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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
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商人と化け物


「え?ぬぉわ!!」


何かに襲われた商人が獣道の真ん中に倒れた。


「来たな!化け物!」


ドギーが意気揚々と飛び出すが、

その化け物らしき影はドギーの姿に気づいていたようで。


草むらから飛び出したドギーに襲い掛かろうとしていた。


「ドギー!」


セオドアが叫び、持っていた槍で向かって来る影を刺す。

しかし手応えは無く、その影は槍を回避してセオドアに襲い掛かった。


「むう!」


飛びつかれ、体勢を崩すセオドア。

踏ん張り、飛びついてきた影を掴むと地面に向けて投げた。


「こいつは・・・!」


セオドアと対峙する影を見て呟くコトハ。

その影は。


「獣人とな!?」


小さい少女。

コトハのような長い耳ではなく短く小さい耳と尻尾が生えていた。

口には商人から奪い取ったと思われる携帯食料が咥えられている。


気づいたこちらを一瞥すると、唸るような仕草を見せて闇に消えて行った。


「何だったんだ、一体」


「痛たた・・・うう」


商人はフラフラと立ち上がると、すぐさま荷物を確認し始めた。


「おお、荷物は無事だ・・・!奪われたのは食料だけか」


「大丈夫なのか?」


「ええ、おかげさまで。しかし、夜に何か出るとは聞いたんですが」


「勇気があるの、お主」


「いやいや、化け物如きで怯えてたら商売なんてできませんよ」


背負っている大型のリュックを背負いなおすと、商人は再び歩き出した。


「商魂逞しいな」


「しかし、獣人が犯人とは・・・ここの近くに住んでるんじゃないのか?」


「じゃが、獣人は加工食品を嫌うはずじゃ。

 何故、商人を襲う必要が」


うーむ、と考えるコトハ。


「言う割には、コトハちゃんはお菓子とか食ってる気がするんだが?」


「わらわは特別じゃ、仲間内からは馬鹿舌なんて呼ばれておったが」


「普通は生肉とか生野菜とか食うって事か?」


「うむ」


口にくわえていたのは、明らかに加工食品だ。

盗まれた他の食料も恐らくそうだろう。


「変じゃな」


「この森に食材が無くて盗んでるだけ・・・って事はなさそうだな」


ドギーが見上げると、木の上には何かの果実がなっていた。


「ううむ」


コトハが地面を触る。


「追跡してみるか、主様」


「出来るか?」


「任せい」


片手で地面を触り、口元に人差し指を置いて何か呟いている。


「・・・うむ、東の方向へ逃げておる」


「そうか、行ってみよう!」


――――――――――――――――――――


森の深く、獣道からも大きく外れた場所。

そこに、苔むした洞窟があった。


「すんすん・・・違うの」


コトハが匂いを嗅ぐが、どうやらこの洞窟ではないらしい。


「もっと東じゃ」


その洞窟も気にはなったが、コトハが違うのなら調べる必要はないか。


しばらく東に歩く。

するとコトハが急に足を止めた。

目の前には大木があり、その下には大量の枯れ草が広がっている。


その枯草には踏んだ後のような、潰れた部分が多い。

まるで、巣だ。


「ここじゃな」


「今はいないみたいだな、コトハちゃん」


「じゃが、いずれ戻ってくるはずじゃ」


「食べ物を盗んだのに、巣に戻っていないのはおかしくないか?」


食べ物を保存するのは巣だ。

つまりここなのだが。


「恐らく、貯蔵庫が別にあるのじゃろう。

 しかし・・・この巣の大きさは」


小さい。

あの逃げた一匹だけの巣だろう。


「はぐれものの可能性はあるか、コトハ」


「それしかないじゃろうな」


「あの子、小さかったもんなー」


大人の獣人には見えなかった。

恐らく子供だ。

まあ、獣人の子供と言えど、人間からすれば十分な年月を生きている可能性はあるが。


「待つか?」


「うむ・・・しかし、我々の匂いで戻ってこないかもしれんぞ」


「なら、少し離れた場所で待ったほうがいいな」


セオドアのその言葉に、俺達は頷いた。


しばらく、離れた場所で観察していたが。

一向に戻ってくる気配がない。


「寒いな、おい」


「ああ、本当だな」


この森、この付近だけ妙に寒い。


「恐らく、窪地になっておるからじゃな」


俺の懐で、暖を取っているコトハ。

・・・それは、卑怯じゃないかと言いたかったが。

コトハの体温で俺もあったかいので文句は言えなかった。


「うー・・・さむっ!セオドア、なんかないか?」


震えながら、ドギーはセオドアに何かをせがむ。


「これでも食え」


「むぐぅ!?」


ドギーの口に何かを突っ込むセオドア。


「はんは、こりゃ・・・うごぉ!?」


咀嚼しているドギーの顔が真っ赤になる。


「辛い!?」


「黙ってろ」


セオドアの手がドギーの口をふさいだ。


「むぐぐぐ」


ドギーの顔は汗で濡れていた。

・・・口に入れたなにか、物凄く辛い物だったようだな。


しばらくすると、ドギーは暑そうに手で顔を扇いでいた。


「こいつは、確かに熱くなるな」


「すり潰したマゴガラシを炒って固めたものだ。

 本当なら、雪山で遭難した時の非常食のようなものだが」


「ああ、こいつはよく効くよ・・・」


未だに顔が真っ赤だ。

どれだけ辛かったんだ・・・。


「む、きおったぞ」


「?」


視線を巣に戻すと。

ゴソゴソと、巣を弄る何かが動いている。


剣の持ち手に手を掛けて、ゆっくりと巣に近づく。

空いている手で合図を送って、全員で囲む様に巣へと近づいていく。

敵である可能性が高いので、逃がすのは得策ではない。


「主様、どうやら寝るようじゃぞ」


巣の真ん中で丸まり始める獣人。


「今だ!」


丸まった瞬間を狙って、全員が四方から飛び出した。


ピクリ、と獣人の耳が動く。

そして顔をキョロキョロとさせていたが。

動き出す前のその身体を、俺とコトハが捕まえた。


「取ったぞ!」


「うむ!」


腕の中でジタバタする獣人。


「はーなーせー!」


「放せと言われて話す馬鹿はおらんぞ!」


結構力が強い、大の大人である俺が振り払われそうなくらいの力だ。


「むうううう!!」


コトハを蹴飛ばし、俺を引っ掻く。

一瞬怯んだ俺達から抜け出すと、威嚇しながら間合いを取った。


「ふうう!!」


「やはり、獣人じゃな」


「しかも、コトハ・・・お前と同族じゃないのか?」


「うむ」


耳は狐耳、顔もどこかしら狐っぽい。

コトハも頷いているところを見ると、俺の考えは正しそうだ。


「しかし、貧相な身体じゃ、いい物食ってないの」


「え?」


「痩せてる、そう言う事じゃ」


彼女の身体をよく見ると。

確かに、痩せているように見える。

腕は細いし、顔も健康的とは言えない。


「退治するのが気が引けるな・・・!」


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