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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
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獣人少女とドギー飯

細い身体の獣人少女は、こちらの警戒するように睨んでいる。

どうするかね、この状態。


「ふーっ!!」


毛を逆立てて、俺達を威嚇する少女。

碌にご飯にありつけてないようで、威嚇するその姿も弱々しい。


「なあ、コトハちゃん」


「なんじゃ」


「・・・やりづれぇ」


ドギーは武器を持ちつつもそう呟く。

俺も戦いたくはない。


「わらわもそうじゃ!じゃが・・・!」


「ふー!!」


少女が飛びあがると、ドギーに襲い掛かった。


「言ってられねぇ!!」


飛びかかった少女の身体を、剣で防御する。

尖った爪が、ドギーの目の前で止まった。


「この!」


剣を振ると、飛び退いて地面に着地する少女。

再びこちらを警戒しながら間合いを詰めてくる。


駄目だ、このままだとどちらもジリ貧だ。

なら、いっそのこと。


「ぬおぉぉ!!」


考えるよりも行動だ。

少女に突進し、剣を構える。


「主様!?」


「しゃーっ!!」


読み通りだ、突進して来る俺に爪を立てて手を振りかぶった。

その手を、フリーの方の手で掴み。

剣を手放して振りかぶっていない方の腕を掴んだ。


そしてそのまま、地面へと押し倒した。


「捕まえたぞ!」


「にゃ、にゃあああ!!」


ジタバタと暴れる少女。

足は封じてないので、暴れる足が脇腹に命中する。


「ぐ・・・」


痛いが、拘束は解かない。


「待ってろ、レオ!」


ドギーは何処からか縄を取り出すと、少女の足と手を縛った。


「オッケーだ!」


こうして、少女を捕らえた。

は、いいが・・・どうすればいいんだこの子・・・。


――――――――――――――――――――


夜更け過ぎという事、宿に戻るのもこのままだと無理だという事を考え。

今日は、この付近でキャンプをすることにした。


ドギーがたき火を起こし、火を突っついている。

セオドアはテントの準備中。

俺とコトハは、少女の見張りと事情聴取中だ。


「落ち着いたかの?」


「・・・うん」


ぐったりしながら、木にもたれ掛かっている少女。

理性を取り戻したのか、目ははっきりとこちらを見ている。


「腹減って、それで」


「ううむ、獣人特有の生存本能という奴じゃな」


「本能?」


「極度の飢餓状態になると、見境なしに食料になるものを襲う。

 この子の場合は、それが商人たちが持っていた食料、という事じゃ」


「人は食わなくてよかったな・・・」


そうなっていたら、間違いなく討伐対象だ。

こんなやせ細った子を斬りたくは無かった。


「ドギー!食事を用意せい!」


「オーケーオーケー、ちょっと待ってな!」


たき火の上に鍋を置くドギー。

水を入れると何か入れ始めた。


「少し待っておれ、すぐ用意できるからの」


「飯、くれるのか!?」


「うむ」


強く頷くコトハ。


「いいじゃろ、主様」


「ああ、もちろんだ」


腹を減らせた少女を見捨てる程、人間性は捨ててない。


ドギーが鍋を掻き回している。


「おー・・・煮えてきたな」


「何を煮てるんだよ?」


鍋を覗くと、顔に熱気が飛んできた。

それを我慢して中を見る。


複数の刻まれた野菜と、芋。

既にスープになっているみたいで、香りはいい。


「保存が利く芋だけど、煮えにくいんだよな」


菜箸で突っつくドギー。

煮えてないようで、芋は固そうだ。


「もう少しだけ待ってくれよな」


そう、少女に語り掛けるドギー。

しかし・・・。


「お前、料理できたんだな」


「冒険者してるなら、当然のスキルだろ?

 まずいものでもうまく食う、モチベーションにもつながる行為だぜ」


なるほどな。

そう言われればそうだ。


「だけど、大抵保存の利くものって不味かったり手入れが大変だったりするんだよな」


「まあ、そうだな」


乾燥肉も保存は利くが、料理に使おうとすると戻す作業が大変。

かといって生肉では痛むのが早い。

必然的に、料理番というのは腕が求められる。

冒険者という人間の中では、だが。


「んー、どれどれ」


一口スプーンですくって飲むドギー。


「まあまあだな、芋が煮えたら完成だ」


鍋のふたを閉めると、ドギーはたき火に薪を足す。


「こう見えて、ドギーは料理が上手い。

 ナンパ癖さえなければ立派な冒険者なんだが」


「なんだよー」


そう言い返しながら、鍋と火の加減を交互に見るドギー。

普段がああだから、適当な男に見えがちだが。

一度始めた事には責任持つ奴だし、そこのところは律儀だな。


「うお、吹きこぼれた!」


・・・訂正だ、やっぱりどこかドジだ。


―――――――――――――――――――――


「さー、出来たぜ」


鍋の蓋を開けると、大量の湯気と良い匂いが辺りに漂う。

その匂いを嗅いだ少女が、食いつくように鍋に近づく。


「待てって、今よそうからよ」


苦笑しながら、ドギーが更にスープを盛っていく。


全員に配り終わる頃には、少女は食べ始めていた。


「がっつくなって、熱いんだぞ」


「はふ、はふはふ・・・!」


上手そうに、スープを飲み干していく少女。

腹が減っていたというのは本当だな。


「ん・・・中々じゃな、ドギー」


「年季が違うからよ、こう見えて少年時代から料理してたんだぜ?」


腕まくりしてウインクするドギー。

俺も、一口食ってみる。


「・・・ああ、美味いな本当に。

 芋が少し柔らかいのが気になるけどな?」


「勘弁してくれ、難しいんだぜ?」


ははは、と笑いながら自分のスープを飲むドギー。


「んー・・・思った通りの味だな」


美味くも無いし不味くもないと言う顔だ。

自分で作った料理を自分で食っているんだ、そう言う顔にもなるか。


「セオドア・・・って、あれ?」


いない。

スープを受け取ったのは見たが。

何処に行った?


「あー・・・まあ、素顔を晒したくない奴だからな。

 どっか別の場所で食ってるのさ」


「そうか」


変わった奴だが悪い奴じゃない。

まあ、人それぞれの理由というものがあるだろう。


けど、気になるのも人情だ。


「んん!お代わり!」


「はいはい、待ってな」


少女の差し出した皿を、ドギーが回収する。

盛られたスープを渡させると、再びがっつき始める。


「作った方からすりゃ、嬉しい限りだけどよ」


「ああ」


「女の子が料理にがっつくのはあんま見たくない」


「しょうがないだろ、腹減ってりゃ誰だって・・・」


「まあ、お陰で鍋は売り切れそうだけどな」


そう言って嬉しそうにドギーは鍋を見ている。

作った本人としては売り切れるのは嬉しいのだろう。


・・・しかしどうするか。

この子を、ギルドに預けた方がいいだろうか?


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