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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
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2度目のダンジョンとアラクネとの出会い

セオドアの腰に下げた薬袋を確認する。

これで、2度目のダンジョンに挑める。


そう思いながら、ダンジョンの入り口に立った。

相変わらず、二人の門番が傍に立ち、こちらを見ている。

その二人に、『入場料』を払い、再びダンジョンへの階段を降り始めた。

俺、コトハ、ドギー、セオドア・・・キーラは今回も留守番だ。


前と同じように、階段の先には一つの扉が見えた。

・・・前は寒さに覆われた場所だったが、今度はどうだろうか。

ドアノブに手を掛けると、前のような寒さは感じない。

思い切って、ドアを開けることにした。


――――――――――――――――――――


ドアの先に広がっていたのは、薄暗い空間だった。

どこかの、洞窟の中のような光景だ。


「寒くは無いな・・・どっかの洞窟の中に見えるけど」


そう言いながら、ドギーは松明に火を灯した。

煌々と、辺りを照らす松明だったが。


「うぉぁ!?」


その松明が照らした洞窟の壁に驚くドギー。

洞窟の壁には・・・大量の蜘蛛が張り付いていた。


「虫だらけのダンジョンかよ!」


「・・・虫は火を嫌う、進みやすいともいえるな」


ドギーから松明を受け取り、ぶんぶんと振ると、周りの虫が散っていった。


「気持ちわりぃなぁ・・・」


「苦手か?」


「あんまり、得意じゃないぜ・・・」


もう一本の松明を取り出すと、ドギーは俺の握る松明から火を付けた。


「コトハ、大丈夫か?」


「わらわは森育ちじゃ、虫など怖がっていたら住めぬ」


「セオドアは?」


「・・・私も、あまり得意ではない・・・が、大丈夫だ」


そう言うと、ドギーの松明をひったくり、ずんずん先に進むセオドア。

松明を振っては、周りの虫を追い立てていく。

・・・苦手というよりは、目の仇にしているような様子だ。


「しかし、狭いダンジョンだな・・・気を付けていくぞ」


俺のその言葉に、頷くコトハとドギー。

セオドアは・・・既に道の先にまで行ってしまっていた。

慌てて、その後を追う俺達。


しばらく歩くと、蜘蛛の巣だらけの部屋が見えてきた。

ここだけは、洞窟というよりは・・・人工物のような部屋だ。

そして、その部屋の奥に見える複数の赤い光。

爛々と輝くそれは、不気味に動いている。


「何かいるな・・・」


剣に手を掛け、留め金を外す。

松明の光源だけでは、その正体は見えないが。

・・・この蜘蛛の巣の量と、目の前の複数の光が目だとすれば。

デカい蜘蛛が、目の前にいるのは想像に難しいことではなかった。


「のう、主様・・・」


「?」


「避けて通れないという事は無いはずじゃ」


「戦わない方がいいことには賛成だが・・・この状況じゃ」


部屋が狭く、接敵するのは避けられないだろう。

剣を引き抜き、警戒しながら部屋の中へと入っていく。


その後に続くドギーが、松明で辺りを照らしてくれる。

その光で、大蜘蛛の正体が見えてきた。

大きな蜘蛛の身体に、女性の上半身が生えた・・・『アラクネ』だ。

松明の光が目に入ったアラクネがこちらを見る。


アラクネは絶世の美女が多いと聞くが・・・目の前の個体も、美女だ。

しかし、年が若いのか・・・顔も幼い。


俺と目が合うと、アラクネが悲鳴を上げた。


「きゃあああ!!」


「え?」


蜘蛛の糸をまき散らしながら、部屋の隅の大穴に身を隠すアラクネ。

・・・な、なんなんだ?

てっきり、攻撃されるかと思ったんだが。


「な、なあ・・・セオドア。アラクネって、臆病なのか?」


そう、セオドアに尋ねるが。


「いや・・・好戦的で縄張り意識が高い。

 縄張りに入った人間を餌にして生きているはずだが・・・」


セオドアは戸惑いつつもそう解説してくれた。

・・・やっぱり、あの反応が普通じゃないって事だよな?


「のう、アラクネ・・・お主、何故逃げるのじゃ?」


いつの間にか、コトハがアラクネの入った大穴の近くまで近寄っていた。

怯えながら、コトハの顔を見ているアラクネ。


「い、虐めるんですよね・・・!?私を!」


「は?」


コトハはぽかんとした顔をすると、アラクネの身体を見た。


「・・・ほう、なるほどの」


よく見れば、アラクネの身体全体には痣のような跡と無数の切り傷が確認できた。

そして、その怯えよう。


「お主、巣を追い出されたか?」


「う、うん・・・」


素直に、そう答えるアラクネ。


「どういう事だ、コトハ?」


「アラクネもそうじゃが、魔物というものにも『社会』というものがある。

 お主が何をしたのかは分からぬが・・・な」


そう言って、アラクネを見るコトハ。


「・・・人を食べられないんです、私。だから、追い出されて・・・ここに」


大穴に転がっているのは食べかけの野菜や、果物だ。


「なるほど、ベジタリアンのアラクネか」


「人を襲えない・・・役立たずのアラクネだって、虐められて」


それで追い出された・・・か。


「ひどい話だよな!少し変わってるってだけで、追い出されるのかよ?」


不機嫌そうに、そう言うドギー。


「お前も相当変わり者だが、社会になじんでるもんな」


「ああ、変わり者だけ・・・って、なんでだよ!」


突っ込みを入れるが、ドギーは変わり者だ、間違いない。


「しかし・・・どうする?このままアラクネを放って、先に行くか?」


セオドアがそう言う。

まあ・・・襲う気が無いのなら、俺達も無視する。

だが、この子をそのまま置いていくのも気が引ける。


「ここに、他の冒険者が来たことは?」


「何度も・・・私の糸を奪おうと、襲ってくる人もいる・・・!」


そう言って、怯えだした。

アラクネの糸、か。

強靭で、破れにくい服を編める糸だ。

量も少なく、同じ重さの金と交換されるほどに貴重。


彼女から奪おうとすれば、簡単に奪えるだろう。

なるほど、彼女を傷つけたのは同族だけではないという事か。


「じゃあ、どうしてここにいるんだ?」


「ここ以外に、逃げる場所が無いの!」


そう言うアラクネ。

だが、風洞のダンジョンの飛ばされる先の一つがここだ。

定期的に冒険者が来ると言ってもいいだろう。


「しかし、ここも危険じゃ。移動した方が良いぞ?」


「で、でも・・・」


アラクネの目が、俺たち以外に向く。

そして、その目が恐怖に染まった。


「きゃああ!!」


再び、大穴の奥へと身を隠すアラクネ。

なんだ・・・?


彼女の見た場所を見ると・・・。

そこには、俺たち以外の冒険者が立っていた。

数は3人・・・手には、何か特殊な器具を持っている。


そして、その3人はアラクネを見つけると・・・ニヤリと笑った。


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