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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
42/53

薬草屋の老婆

朝日が、カーテンの間から目に入る。

それによって、覚醒した。


「ふぁ・・・朝か」


上半身を起こすと、コトハが腹に抱きついていた。

・・・この状態にも慣れてきたが。

別の人に見られたら、どう思われるのだろうか。


そんな事を考えながら、コトハの腕の戒めを外し、ベッドから立ち上がる。

今日は、朝早くに『草原の薬草屋』を訪ねてみようと思っていたからだ。


服を着替え、髪を整えていると、コトハも起きたようで。


「くぁぁ・・・んぅ・・・なんじゃ、主様起きてたのか」


俺を見るなり、そう言うコトハ。

俺は苦笑しながら、最後に剣を腰に下げた。


「『草原の薬草屋』に行ってみようと思ってね」


「ああ、そうか・・・わらわも、準備するか」


寝起きがいいコトハだが、今日は違うらしい。

ぼーっとしながら、髪を整え始めた。


「外で待ってるからな」


「うむ・・・」


元気なくそう答えるコトハ。

・・・眠そうだな。


――――――――――――――――――――


コトハの着替えが終わるまで、暇だったので。

ドギー達の様子を見に行くことにした。

部屋の前で様子を探る。

音がしないな、まだ寝てるか。


そう思い、宿の受付へ向かうと。

ドギーとセオドアが受付の男主人と何か話していた。


「起きたのか、レオ」


「ああ・・・早いな」


「いや、まあ・・・ちょっとな」


何かあったのだろうか。

ドギーの顔が曇っている。


「お客さんは気づかれませんでしたか?」


「?」


男主人が部屋の一つを指差す。

それは、ドギーの向かい側の部屋だ。


「夜更け過ぎまで騒ぐ声が響いていたので。

 こちらのお客さんも寝れずに困っていたんですよ?」


「そうなのか?」


ドギーにそう尋ねると、ああと頷いた。


「急にうるさくしやがってさ・・・やれやれ」


寝不足という訳ではなさそうだが、睡眠を邪魔されて不機嫌そうだ。

隣に立つセオドアも、不機嫌なのが見て取れた。


「すみませんね、冒険者の中にはああいう手合いも多いんですよ。

 なので、酒の持ち込みは禁止してるんですがね・・・」


「苦労するな、宿の主人ってのも」


同情するように、ドギーがそう言う。

店の主人は、ため息を一つ吐くとドギーとセオドアに飲み物を差し出した。


「お詫びのドリンクです、頭がすっきりしますよ?」


「ああ、貰うぜ・・・」


そう言って、片手でドリンクの入ったグラスを掴み、飲み干すドギー。


「んぐ・・・酸っぱいな、これ」


「ええ、この周辺では眠気覚ましにも飲まれる、フルーツドリンクですよ」


「へぇ」


気に入ったのか、物足らなそうな顔だ。


「私の分も飲め、ドギー」


そう言って、セオドアが自分の分のドリンクを渡す。


「いいのか?」


「水分は取ったばかりだ、今は要らない」


「んじゃ、お言葉に甘えて」


二杯目を呷るドギー。

・・・元気そうだな、これならすぐにでもダンジョンにも行けそうだな。


「なあ、セオドア。一つ、ダンジョンに潜る前に寄りたい場所があるんだが」


「?」


顔だけ俺に向けるセオドア。

そのセオドアに、薬草屋の話をする。


「・・・なるほど、確かに。酔った方がいいかもな。

 キーラにも、着いてきてもらった方がいいだろう」


「ああ、そのつもりだ」


――――――――――――――――――――


全員で、その草原の薬草屋の手前まで来た。

何とも、古びれた佇まいのその店。

朝で日光が差したその姿は、夜に見るよりもみすぼらしく見える。


「すんすん・・・んん、良い匂いですね。

 これは、いい店ですよ」


キーラがそう言う。

・・・コトハは狐だから嗅覚がいいのは何となくわかるが。

キーラはエルフだ、匂いでわかるものなのだろうか?


「行ってみましょう?ね?」


興味津々のキーラがそう言う。

・・・まあ、入るつもりだったし、行くけどな。


店の扉を開くと、カランカランとベルが鳴った。

それに気づいたように、奥からどたどたと聞こえてくる。


「お客さんかい?」


奥から走ってきたのは、老女だった。

長い白髪を結わえ、三つ編みにしている。


店の中は、薬草をすり潰したような匂いや、

薬の匂いが入り混じって、甘ったるい匂いがした。


瓶詰めされた薬草の類が店に並び、カウンターの上にもざるに上げられた、

複数の薬草がむき出しで保管されている。


「・・・わぁ、すごいですね!」


キーラが目を輝かせて薬草を見だす。

・・・まったく興味が無いという訳ではなさそうだな。


「なんだい、冒険者かい?知識の無い奴に、売る物は無いよ?」


知識の無い?


「それなら問題ないぜ、キーラちゃんがいるからな」


「ほう」


ドギーの指差すキーラを見つめる老婆。

その眼光は鋭かった。


「あ、あの・・・私は」


「ふむ・・・赤い薬草で扱いが危険なものは?」


「『フルのまどろみ草』、ですか?」


「では、その抽出方法は?」


少し考えたキーラは。


「えっと、数日乾燥させた後に・・・燻して毒だけを抜きます。

 あとは、もう一度乾燥させて、煎じ薬にします」


「ふむ・・・」


老婆の目が優しい目に変わった。


「ああ、あんたらには売ろう。

 最近は、物の価値も分からずに買う輩が多くてね」


ぶつくさ言いながら、カウンターの奥に立つ老婆。


「ようこそ、『草原の薬草屋』へ」


そう一言、言うと薬草の準備をしだした。


――――――――――――――――――――


「なるほど、ダンジョンに潜るために・・・薬が欲しいと」


「は、はい」


老婆が顎に手を当てると何か考えている。


「ふむ・・・なら、携帯性がいいものを持っていった方がいい」


そう言うと、カウンターの裏の棚からいくつかの袋を取り出した。

中には丸薬が入っている。


「私の薬はよく効くよ、用法は守りな。

 最近の冒険者は、すぐに多量に飲むからね」


そう言って、手渡される薬。


「代金は?」


俺がそう聞くと。


「銅貨3枚だ」


そう言って、指を三本立てる老婆。


「・・・安いが、それでいいのか?」


「ああ、薬は必要な奴に、安く売るというのが信条でね。

 扱い方も知らずに乱用する奴が大っ嫌いだから、お嬢ちゃんを試したのさ」


そういって、かっかっかと笑う老婆。


代金を渡すと、丸薬のセットを渡された。

毒用の薬、麻痺用の薬、後は・・・黒い丸薬があるが、これは?


「腹下し用の薬だよ。腹痛で苦しむ冒険者も多いからね」


「あ、ああ・・・そうなのか」


一式入った薬袋を、誰に預けようかと考える。

・・・セオドアがいいか、やっぱり。


「頼めるか、セオドア」


そう言って、紙袋をセオドアに渡す。


「ああ・・・いいぞ」


セオドアは受け取ると、腰に下げてあるポーチに紙袋を入れた。


「俺じゃ駄目か?」


ドギーがそう言うが、コトハに抑止される。


「お主だと落とすじゃろ?」


「え?」


意外そうな顔をするドギーだったが。

・・・落としそうだな、こいつの場合。


「まあ、無茶するんじゃないよ。

 ダンジョンで死ねば、骨は拾ってくれないからね」


そう言う老婆。


「ああ、もちろんだ。・・・薬、有難く貰っていくよ」


そう言い残し、薬草屋を後にした。

これで薬は大丈夫だろう。


・・・後は、もう一度ダンジョンに潜ってみるだけだな。


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