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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
52/53

獣人少女とゴイア教

鍋一杯に満たされていたスープは完売。

半分以上はあの少女が飲み干したに近い。


「余程、腹が減っておったのじゃな」


「痩せているように見えたし、碌な食いものを食ってなかったんじゃないか?」


「碌な、か」


少女が寝ていた巣を、ちらりと見るコトハ。

よくよく見れば、齧った後のある木の実や、非常食入れが転がっている。


「・・・ゴイア教の事もあるし、明日にはキンカシャに向けて出発しないと」


「そうじゃな・・・少女は連れて行くのかの?」


「このまま放ってはおけないだろ、それに、報酬を貰うために手伝ってもらう」


「?」


原因である少女は捕まえた。

だから、これ以上の被害は出ないといえば納得してくれるだろう。

この子はこっちで処分するといえば、あちらの手間も省ける。

・・・殺す気はこれっぽっちも無いがな。


食べ終わり、上機嫌な少女を見る。

ドギーが気に入ったのか、ちょっかいを掛けていた。


「止めろ!俺は子供には興味ねえんだ!!」


「ご飯美味く作る男は有能!子供欲しい!」


「ぎゃあぁぁ!」


あいつ、攻められるのは苦手なのか?

腰に手を回してしがみつく少女を振り解こうと必死になっていた。


「見てないで助けろよぉ!」


「楽しそうで何よりだ」


「モテるの、ドギー」


「これを見て何処がモテるって・・・うぉぉ!ズボンを脱がすんじゃねえ!」


やれやれ。


「そういえば、セオドアは何処に行った?」


「そう言えば」


コトハと俺はキョロキョロと辺りを見渡すが。

セオドアの鎧姿を見つけることが出来なかった。

あれだけの巨体だから、見失うはずが無いんだが。


――――――――――――――――――――


しばらく、ドギーが走り回る姿を見ていた。

傍目から見るとじゃれつかれているようにしか見えない二人。


「・・・一体何を騒いでいるんだ?」


「セオドア、何処に行っておったのじゃ」


「水浴びと、鎧を洗ってきた」


「・・・そうか、大変じゃな」


仲間同士だし、鎧を脱いでも構わないとは思うんだが。

まあ、セオドアは身体を見られたくはないんだろうな。


「助けてくれぇ!!」


「やれやれ・・・そろそろ助けてやるか」


重い腰を上げて、俺はドギーへと歩き出した。


残った二人は小さい声で話し出す。


「セーシュ、いい加減話しても良いのではないか?」


「そ、そうはいいますけどね」


「むやみやたらに秘密を作るのは猜疑心を生む。

 それに、あの子のようにドギーに抱きつくことだってできぬだろうに」


「・・・いいんです、私は彼を助けられれば」


「お主がそれでいいなら、別にいいが。

 じゃが、手遅れになってから行動しても遅いからの」


レオが近くによって、少女を羽交い絞めにした。

ジタバタと暴れていたが、やがて大人しくなる少女。


「た、助かったぜ」


「お前な」


レオが何かクドクドと言っている。


「分かってる・・・けど、もう少しだけ」


「一度被った皮を脱ぐには度胸がいる。

 時間も必要だとは思うが、長くなれば長くなるほど脱げなくなるぞ」


「・・・」


「セーシュ」


セオドア・・・セーシュの兜が上を向いていた。


「セーシュ?」


「風が、止んだ?」


「むう?」


コトハもつられて空を見上げる。

確かに、風が吹いていない。

それに虫の声も聞こえない。


「!」


少女が何かに気づいたようにある一点を見た。

その目は鋭く、殺気が籠っている。


「奴が来た!」


「奴ぅ?」


ドギーが少女の視線を追う。

その先には、森が広がっているだけだ。


「・・・何もいないじゃないか」


やれやれと肩をすくめるドギー。

その動作を取った瞬間。

上空に影が現れた。


「な・・・?」


「ぐるるる!」


少女が睨みつけるその影。

それは、人影だった。


「こんな所まで逃げるとは、流石は獣人だな。

 しかも、簡易的とはいえ営巣までするとは」


黒いローブを着た、長身の男だ。

目は赤く光っており、まるで獣のようにも見えるが。

そのローブに描かれた紋章を見て、驚いた。


「ゴイア教の奴か」


「おや、客人もいたのか。

 だが、お前達には関係のない話だ・・・その子を渡してもらおう」


「渡せだって?アンタの持ち物なのかよ、この子は」


ドギーが身体を少女と男の間にいれた。


「邪魔するな、そいつは私の実験動物だ」


「実験動物ぅ?こんな可愛い子がかよ」


実験動物、だって?

少女をよく見る。

何処を見てもただの獣人・・・だが。


「まあ、渡さないというならこちらにも考えが・・・うむ?」


男の視線が俺に向いた。


「貴様、何故シルフの波動を持っている?いや、まさかこの波動は」


男が何かしらの装置を取り出した。

それをいじると。


「ふふふ、貴様!鍵を持っているな!」


ばれた・・・!


「鍵?何のことだ?」


「嘘をついても分かるぞ、シルフの波動を拾う装置を作ったのだからな。

 まあ、その装置はそこの少女の力を奪う事で完成したのだがな」


誇らしげに、その装置とやらを掲げる男。

力を奪ってあの装置を作った?


・・・それを誇らしげに掲げるあいつは、そんなに偉い人間なのだろうか?

他人の力を奪ってまで完成させた、あれは素晴らしい物なのか?


「ふふふ、しかし装置を作る必要もなかったわけだ!

 現に、私の目の前に鍵を持つ人間が現れたのだからな!」


懐から短剣を取り出す男。

どうやら、話し合いという言葉は無いらしい。


「ゴイア教の奴は、無礼者が多いのか?

 話もせずに、物事を―――」


そう喋るコトハの真横を短剣が通り過ぎた。

空を切った短剣が、コトハの綺麗な髪を数本切った。


「なんじゃ、無礼者が」


「おっと、また手が滑るかも知れませんよ?

 今度は、当たるかも」


「かっこ悪い宣戦布告じゃな」


拳を握って構えるコトハ。

分かり切った事だが、戦う事になりそうだ・・・!


ドギーとセオドアを見るが。

俺と同様の考えのようで、少女を庇うように武器を構えていた。


「お前等に鍵は渡さねえよ!」


「ドギーに賛成だ、身勝手な奴に力を与えても碌なことにはならないだろう」


俺達全員が、男と対峙する。

少女もまた、俺達に呼応するように列に並ぶように構えた。


「ふ・・・ゴイア教のため、死んでもらいましょうか?

 既に、実験動物としての価値もないですし」


「人としても最低なら、研究者としても最低じゃな!」


コトハの両手から火の玉が放たれるが。

男はローブを前面に張ると、その火の玉を防いだ。


「ふふふ、精々抵抗するがいい。

 ゴイア教上級司祭の力、受けるがいい・・・!」



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