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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
34/53

強襲の強盗

朝方。

久しぶりによく眠れた気がする。

狭い宿だが、周りは森で静かな場所だ。


「んぁぁ」


ドギーが何か呻いている。

そして、ベッドから転げ落ちた。


「のぁ!?」


情けない声を上げて、床に横たわるドギー。

・・・朝から何やってんだ。


「うるさいのぉ」


腕の中で寝ていたコトハがもぞもぞと腕の中から抜け出す。

寝癖が付いたままの、綺麗な髪が俺の鼻をくすぐった。

・・・くしゃみが出そうになるが、我慢した。


「なんじゃ、ドギー」


「うう・・・変な夢を見たんだよ」


頭にこぶが出来ている。

それを撫でながら立ち上がる。


「セオドアは・・・まだ寝てやがるか」


鎧姿のまま、座って眠っているセオドア。

・・・戦時じゃないのだから、横になって寝たらいいのにな。


「ところでドギー、お主・・・」


「ん?」


「尻が丸見えじゃ」


「は?」


目線を落とすドギー。

パンツが捲れ、見事に尻だけが見えていた。


「おおう!」


そそくさとパンツを直すドギー。

しかし・・・他の奴がいるのに、下着姿で寝てたのかこいつは・・・。


――――――――――――――――――――


食事が出ない素泊まりの宿。

食事は、馬車の中に入ってからすることにした。


商人と、キーラに合流して馬車を出す。


「んぐんぐ・・・」


パンと、保存食用に乾燥させた肉を食っているキーラ。

前から思っていたが・・・結構な大食らいだ。

細いの身体のどこに入っているのかと思うくらい、結構食べる。


「んぐ?」


「いや、そのまま食ってくれ・・・」


俺の視線を気にしたのか、キーラの食事がいったん止まるが。

その言葉を聞くと、キーラは再び食べ始めた。


「しかし、この肉は美味いの」


「ああ、実家から持ってきた保存食だ。

 干す際に、色々と手間を挟んでいるらしいからな」


「・・・この肉を売れば、今より稼げるかもしれんぞ?」


「なるほど、そう言う手もあるか」


苦笑しながらそれを聞く。

まあ、考えておこう。

俺も一口、干し肉を口に含む。


商人も、パンと牛乳を口に含みながら馬車を操る。

食べ終わる頃には、小高い山の頂上付近まで到達していた。

見通しが聞き、昨日までいたキンカシャが眼下に広がる。

・・・こう見ると、デカい街なんだなと感じる。


「レオさん、ここから気を付けてくださいよ。

 この先の山道が、一番襲われる可能性が高いのです」


その言葉の意味は、直ぐに分かった。



今から下っていく山道は、開けてはいるが、大きな石が大量に転がっている。

身を隠すには、最適の場所だ。

奇襲するとしたら・・・確かにここを選ぶだろう。


商人の顔にも緊張が走る。

言葉も少なくなり、辺りを警戒しながら馬車を進めている。

すると、後ろからドギーが馬車に走り寄ってきた。


「レオ、俺は辺りを見てくるぜ。

 ・・・さっき、人影が見えたんだよ」


そう、馬車の外から小声で話しかけてくる。


「人影?」


「ああ、見間違いかもしれないけどな」


そう言うと、ドギーは左方向へ走っていった。

強盗が来るかもしれないな。

そう思い、武器の留め金を外しておく。


数分、馬車が山道を走ると。

急に馬の歩みが止まる。

前を見ると、山道の一部がぬかるんでいた。


「おかしいな・・・雨は降ってないはずなんだが」


商人が乗り出して地面を見ていると、その顔の横に、矢が刺さった。


「おう!?」


首を引っ込める商人。

強盗か・・・!


すぐさま馬車から降りると、山道の坂道から上に上がる山賊の姿と。

石の影に隠れていた山賊が一斉に姿を現した。


「へへ・・・荷物を置いてきな」


石に隠れていた一人が近づいて来るとそう声を掛けてきた。

・・・強盗なのは間違いない、武器を引き抜き馬車から飛び出す。

コトハも続いて、後ろから飛び出した。


「くそ、護衛付きか」


近付いてきた男が後ろに下がると、矢が風切り音が響く。

複数本の矢がこちらに向かって飛んできた。


自分に当たりそうな矢だけを剣で払いのける。

剣に払われた矢は、地面に落ちた。

その他は、後ろの馬車に刺さった。


「遠距離戦は、不利だな・・・ドギー」


恐らく、回り込んでいるドギーに期待しよう。


男達は一定の距離を取りつつ、弓を放ってくる。

賢い奴らだ、一気に攻めるのではなく、弓でチクチクとこちらを狙っている。


「ひぃぃ!」


馬車の下に隠れ、身を隠している商人。

俺とコトハに近づく矢を切り払っていたが、流石に精神がすり減ってきた。


「狐火も、相手が見えぬと使えぬ・・・!」


一瞬だけ身を表しては、弓を放ち姿を消す山賊。

・・・まるで正規兵だ、よく訓練されている。


「それに、森を焼いてしまう、どうしたらよいのじゃ・・・」


コトハは何か悩んでいた。

一本の矢が、肩を掠める。


「っ!ドギー・・・どうした?」


――――――――――――――――――――


先頭の馬車が襲われたのを見て、ドギーは姿を隠しつつ、山賊の後ろに回り込んでいた。

目の前には、大石の間を移動しながら弓を放つ山賊が見える。


「・・・あれだけ統制されてるなら、リーダーがいるよな」


そう思い、ドギーは相手を観察する。

指揮官は必ず近くにいる。

目を凝らして、彼らの動きを凝視する。


・・・そして見つけた。

手だけを動かし、指示を出している男を。

アイツが、この山賊の首領だ。


大石の上に飛び乗るドギー。

そして、首領が近づいたのを確認し・・・飛び降りた。

同時に剣を下に構え、突き刺すように首領を狙う。


「何・・・!?」


ドギーの影に気づき、後ろを振り向いた時にはもう遅かった。

剣は肩口から刺さり、心臓部まで到達し。

首領を即死させた。


「残念だったな!」


大声でそう叫ぶと、一斉に振り向く山賊たち。

その目線の先には、死亡した首領が見える。


――――――――――――――――――――


山賊の攻撃が散漫になる。

同時に、彼らの攻勢が一気に鈍った。


「・・・ドギーだな、よし、やるぞ!」


今度はこっちから打って出る番だ。

コトハと共に、石の後ろに隠れた山賊に突進する。


首領がやられた山賊は烏合の衆と化し。

一人二人と斬られると、蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。


「ドギー、お手柄だな」


「お手柄はセオドアだよ・・・あいつが人影を発見したんだからな」


そういうと、後方の馬車を警護していたセオドアがこちらに来る。

その鎧の繋ぎ目には、数本の矢が刺さっていた。


「だ、大丈夫かよセオドア?」


ドギーがそう聞くが。

セオドアは何事も無かったように矢を引き抜き始めた。

その矢の先端には、血は一滴も付いていない。


「問題ない。貫通はしていない・・・」


鎧を叩くセオドア。


「も、もう終わったんですか?」


商人が馬車の下から出てくる。

そして、矢だらけになった馬車を見る。


「うわぁ・・・こりゃ酷い」


馬が無事だったのは幸いだ。


「荷は無事のようだ・・・助かりましたよ」


「いや。これが仕事だ・・・それより、急いだ方がいい」


他の山賊に狙われる可能性もある。

すぐに離れた方がいいだろう。


「ええ、もちろんですよ!」


馬車に刺さった矢を引き抜きつつ、商人が言う。

何本か、目立つものを抜くと、馬車に乗った。

それに続き、俺達も乗る。


「この時間なら、ワーレスには夕方前には入れるはず。急ぎますよ!」


馬の手綱を操り、走らせる。

後ろの馬車もそれに続いた。


――――――――――――――――――――


ダンジョンの街ワーレスが見えてきた。

山間部を通ってきたので、何処にあるかと思ったら。

・・・丸ごと、山間部がワーレスという街になっているらしい。

山の斜面にくっつく様に複数の民家と、宿、武器屋や防具屋。

山の下、平地には高級住宅街が並んでいる。


そして、一際目立つ建物。

冒険者ギルドとダンジョンの入り口が一体になったどでかい建物。

・・・ここが、その、形状が変わるというダンジョンか。


「ようこそ、ワーレスに」


商人がそう言った。




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