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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
32/53

ダンジョンが売りの街

結局その日は、キーラの家に泊めてもらうことにした。

そして、次の街であるワーレスへの距離と移動経路をキーラに確認する。


「ええと・・・大体、3日ですね。

 途中、山を越えないといけないので、馬車だとそれくらい掛かりますよ?」


「なるほど、それで最短か」


キーラの家の机の上に、地図を広げて確認しあう。

ワーレスという街はそこそこ遠い、山を越えなければいけないという条件も重なる。

山を迂回したら5日以上かかる、そこまで悠長には出来ないだろう。


眼鏡のズレを直すキーラ。

そして、手元にあるコーヒーを一口飲む。


「他にも道はあるんですけど、危険な道も多いんです」


そう言うと、地図にバツを付けていく。

どうやらそこが、危険区域になっているらしい。


「輸送する馬車を襲う賊が活発化しているとか。

 ワーレスへの行商人も困っているって聞きますね」


なるほど。

仕事を受けるついでに、ワーレスに行くという手もあるか。


「うむ・・・我々もこの国の事は詳しくない。

 出来れば、誰か詳しい者と一緒に行った方がいいの」


「ああ」


ドギーは詳しそうだが、ワーレスの事を知っているとは限らない。

道案内は出来そうだがな・・・。

セオドアなら、大丈夫だろうか。


――――――――――――――――――――


朝方、キーラの家の扉を叩く音で目が覚めた。

客間で寝ていたのだが、ベッドが一つしかなく。

コトハは俺の腹の上で寝ていた。


「・・・」


コトハを横に寝かせ、立ち上がる。

キーラは・・・客に応対する気はなさそうだ。

足音も聞こえない。

しょうがない・・・代わりに出るか。


玄関先まで出ると、ドアの前に人影が見える。

このシルエットは・・・。

ドアを開くと、ドギーが立っていた。

後ろには、セオドアも立っている。


「おう、起きてたのか?」


「ああ・・・キーラはまだ寝てると思うぞ」


家主は今頃ベッドの上だろう。

昨日も夜遅くまで作業をしていたみたいだしな。

・・・もしかしたら、床で寝ている可能性もあるが。


「なんだ、せっかく解読が終わったのかって聞きに来たのによ」


そう言うと、面白くなさそうにドギーは空を見た。


「解読なら、一部終わったぞ」


そう言って、昨日の紙きれを見せる。

そして、ワーレスの事も話す。


「ワーレスか、行った事は無いな」


「そうなのか?」


「ああ、何でも・・・入る度に形が変わるダンジョンがあるらしいぜ?」


「は?」


なんだそれは。

入る度に構造が変わるって事か?


「なんでも、最奥にはお宝が眠っているとか。

 数多くの冒険者が挑んでは、諦めてるとか」


・・・暗き澱みは、そのダンジョンのボスなのか?


シルフは悪戯好きな精霊だと聞く。

鍵を隠した場所も、意地の悪い場所に隠しているのだろう。

だとすれば・・・毎回形が変わるダンジョンに隠してもおかしくはないか。


「ドギー、俺達はワーレスに行こうと思っている」


「だろうな、俺もついていくよ」


後ろのセオドアを見るドギー。

セオドアも頷いていた。


「それで提案なんだが」


――――――――――――――――――――


セオドアと一緒に冒険者ギルドへ向かう。

ワーレス行の警護任務か、配達が無いか確認するためだ。


「ワーレス行き・・・は、これになりますね」


受付嬢が渡してきたのは、ある商人の警護任務だった。

行先はワーレスの近郊、移動方法は馬車。

・・・丁度いいな。


受付嬢に依頼を受けると言うと、場所と時間を指定された。

なんでも商人の方も急ぎの用件らしく、すぐにでも出立したいとのこと。

昼前には出発する手はずになった。



キーラの家に戻り、コトハとドギーに説明する。

コトハは頷き準備を始めた。

ドギーとセオドアはいったん実家に戻り、遠出の準備をするという。


「あ、あの・・・解読の方はどうしましょうか?」


キーラがそう声を掛けてくる。

そうか、残りはまだ終わっていなかったな。


「なあ、その解読はここじゃなきゃできないのか?」


「え?あ・・・まあ、この紙さえあればどこでもできますよ。

 解読自体は終わっていますから、後は単語を並び替えるだけで」


そう言うと、単語を羅列したあの紙を取り出す。

・・・そうか、じゃあ、何処でもできるという事か。


「なら、俺達についてこないか?」


「え?」


「おお、それは良いの。放っておくと死ぬかも知れん・・・このエルフは」


心配そうにキーラを見るコトハ。


「で、でも、足手まといになりますし・・・」


そう言って、不安そうに俺達を見る。


「何も、戦闘に参加しろと言っているわけでは無いぞ」


「ああ。それに、ワーレスでも精霊文字を読まないといけないかもしれない」


「精霊文字を?」


俺は頷いた。

シルフへの鍵を手に入れるつもりでワーレスに向かうが。

その鍵を手に入れるために、もしかしたら精霊文字が必要になるかもしれない。

その為にも、キーラの力が必要だ。


「・・・新しい精霊文字が見つかるかも・・・でも、危険だし」


一人で何かぶつぶつ言いながら、頭を抑えたり、しゃがんだりしている。

・・・この光景、他人から見たら変人に思われるな。


「煮え切らん奴じゃな!主様、引っ張ってでも連れて行こう!」


「え?だが」


「強引に引っ張った方が、キーラの為にもなる。

 さあ、行くぞキーラ」


そういうと、コトハは小さい身体でキーラを部屋に引きずり込んでいく。


「え?あ・・・ちょ、ちょっと・・・」


成すがままに引きずられていき、扉が閉まった。

・・・まあ、コトハに任せるか。


しばらく、扉の先からバタバタと聞こえていたが。

ある時を境に、静かになった。

そして開かれる扉。


「やれやれ、余所行きの服をほとんど持っておらぬのか」


「しょ、しょうがないじゃないですか・・・研究者ですよ?」


「それは、理由になっておらんぞ・・・」


キーラはセーターと白衣姿から、私服に変わっていた。

手には大型のバッグを一つ。


「行くのか?」


「は、はい・・・ちょっと、怖いですけど。

 新しい精霊文字を発見できるなら、行ってみようかなと」


「いや、精霊文字があるとは限らないんだが・・・それでもいいのか?」


「たまには、外に出た方がいいですし・・・フィールドワークですね」


まあ、キーラが自身で行きたいというなら止める気はない。

それに、彼女は理知的な女性だ。

その知識が、ワーレスでも役に立つだろう。


――――――――――――――――――――


準備に帰ったドギー達と合流し、商人の待つ郊外へと向かった。

既に、馬車に荷物を積み終えた商人がこちらを待っていた。


馬車の数は2台、両方とも後ろには大量の荷物を積載している。


「おお、ようやく来たか。ささ、早く出発しましょう」


商人はそう言うと、馬車に上り手綱を握る。

俺とコトハ、キーラは商人の乗る馬車に。

ドギーとセオドアはもう一つの馬車に乗った。

あっちの馬車には御者がいるみたいだが、その顔は不安そうにしていた。


「いやはや、ワーレスまでは盗賊が多いと聞く。

 どうか、よろしくお願いしますぞ」


恰幅のいい商人はそういうと、馬車を進める。


・・・何事も無く着けばいいが。

後ろの大量の荷物を考えるに、襲われる可能性は高いだろうな。


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