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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
33/53

ワーレス道中

商人の話を聞きながら、ワーレスへと向かっている。

恰幅のいい商人は、俺がボーペリアの出身だと聞くと、辺りの紹介を始めた。

指を指しては、場所の名前や名所などを教えてくれる。


「今向かっているワーレスは、冒険者の街として知られているのですよ」


「冒険者の街?」


「ええ、ダンジョンを街の売りにして、その冒険者に必要な物資を売る。

 今では、ワーレスのみで生計を立てている冒険者もいるくらいですよ」


そう言って、商人は後ろに積んである物資を見る。


「今回積んでいるものも、ほとんどがその冒険者向けのもので。

 至急必要だと言われたので、急いでかき集めたんですが・・・いやはや」


強盗のせいで、簡単には出発できなかったとのこと。

まあ、これだけの物資だ。

それに、話を聞くとワーレスとはかなりの量の物資の行き来がある。

強盗もそれを狙い、現れるのだろう。


「ところで・・・あなたたちもワーレスに行く予定で?」


「ああ、少しな」


「そうでしょうね、冒険者なら一度は見てみたいと思うでしょう?」


入る度に形が変わるダンジョン。

確かに、興味はある。


「お主、武器商か?」


後ろの物資を見たコトハがそう言う。


「ええ、そうですよ。しがない武器商ですがね」


「しかし、どれも質が悪そうじゃ。ほれ、これなんて先が欠けておる」


「ほんとですね・・・」


キーラもコトハが取り出した剣を見ていた。


「そんなものでも売れるんですよ、それだけ物資が足りてないんですよ」


あんな、先が欠けた剣でも買う奴がいるのか?

どう見ても不良品に見えるし、切れる様な武器には見えない。


「ダンジョンの中で、武器が折れたら一大事ですよね?

 買い足しするにも、ダンジョンから抜けなければならない・・・」


確かに、そうだな。

武器が折れた時点で、引き返すのが賢明だ。

無理に奥に行こうとするのは自殺行為に当たるだろう。


「ですから、質の悪いものでも、使えそうなら持っていくんですよ。

 予備としては、質が悪いものでも足りますからな」


商人はそう言うと、俺の腰に下げている剣を見た。


「ほう、中々良さそうな剣を持っていますね」


「これか?」


「鞘は大抵、雑に作られますが・・・その鞘は作り込まれている。

 中に入っている剣も、それ相応のものでしょう」


確かに、これを作ってくれたカリーナの腕は相当のものだ。

この剣も、本来なら業物の剣だろう。

なのに、彼女は格安で売ってくれた。

・・・目の前の商人にそのことを言うと、買いに行くかもしれないな。


「まあ、私のようなケチな商人が扱うものじゃないですな。

 武器商人は欲張り過ぎないのが長生きする秘訣ですよ」


そう言うと、馬車の手綱を操作する。


「欲張りは身を破滅させますからな。

 特に、ワーレスではそれが顕著に出る街」


「出る杭は打たれる・・・かの?」


「ええ、身分相応の行動をするのが、賢いやり方ですよ」


商人は頷くと、コトハの顔を見る。


「ダンジョンでも、無理をせずに行動するのが賢いやり方。

 強欲な者は身を亡ぼす、そう言う事ですな」


――――――――――――――――――――


馬車を走らせること数時間。

夜も更けてきた、周りも見えてこなくなった。

・・・途中から、馬車が揺れるようになってきた。


「既に山道に入っているのか?」


「ええ、この山の山腹に宿がありますので」


なるほど、今日はそこに泊まるのか。

しかし・・・揺れからすると相当な山道だ。

馬車の後ろに積んである大量の武器や防具も揺れの度に弾んでいる。

・・・荷崩れしないといいが。


ランタンの灯りのみが、暗闇を照らすが。

目の前の道も見えない程しか、視界が確保できていない。

商人は慣れているのか、そのまま飛ばしているが。

これは、俺達だけで行かなくて正解だったかもしれない。


――――――――――――――――――――


しばらく山道を走っていると、目の前の視界が広がった。

先ほどまでは、闇ばかりが広がっていたのだが、

今は目の前にぽつぽつと光が見え始めた。


「山の宿ですよ、ここで一泊していきましょう」


馬車がそのぽつぽつと見える光に向かっていく。

少しづつだが、闇の中から見えてきた。

確かに、宿がそこにあった。



馬車を留め場所に商人が置く。


「なあ、商人よ」


「なんですか、コトハさん」


「・・・この状態で、馬車を置いていったら危険じゃないかの?

 ここは、強盗も多いのじゃろ?」


商人は笑うと。


「ああ、大丈夫ですよ。この付近は強盗も出ないよう、色々と仕込んであるので」


仕込む?

商人がある方向を指さす。


「この周辺には、強盗が近づけない様に傭兵が国から派遣されてるんですよ」


指さした先には、小さな小屋がある。

そこから、数人の男の影が出たり入ったりしていた。


「彼らが、この周りの警護をしている、と?」


「ええ、強盗が増える一方なので・・・特にこの宿や周りは酷かったんですよ」


まあ、格好の的だろう。

馬車は止めてあるし、夜なら馬車に人はいない。

盗むのなら、ほぼノーリスクで盗める状態だ。


馬車から全員が降りると、屈強な傭兵が馬車留めの近くの椅子に座った。

・・・彼は、一晩中ああやって警護するのだろうか?


「さあ、宿に到着しましたよ。素泊まりのみですが、休んでいきましょう」


商人がそう言うと、宿の扉を開けた。


――――――――――――――――――――


素泊まりとは、言葉のままだった。

食事は無し、ただ寝る場所を提供するだけの場所。

しかも・・・コトハとドギー、セオドアと一緒の部屋だ。

要は・・・狭い中で四人が寝ることになる。

まあ、その商人も余計な出費はしたくないのだろう・・・。


キーラは別の部屋を取ったらしい、自費で。

俺達も、自分で借りた方が良かったかもな・・・。


することも無かったので、ベッドに横になった。

幸い、ベッドは二つあったので・・・俺とコトハ、ドギーとセオドアで寝ることにした。


「いいなー・・・俺もコトハさんと寝たいぜ」


「お断りじゃ。・・・それよりもセオドア、お主・・・床で寝る気か?」


「・・・」


無言で床に胡坐をかき、寝ようとしているセオドアにそう声を掛けるコトハ。


「悪いか・・・?」


「お主な・・・はあ、鎧を取ったらどうじゃ?」


「断る」


即断すると、腕を組んで寝始めた。

それを呆れるように見るコトハ。


「まあ、よいか・・・主様」


腕に抱きつくと、ベッドに押し倒された。


「おっぱじめるなら、俺は耳を塞ぐぜ」


「横に他人がいるのに、そんなこと出来るのは変態位だろ!」


「・・・だな、お休み」


ドギーは疲れていたのか、俺の突っ込みに大した反応も示さずに寝てしまった。

腕に抱きついたコトハも、眠かけでウトウトしている。


・・・明日の朝も早い、俺も寝よう・・・。

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