精霊文字が語るもの
遺跡を後にし、早速キーラの元へ4人で向かう。
ドアを叩くが応答なし。
・・・ノブに手を掛けると、簡単に開いた。
「不用心な」
「前もそうだったが、改善してないな」
勝手知ったる・・・とは言わないが、さっさと中に入る。
「おいおい、いいのかよ?」
「中で倒れてる可能性もあるだろ?」
ドギーにそう返すと、なるほど、と納得された。
ドギーも扉を潜るが、セオドアはその場に立っていた。
「セオドア?」
「いや・・・汚いな、と思ってな」
「そんなこと気にすんのか?そんな鎧着てさ」
そういうドギーの頭に拳骨を落とすセオドア。
「痛ってえええ!」
そう叫んで、キーラの家の庭に転がるドギー。
頭には、大きなこぶが出来ていた。
「あのなドギー。セオドアが綺麗好きなのはお主も知っておろう?」
「だけど、沼地やもっと汚れる場所でもずんずん入っていく奴だぜ?
このぐらいの汚れなんて、何とも思わないんじゃないのか?」
「・・・家が汚れているのと、外の汚れは別じゃ、馬鹿者」
そういうと、コトハは家の奥へと入っていった。
セオドアも、躊躇したが中に入っていった。
「おまえも、一言多いよな・・・ドギー」
「うるせえ」
頭をさすりながらドギーが立ち上がる。
部屋の奥、キーラの部屋では。
床に転がっているキーラがいた。
それを見つけた瞬間、最悪の状況を考えたが。
「ふへへえ・・・もう、飲めましぇん」
・・・心配して損した。
近付いて、しゃがむ。
肩を揺すり、名前を呼ぶが。
「・・・まーだー・・・眠るのぉ」
器用な寝言だな、おい。
しかし、床で寝ているせいか着ているもののはだけ方がすごい。
だが、一切魅力を感じない。
これだけ無精だと、そう言う気も起きないって事か・・・。
「しっかし、エルフってのは貧乳だな」
その場が凍り付いた。
お前・・・。
二度目の拳骨が振り下ろされたのは言うまでもない。
―――――――――――――――――――
何をしても起きないので、セオドアがベッドまで運んでくれた。
コトハと一緒に、部屋を片付けてやっていたのだが。
「主様、これ」
「・・・解読、終わったのか?」
複数枚の紙が乱雑にクリップで止めてある。
その紙には、これまた乱雑にまとめられた文章が書いてあった。
しかし・・・読めない。
断片的には分かるのだが、文章になっていない。
「なんじゃ、この子供が書いたような作文は」
「シルフは、風を纏う精霊で神の・・・神の?」
駄目だ、単語をくっつけたような文字ばかりだ。
読むだけ不毛な気がする。
「キーラしか読めんな、これでは」
「ああ・・・」
起きるのを待つしかないか。
キーラの起きる気配が無い。
しょうがない、掃除でもして待ってるか。
そう思い、ドギーとセオドアに相談すると。
「まあ、暇つぶしにはいいかもな」
「・・・ここにいたら病気になるぞ、さっさとしよう」
とのことだ。
――――――――――――――――――――――
「んぅ・・・っは!」
目をばっちりと開けたキーラが、辺りを見渡す。
ベッドの上で寝ている自分。
「あれ・・・ベッドで寝たかな?」
そう思いながら、床に足を付けて立ち上がる。
着崩れた服を直すと、音が聞こえてきた。
「ま、まさか・・・強盗!?」
「強盗とはずいぶんなものいいじゃな、キーラ」
箒をもって、エプロンを付けた少女が目の前に立っていた。
「あ、コトハさん?」
「心配になって来てみれば、床で寝ているお主がおったんじゃ」
そうだ、解読途中に意識が途絶えた。
そっか、そのまま寝てたんだ。
「あ!解読の途中!」
コトハの横をすり抜けると、解読をしていた部屋に戻る。
「やれやれ・・・」
その後ろ姿を見るコトハ。
溜息を一つ吐くと、その後を追った。
キーラは、先ほど乱雑にまとめてあったものを、清書し始めた。
「実は、全部解読は終わったんですけど。
文章にするのを後回しにしてたんです」
眼鏡のズレを直しながら、清書を始めるキーラ。
思った以上に、綺麗な字で清書していく。
「もう少しだけ、待って下さい」
そうは言うが、ゴイア教がすでに動き出している。
・・・急がないと、手遅れになる気もする。
「すまないが、シルフの部分だけを先に翻訳してくれないか?」
「え?それは、構わないですけど・・・少し待って下さいね」
クリップ留めした紙を捲り、そこから清書を始める。
これだと、もう少しかかりそうだな・・・。
時間は夕方を過ぎ始めている。
「・・・ドギー、食事を取ろうかと思うんだが、どうだ?」
「同感だ、飯にしてからでも遅くなさそうだしな」
――――――――――――――――――――
キーラ分の食事を作るために、キーラの家の台所を借りる。
ドギーとセオドアは既に実家に戻った。
あっちで食べるとのこと。
キーラ分合わせて三人分の食事を作り、テーブルに用意する。
食事を並べていると、フラフラとキーラが食卓の椅子に座った。
「お腹・・・すいたぁ」
「おいおい、大丈夫か?」
最後の肉料理を置き、全員が椅子に座る。
「いただきます」
手を合わせて、食べ始める。
キーラはがっつくように食べ始めた。
コトハは、パンを片手に取り、ゆっくりと食べ始める。
しばらく料理を堪能していると、キーラが。
「あ、翻訳ですけど、大体終わりましたよ!」
そう言って、紙きれを渡してきた。
内容は。
『風の精霊の鍵は、暗き澱みに眠る。澱みは輝く遺跡の底に這いずる』
「澱み?」
「これだけだと分からんの・・・キーラ、輝く遺跡というのは?」
「んぐ・・・えっと」
食べているものを咀嚼し、飲み込むキーラ。
「輝く遺跡は、シルハ国の南方にある、ワーレスという街の観光資源ですよ。
ただ、暗き澱みなんて、聞いたことも無いんですけど」
「・・・ワーレス」
その街の、輝く遺跡のどこかにあの門を開ける鍵があるという事か?
だが、次の行き先は決まった。
その『ワーレス』という街に行くことになりそうだ。
「のう、主様」
口の汚れを、拭きながら話しかけてくるコトハ。
「どうした?」
「今日はもう遅い、出発するのは明日の方がよいのではないか?」
「ああ、それはもちろんだ。・・・ただ、ドギーとセオドアには報告しておこう」
もう一度、その紙きれに視線を落とす。
暗き澱みか。
魔物か何かは分からないが。
恐らく、シルフへの門番なのだろう。
「暗き澱み・・・それだけだと何も分からんの」
「ああ、危険な奴かどうかも、な」
とにかく、ワーレスという街に行ってみなければ分からない話だ。
・・・それに、ドギーならワーレスという街の事も知っているかも知れない。
暗き澱みという単語も、知っているかも・・・な。




