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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
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大穴の先

コトハに殴られ、数分気絶していた俺。

その意識が戻り始めると、目の前には、見知らぬ少女が立っていた。


「おお、服装を変えると別人に見えるな!」


「す、すみません・・・」


謝る少女が目の前に見える。

地面に倒れた身体を、ゆっくりと起こした。


「だ、大丈夫か、主様」


「ああ・・・大丈夫だ、何が起こったのか分からないんだが」


頭を触ると、大きなこぶが出来ていた、

・・・あれ、誰に殴られたんだ、俺?


「レオ、アラクネちゃんの名前『ラーサ』ちゃんだってさ」


「え、ああ・・・じゃあ、目の前の女の子が」


少し大きめの服を着た少女。

ドギーの私服なのか、男っぽい見た目に見える。


「さて、次の階層に向かおうぜ?」


「ああ・・・」


たんこぶを触りながら俺は頷いた。

しかし、俺は誰に殴られて、気絶したんだ・・・。


セオドアが松明を持ち、その後ろにラーサがついていく。

俺達はその後ろで、周りを警戒しながら歩いていた。


「ラーサ、あそこに住んで長いのか?」


「そこまでは長くないですけど・・・なぜか、追いかけられるみたいで。

 どこに逃げても、すぐに冒険者に見つかるんです」


「見つかる?」


「はい、引っ越しても、遠くに逃げても、何故か冒険者に」


「なんじゃ、不幸体質なのか?」


「そんなつもりはないんですけどね」


しかし、この広い大陸の何処に逃げても、必ず冒険者に見つかるのか?

確かに、魔物からすれば不幸体質だな。


「あ、でも・・・たまに優しい冒険者の方もいるんですよ?」


「優しい?」


「はい、傷ついた私に薬を分けてくれる人もいましたし」


「へぇー・・・優しい人もいるもんだな。魔族に薬を分けるのか」


「・・・私達も、今同じようなことをしているんだぞ、ドギー」


「はは!そうだな、セオドア」


笑うドギーと呆れるセオドア。

その様子を見て、ラーサはクスリと笑った。


しばらく歩いていると、次の階層への階段が見えた。

階段を一段一段、ゆっくりと歩いていく。


そして、目の前に見えてきた扉。

その扉に感じる、気配。


「なんか、気味悪い」


「ああ、俺もそうだ」


温い風が、扉から吹いている。

この先、何処に繋がってるんだ・・・?

しかも、この扉・・・今までの扉と違う。


今までの扉は木製や鉄製のシンプルな扉だったが。

目の前の扉は・・・豪華に装飾された扉だ。


「ええい・・・ままよ!」


ドギーはノブを握ると、勢いよく扉を開いた。

その瞬間、ドギーは驚きの表情で。


「うわっ!?」


その場から、一歩退いた。


「どうした?」


扉の先が気になり、開いた扉の中を見る。

するとそこには・・・。

何もない・・・ただの、ただの?

下を見ると、真下が見えない程の大穴が目の前に開いていた。


「落とし穴・・・の罠か?」


「いや、違う・・・確かに、この扉は先へと進むための扉だ」


セオドアがそう言う。

確かに、この扉の横にはギルドの用意した脱出用の結晶がある。

つまり、これが・・・次の階層へ行くための扉に間違いない。


「こんなの、有りかよ」


「むう、くじ運次第では、撤退やむ無し・・・か?」


もう一度、その大穴を覗く。

密室の中に、穴が開いたような部屋が目の前に広がる。

そう、この部屋・・・穴しかないのだ。


その穴に落ちないように、部屋の脇を歩き、周りを調べる。


「主様!危険じゃぞ!」


「いや、なんか気になるんだよ」


壁を触り、床を触る。

しかし、何もない。

だが、何か気になるんだよな・・・。


松明の火を、床に落ちていた木片に近づける。

少し立つと引火し、木片が燃えだした。

その燃えた木片を、足を使って大穴の中に落とした。


音もたてずに落ちていく燃えた木片。

しばらくは、その火の灯りで見えていたが。

・・・闇に飲まれて、見えなくなってしまった。

相当深い、この穴は。


「降りてみるか・・・」


「主様!!何を言っておる!」


「いや、だから気になるんだって」


そう言いながら、ロープを探す。

しかし、そこまで長いロープは。


「お!そうだ、さっき貰ったアラクネの糸を使って降りれるんじゃないか?」


「なるほど、そうだな」


「ドギー!!貴様、主様に危険な提案をするんじゃない!!」


「あばばばば!!」


コトハに胸ぐらを掴まれ、頭を振られるドギー。

俺は、アラクネを糸を体に括り付け、その反対側をセオドアに持ってもらった。


「レオ、気を付けろよ」


「ああ・・・大丈夫だ、多分な」


「主様!」


「冒険者らしく、時には無謀に、な?」


そう言って、大穴の側面に足を付けた。


――――――――――――――――――――


ゆっくり、ゆっくりと身体を下に下ろしていく。

しばらくすると、上も下も暗闇に包まれた。


音もしなくなり、一人っきりで闇の中に取り残された感覚に陥る。


「・・・」


それからしばらく、無言で下っていく。

すると、不意に足が何かに触った。

初めは側面の出っ張りか何かに触っただけかと思ったが。

次に尻が何かに接触する感覚が伝わる。


その時に分かった。

底まで、降りたんだと。


松明に火を付け、周りを見る。

アラクネの糸が熱に弱いので、松明は使っていなかった。


「ここは・・・ん?」


大穴の下には、大空洞が広がっていた。

そして、その大空洞には・・・花が咲いていた。


「花・・・?」


しゃがんで、その花を触る。

こんなに真っ暗闇だというのに、花が咲くなんて、あり得るか?


「いらっしゃーい!人間さん!」


「!?」


急に声がした。

その方向に、松明を向ける。


「誰だ!?」


こんな所に、冒険者がいるとは思えない。

なら、魔物か何かか・・・!?

人語を解するという事は、上級の何かだ・・・!


しかし、身構えた俺を出迎えたのは。

小さな、フェアリーだった。


「やっほー!人間さーん!」


俺に近づく、羽の生えた小人は、そのまま近づき続けると俺の右肩に腰を掛けた。


「お、お前・・・は?」


「ぶー!お前じゃないよ、リズーって名前があるの!」


「あ、ああ悪い・・・」


俺から飛び立つと、周りをくるくると回るリズー。


「ようこそ!最下層へ!!人間さんが初めてだよ!」


「最下層・・・だと?」


「うん、シルフ様の鍵が眠る祠があるよ!」


「・・・」


待て。

俺達は潜って数時間と経ってない。


これは、罠なんじゃないか?

フェアリーは悪戯好きで知られているし。

俺を図って、罠にはめる可能性もある・・・が。


フェアリーの零す、光る鱗粉が辺りを照らす。

そしてその光が、小さな祠を照らし出した。



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