び球体を生み出す男。

しかし、その間隙を突いてセオドアが男に接近する。


「ぬおおお!!」


「ち・・・小癪な」


再度同じように攻撃方向を変えようとするが。

ハッと気づき、ドギーへの攻撃を再開しようとする。


「その手には乗らん!先にこいつを片付け―――」


その瞬間、男の身体が揺れる。


「ぬう!?」


「こっちは4人いるんだぞ、油断するんじゃない」


俺の剣の柄が、男の腹に命中していた。


「あいつも、あいつも囮か!」


腹を押さえながら、男は後ろに飛び退いた。


「囮って訳じゃない、そう言う計画は無かったからな」


「即興の連係プレーって奴だ。

 残念ながら、こっちの方が弱いんでな。

 連携で倒させてもらう」


「底辺冒険者風情で、この私を倒すと・・・!」


そうだ、怒れ。

もっと怒れ。

冷静じゃない奴ほど、足を掬われるんだ。


怒髪天、とまでは行かないものの。

司祭の男の行動は単調になっていた。

目に入った瞬間に攻撃を仕掛ける、つまり直情的に魔法を撃っている。


「よっと」


軽々と魔法をかわすドギー。

俺も、何度か放たれた球体をかわすが。


(怒っている分、攻撃が単調で避けやすいが・・・。

 問題は、冷静になったらだ・・・それまでスタミナを多く消費させれば)


活路を開けるはずだ。

少なくとも、怒っている今の状況だけでは俺等の勝ち目は薄い。

疲れ、動きに精彩を欠いた時が一番のチャンスだ。


「忌々しい・・・底辺共が!」


男を中心に、魔力の渦が巻き始める。

魔力を感じにくい俺やドギーでも、危険と感じるほどの渦だ。


「範囲魔法で吹っ飛ばそうってか」


「頭に血が上っている割には、合理的な方法に出たな」


ちょこまかと動くのなら、点ではなく面で攻めればいい。

だが、範囲魔法は点で攻める魔法に比べれば使用する魔力が大きい。

これを何とかすれば、相手は疲れ果てるはず・・・だが。


「どうするよ?」


魔力をチャージする男の周りには、おぞましいほどの魔力が渦巻いている。

あんな量の魔力を直に受ければひとたまりもないだろう。


「・・・魔力を逃がせればいいんだけどな」


当たっても、威力を受け流せればいいんだが。

雷、受け流す・・・か。

確か、雷は金属に落ちるとも聞く。

なら・・・試してみる価値はあるか。


「コトハ、今から言うことが出来るか?」


「うむ・・・?話次第じゃ」


コトハにある事を耳打ちする。

相手の魔法の出方次第だが・・・うまく行けば相手は自滅する。


「・・・変なことを考えるの。

 まあ、やってやれないことはないが」


「じゃあ、頼むぞ」


そう言って、俺は金属製の盾を構えた。

後はこれを・・・こうするだけだ!


盾を持った手を振りかぶり、相手に放り投げる。


「風魔法じゃ!!」


コトハが放物線を描く盾を指差すと、指の先端から突風が迸る。

その突風が盾を押し、男へと物凄い勢いで向かわせた。


「ぬ!?」


魔力を胸の前で溜め、詠唱をしていた男は。

向かって来る盾を見て、ふっと笑った。


「そんなもの、障壁で何とでも」


魔法の障壁のようなものを張り、余裕の表情で構える男。

だったが、只の鉄の盾はそれを容易にすり抜けた。


「何!?」


「馬鹿じゃな、魔法障壁は魔法しか防げんぞ」


盾を押す風魔法は障壁で掻き消えたが。

勢いを持った鉄の盾はそのまま男の懐へと飛んでいき―――。


高濃度に濃縮された雷のエネルギーと鉄の盾が衝突した。


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