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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
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一時帰還

気絶したドギーを近くの宿屋まで運んだ。

きちんと前料金を払って、だ。


ドギーの身体をベッドに寝かせる。

寝かせてしばらくすると、寝息を立て始めた。

安定した寝息だ、どうやら、無事なようだ。


「すまない、キーラ」


「いえいえ、お役に立てたようで何よりです」


「調剤も出来るんだな?」


キーラは、精霊文字専門の研究者だとばかり思っていた。

薬の調剤が出来るとは・・・。


「はい、片手間で覚えた趣味みたいなものですけど」


「・・・『クアラの毒』の解毒薬は?」


「ラクリッサの葉を煎じて、高温で抽出すれば出来ますよ?」


「『ラッヂの神経毒』」


「アレススの根っこと、雪風草を混ぜて、練り合わせます」


問題を出していたセオドアが腕を組んで頷いた。


「キーラ、あなたは薬剤師の方が向いているぞ」


「え?」


「それだけの知識があれば、薬剤師としても十分身が立つ」


「ああ、俺もそう思おう」


結構驚いた。

キーラの知識は大したものだ。


「あはは・・・でも、精霊文字の解読が好きなので、遠慮しますね」


「もったいない、せっかくの才を」


とはいえ、キーラ個人の問題だ。

俺やセオドアが口を出すことじゃないだろう。


しかし、嬉しい誤算だ。

キーラが同行してくれれば、少なくとも薬で困ることはないだろう。


――――――――――――――――――――


しかし、よく寝てるな。

ドギーは寝相が悪く、何度かベッドからずり落ちそうになる。

また、落ちそうになり、ギリギリで寝返りを打った。


その時、ポケットから何かが落ちた。

チリンチリンと、音を立てて床に転がる・・・金貨。


「ドギー、まさか」


あの黄金の間から、くすねてきたのか?


「ちゃっかりしてるな・・・お前」


「丁度いい、宿賃にさせてもらおう」


そういうと、セオドアがドギーのポケットに手を突っ込み、金貨をすべて回収した。


「このせいで、墓地へ飛ばされたという可能性は無いかの?」


「・・・どうだろうな」


あのダンジョンの構造は分からないが。

金塊に手を出す奴はろくなことにならないというのも、頷ける結果だ。

ワーレスでは欲張りは長生きできない、だな。


「しかし、どうする主様。ゴイア教の奴らがここに来る可能性もあるじゃろ?」


そう言いながら、窓から外を見るコトハ。

通行人を見ているようだ。


「入ったとしても、一筋縄ではないダンジョンだ。簡単には突破できまい」


セオドアがそう言う。

確かに・・・対策して、初めて奥に進める様なダンジョンだ。

今回は、試しに入ったに過ぎない。


「次は、準備を進めて行こう」


「ああ」


セオドアも、コトハも頷いた。


――――――――――――――――――――


その日の夕方。

ドギーは体調が戻りつつあるのか、用意された夕食を平らげていた。


「むぐ・・・それで、明日も潜るんだろ?」


「ダンジョンにか?お前の体調次第だよ」


「大丈夫だって、キーラちゃんの薬のお陰で、快調だぜ?」


そう言って、ガッツポーズを作るドギー。

その姿は元気そのものに見えるが。


「本当に大丈夫だろうな?」


こいつの事だ、そこら辺は無理をしそうなところがある。


「ああ、明日には普通に動けると思うぜ?」


「ならいいが・・・まあ、無理はするなよ」


俺の部屋は、ドギー達の隣だ。

まあ、後の事はセオドアに任せておこう。


部屋に戻ると、コトハが何かを食べていた。


「ワーレス名物の、お菓子らしいぞ」


そう言って口に運ぶコトハ。

クッキーに見えるが、色は緑だ。


「緑色か」


机の上に乗っている、そのクッキーを一つ取る。


「何でも、保存食にもなるとか」


一口、口に含む。

・・・甘味が強いが、少し、苦味も感じた。


「野菜でも、練り込んでいるのか?」


「栄養食とも、言っておったぞ。

 宿の主人は、好き嫌いが分かれるとも言っておった」


確かに、こいつは・・・好き嫌いが分かれる味だ。

だが、保存食としては美味しい部類だろう。

少なくとも、干からびさせたパンよりはましな味だ。


「むう、確かに小さい子供には合わぬ味じゃな」


「ああ、甘さの中に苦味が出てくるからな・・・」


冒険者向けの保存食、といった具合だろう。

大衆向けではない。

手元に残ったクッキーを口に放り込む。


「さて・・・少し散歩して来るが。コトハはどうだ?」


「おお、もちろん一緒に行くぞ」


――――――――――――――――――――


夕方の日で赤く染まるワーレスの街並み。

朝に比べれば人ごみも落ち着き始め、静かになりつつある。

しかし、商店街付近はまだ活気があった。


「のう、主様」


「ん?」


「せっかくじゃ、酒場で聞き込みでもしてみるかの?」


「・・・酒場か、そうだな」


他の冒険者もいるだろう。

ダンジョンの事について、詳しく聞けるかもしれないな。


「いい案だな、聞きに行ってみるか」


酒場に向かってみるか。


しばらく、商店街を歩き一軒の酒場を見つけた。

中からは騒がしい程の声と、ジョッキを打ち鳴らす音が聞こえる。


酒場の扉を開けると、予想通りの光景だ。

複数のイスとテーブルに座る男達がジョッキ片手にどんちゃん騒ぎ。

店の隅では酔いつぶれた男が吐いているし、

店の女の子にちょっかいを掛けた男が張り倒されていたりしていた。


カウンターまで進み、バーテンダーに話しかける。


「お客さん、初めてだね?」


「まあな・・・」


「ここは、冒険者専用の酒場、『風の宝石』さ。

 ・・・まあ、宝石と言われるほど綺麗ではないがね」


そう言うと、グラスに水を注ぎ、渡してくれた。


「ワーレスは騒がしいが、良い街だ。

 身分を弁えれば、これほど住みやすい場所も無い」


「それで、ダンジョンについて聞きたいんだがの?」


コトハがそう聞くと、バーテンダーはコトハを見て、多少驚いていた。


「お客さん、子供は困りますよ?」


「言われると思ったわ!これを見ても納得せんか?」


そう言うと、自分の耳を触るコトハ。


「ああ、獣人の方ですか。なるほど・・・では、間違えたお詫びに、サービスを」


そういうと、カウンターから何かを引っ張り出すバーテンダー。

それは、小さい飴玉のようなものだ。


「子供ではないと申したぞ!」


「いえいえ、これはワーレスの地酒をブレンドした飴でございます。

 酒に弱い方だと、すぐに酔うほど、強いものですよ?」


そう言って、進めてくるが。


「わらわは酒は飲まん、それよりサービスするなら、話を聞かせてくれぬか?」


「お話・・・ですか」


俺とコトハを見るバーテンダー。


「分かりました、では・・・何なりと」





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