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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
45/53

冒険者との争い

コトハは、目の前の魔法使いを睨みながら、その動向を伺っていた。


「獣人の魔法使いか・・・珍しいわね」


目の前の女性が杖を振ると、目の前に複数の岩が浮き始める。


「ロック・シュート!」


コトハに向かって石礫のように飛ぶ岩。


「よっ、ほっ・・・おっと」


それを華麗にかわすコトハ。


「狙いが甘いぞ、ほれ、もう一度」


「む・・・!」


むきになったのか、顔をしかめる女性。

もう一度、岩を浮かせ始めた。


「ほれ、隙だらけじゃ!」


杖を振った瞬間に、コトハが地面に落ちている石を女性に投げた。


「え?きゃ!」


右肩に当たり、握っていた杖を手放してしまう女性。


「しま・・・!」


拾おうと、手を伸ばした瞬間。

俺の足が、その杖を踏んだ。


「詰み、だな?」


「く・・・!」


「主様、終わったのか」


「ああ、あの通り」


後ろ手に縛られた女性を指さす。


「じゃあ、お主も縛っておくか」


コトハが何かを唱えると、細いツル状のものが女性に絡み・・・その身体を拘束した。


「な、何よこれ!」


女性がもがくが、ツルは全く剥がれず。

逆に締め付ける力が強くなる。


「きゃあ・・・!?」


「動かん方がいいぞ、そのままの方が良い」


「コトハ、ドギーとセオドアを助けるぞ!」


「ああ!」


――――――――――――――――――――


「セオドア・・・!おっと!」


一瞬セオドアに気を取られたドギーだったが、キスカの一撃を紙一重でかわした。

そのキスカの身体を再び蹴る。


「二度目は無いぞ!」


ドギーの蹴った足を腕で掴むと、自分の方に寄せて転倒させた。

頭をしたたかに打つドギー。


「あだ!?くそ、こいつ!」


掴まれていない足で、キスカの顔面を思いっきり蹴るドギー。


「ぐぉ・・・!?」


蹴られた鼻を押さえて、後ろによろけて倒れるキスカ。

ドギーがたちがあると、キスカもよろよろと立ち上がった。


「へへ、ガキの喧嘩だな・・・これじゃ」


「くそが、アラクネだけが目的なのによ」


立ち上がったキスカの身体を殴るドギー。

それに応対するように、キスカもドギーを殴る。


「おら!!」


「ぐぁ・・・やりやがったな!!」


まるで子供の喧嘩のように殴り合う二人。


その様子を、援護に来ていた俺達は眺めていた。

というより、どう手を出せばいいか分からなくなっていた。


「なあ、主様」


「子供の喧嘩だ、やらせとけ」


見れば、お互いに武器を手放して殴り合っている。

最早戦いじゃない・・・ただの喧嘩だ。


ドギーの右ストレートがキスカの顎を打ち抜いた。

顔が揺れ、地面に倒れるキスカ。

勝負あり、だな。


「はぁ・・・はぁ・・・」


顔があざだらけのドギーは息を切らせて俯いている。

麻痺が治ったのか、セオドアが立ち上がると、ドギーの治療を始めた。


「まったく、子供か?」


「いやいや、殴り合いになっただけだって」


「・・・お互い無事でよかったが」


そう言いながら、ドギーの顔の治療をしている。


「アラクネは大丈夫かの?」


「あ。そうだったな・・・おい!」


大穴にそう呼びかけると。

その奥から、アラクネが顔をのぞかせた。


「あの・・・もう・・・?」


辺りを見渡すアラクネ。

そして、安全を確認するとその巨体を這い出してきた。


「おお、アラクネちゃん。もう大丈夫だぜ?」


「あ、ありがとうございます・・・!」


ペコリとお辞儀をするアラクネ。

・・・しかし、違反してまで手に入れたいのか・・・そのアラクネの糸は。


「その、お礼という訳じゃないですけど、私の糸を・・・どうぞ」


アラクネがそう言うと、蜘蛛の腹の部分をさすり、踏ん張っている。


「むぅぅぅ!!」


蜘蛛の腹の先端から、白い絹のような糸が大量に飛び出した。


「うお!こいつが・・・アラクネの糸か」


「は、はぃぃ・・・ふう、はぁ・・・」


相当疲れる行動のようだ。

額には汗がにじんでいた。


「だが、助かるの。アラクネの糸は強靭でしなやかな素材。

 こんなにも細いのに、大人一人がぶら下がっても切れないのじゃ」


そう言いながら、コトハは片手でアラクネの糸の一本を手に乗せた。

俺も、試しに触ってみる。

確かに、強靭な糸だ。


俺達がそのお礼の糸を回収すると。

地べたで気絶していたキスカが頬をさすりながら立ち上がった。


「負けた負けた・・・あー!もう!帰るぞお前ら!」


不機嫌そうに、拘束していた二人に近づくキスカ。

取り出したナイフで縄と、コトハの出したツタを切り裂くと。

こっちを一睨みして、奥へと消えて行った。


「なんじゃ、あいつら」


「・・・次も来るだろうな。

 アラクネちゃん、場所を変えた方がいいぜ?」


「で、でも・・・私一人じゃ、何処にも」


「魔族なのじゃろ、何とでもなる」


「でも、私・・・怖くて」


・・・。

怖い、か。


「なあ、皆。一人くらい、仲間が増えても大丈夫か?」


「おい、レオ・・・まさか」


「ここにいるよりはましな場所に、飛ばされるかもしれないだろ?」


「だが、彼女はアラクネだ。

 ・・・一緒に歩くところを見られたら、ルール違反で咎められるぞ?」


「そのルール、保護も無理なのかの?」


「・・・難しいだろう、保護という名目で捕獲する輩もいる」


尋ねるコトハにそう返すセオドア。


「むう、融通の利かぬルールじゃな!」


「俺は、別に連れてってもいいと思うんだけどな?

 むしろ、見捨てて先に行く方がしこりが残りそうで嫌だ」


ドギーはそう言うが、セオドアは腕を組んで悩んでいた。

連れて行けば、他の冒険者に見られた場合厄介なことになる。

普通なら置いていくのが正解だろうが・・・。


俺達は、目の前のアラクネを、そのまま見捨てれるほど、非常にはなれなかった。


「そうじゃ!変装させれば良い!」


「変装って・・・この大きな蜘蛛の姿を?」


どうやっても隠せそうにないその蜘蛛の身体。

これを、どう隠すというのだ。


「擬態魔法が使える!それで」


両手に魔力を込めたコトハ。

青白く光る手が、アラクネの両頬に触れる。


「よいか、持って数時間じゃぞ」


頬に触れた瞬間、アラクネの身体が光り。

蜘蛛の体が消え、人間の両足に変化した。


「おお、すげえ・・・」


「擬態して、そう見えてるだけじゃ・・・って」


蜘蛛の体が、足になったのはいいが。

その下半身から下には何も履いてな―――


次の瞬間には、俺はコトハの持った棒で殴られ、地面に倒れていた。


「主様は見るなぁ!」


「な、何が・・・起こった・・・んだ」


そのまま、地面に顔を付ける俺。


「早く何か履くんじゃ!」


その声を最後に、俺の意識は消えて行った。


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