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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
49/53

金策と怪しい男

全員が宿に戻ってきて、翌日。


宿の隣にある酒場で、作戦会議を行っていた。

周りも冒険者だらけなのか、俺達と同じように会議している奴らもいた。


「駄目だったか、レオ」


「ああ、これだけだ」


宝箱に入っていた本と、道中稼いだ銀貨を取り出す。


「俺らも迷宮をさまよって、散々歩き回った結果がこれっぽっちだよ」


ドギーが小袋から取り出したのは銀貨一枚だった。


「労力の割には、実りが少なかったな・・・」


「仕方ないだろうドギー、初めて潜る時はこんなものだ」


「キーラは?」


「は、はい、一日分のお給金だけですけど」


銀貨1枚と銅貨3枚。

・・・アルバイトにしては、かなりの金額だ。


「歩合制みたいで、今日はお客さんも多かったそうです」


「なるほどね」


「しかし、この金額じゃ・・・まだ出れないぞ。

 後、銀貨5枚ほどないときついぜ」


ドギーの言う通りだ。

今の所持金だと、馬車でキンカシャに戻った際にすっからかんになる。

泊まれもしないという事だ。


「ドギーの実家に厄介にはならぬのか?」


「流石に悪いだろ・・・」


俺達は冒険者だ。

自分の身は自分で立てる。

宿をとるのも、飯を食うのもだ。

前はドギーの世話になった分、今度は自分たちで何とかしないと。


「殊勝だが、急ぎの旅でもある。

 本当にそれでいいのか、レオ」


セオドアがそう聞いてくる。

急ぎの旅というセオドアの言葉も分かる。

ゴイア教が俺達の鍵を狙って襲ってくる可能性もあるが。


「いや、急いで行くと逆に目立つ。

 少し遅くなったとしても、鍵は俺達の手にあるんだ。

 その限りは大丈夫だろ」


袋に入れてある鍵。

これが手元にある限りは大丈夫だろう。


「レオがそう言うのならいいが・・・しかし、今日はどうする?」


「あー、いい稼ぎ口がありゃいいんだけどな」


「おや、稼ぎ口が無いかと仰いましたか?」


「?」


ドギーが振り向くと、後ろには黒いローブを着た男が立っていた。

フードを深々と被り、顔は見えない。


「誰だよ、アンタ」


「これは失敬、私、スズクというものです」


被っていたフードを下ろすと、右目辺りにに大きな傷のついた壮年の男性だった。

白髪交じりで、ベテランの匂いがする人物だ。


「情報屋をやってましてね、稼ぎ口が欲しいと聞こえたので」


「そりゃ、探してるんだが」


「ではどうでしょうか、私の依頼を受けてもらえませんかね?」


そう言うと、懐から依頼書を取り出すスズク。


「ん・・・これは?」


その一文に目を通した。

怪物の駆除、それだけだ。


「怪物って、なんだよ?」


「それが皆目見当がつかないんですよ。

 暗闇から現れては、人を襲って逃げて行く。

 幸い死者は出てませんが、積み荷を荒らされる被害が出ていまして」


「それなら、俺等以外でもできるんじゃないか?」


「いえ、そこにいる獣人の方がいれば、夜目が効くと思いましてな」


コトハを指差すスズク。

なるほど、獣人のほとんどは夜目が効く。

それを見込んでの頼みか。


「場所は?」


「この街の東、森に近い街道で目撃情報が集中してますよ」


そこまで遠くない距離だ、受けてもいいか。


「しかし、一つ聞かせてくれ。

 その怪物・・・強いのか?」


「分かりません、ですが攻撃力はそこまで高くないかと。

 襲われた商人も、手傷程度で済んでますからね」


「なのに、こんなに高いのか?」


依頼書に書かれた報酬は金貨5枚。

相手にしては、高すぎるともいえる。


「実はここだけの話なんですか」


小声で話すスズク。


「この怪物の近くに地主の別荘がありまして、怪物退治はその執事からなのですよ」


「執事?」


「ええ、旦那様である地主が戻って来る前に、早急に片付けたいと。

 しかし、表立って動けない事情があるとかで、私に依頼を寄こしたのですよ」


表立って?

・・・きな臭くなったぞ、いきなり。


「まあ、報酬は必ず払われますし、どうです?」


「どうするよ、レオ」


「・・・」


セオドアは腕を組んでじっと俺を見ている。

表情は分からないが、俺に任せるといった感じだ。

コトハは、どっちでも良さそうだな。

ドギーは・・・まあ、金額が金額だ。

受けてもいいんじゃないかと言う顔だな。


「分かった、受けよう」


「おお、そうですか。では、こちらを」


依頼書の原本を受け取った。

これで、依頼を受けた事になるな。

・・・何事も無く、終わればいいが。


―――――――――――――――――――――


依頼場所の近くまで歩いてみる。

襲われたと思われる場所は、全て薄暗い獣道の近くだ。

どうやらこの獣道、近隣の村への近道らしく。

そこそこの人数が昼間は歩いていた。


だが、夜になるとほとんど人の気配がない。

なるほど、夜に襲われて目撃者もいないというのはこのせいか。


「しかし、変な森じゃな」


「?」


夜中までコトハ達と茂みで待機していたのだが。


「変、ってなんだよコトハちゃん」


「静かすぎる、虫一匹も鳴いておらんぞ」


ああ、そう言われれば、静かだ。

まるで、閑静な住宅街のように全く音がしない。


「そう言われると、そうだな」


「不気味だな」


セオドアもそう呟く。

不気味、そうだな・・・。


「んぐ・・・しかし、化け物の気配もないよな」


片手に持ったパンを千切りながら食べるドギー。

セオドアも、水分補給をしながら周りを見回している。

と言うよりも、ストローを使って吸うくらいなら、兜を外したらどうなんだとも思うが。


「今日は出ないかもな」


そう呟きながら、道を見渡すと。

奥の方から揺れる光が見えた。

どうやら、旅の商人みたいで松明を片手に重そうなリュックを背負っている。

30台前後の比較的若い男性だが、その額には汗がにじんでいた。


「こんな時間にご苦労だな、あの人も」


「そう言うなよ、ドギー」


「あれも仕事だ、私達と同じように、な」


藪の中に潜んでいる俺達も、同類だろう。

遅くまでご苦労なことだよ、まったく。


「って、ちょっと待てレオ」


ドギーはそう言うと、シーっと人差し指を立てた。


「なんか、聞こえないか?」


「聞こえ・・・?」


耳を澄ますと、確かに。

何か、歩くような音が森の奥から聞こえる。

人間の足音じゃないことは確かな、そのカサカサとした音。


「なんか来るぜ」


ドギーは更に身を屈め、目を細めて商人の周りを見る。


「化け物の登場か」


俺も、剣の持ち手に付けた手に力が入る。

そして、藪の中から何かが飛び出した。




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