遺跡跡での遭遇
カリーナから買った剣と防具を身に着ける。
剣は確認したので、いいものだという事は分かるが。
鎧も、既製品とはいえ、そこそこの性能の物だ。
「主様・・・おお、似合っておるの」
部屋で着替えていたのだが、その様子をコトハに見られた。
俺に近づいて来ると、鎧をペタペタと触る。
「なかなか良い防具じゃ・・・高かったろう?」
「いや、格安で譲ってもらえたよ」
そう言い、腰に下げていた剣を机に置いた。
その剣を触るコトハ。
「・・・なるほど、いい剣じゃな」
鞘から剣を引き抜くと、その刀身を見た。
「無骨じゃが、頑丈そうじゃ。それに、切れ味もよさそうじゃな」
それは俺も思った。
既存品と同じ形はとっているが、そこら辺にある武器とは違う。
カリーナは、名のある鍛冶屋じゃないか、とも思えるほどの出来だ。
コトハは剣を鞘にしまう。
「そうじゃ、セオドアがこの紙を渡してくれと言っておった」
「ん?」
一枚の紙きれを渡される。
それには依頼場所の地図と。
そして先に行く、後で来てくれという端書。
「そうか、もう向かったのか」
青い薬草を取りに行くとのことだった。
俺達も、準備をしたら急いで出た方がよさそうだ。
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キンカシャ郊外の遺跡跡。
元は城塞だったようで、その名残の石段が見える。
石で出来た建物は原型をとどめていたが、苔が生え緑色に染まっていた。
「ドギーはどこに居るのじゃ?」
少なくとも、外側にはいないようだ。
・・・建物の中だろうか?
原型をとどめているとはいえ壁には穴が空き、扉は朽ちて倒れている。
その穴の一つから、内部へと侵入する。
侵入すると同時に、苔独特の臭いが鼻をついた。
中は・・・穴のお陰で日光が入り、見通しは良い。
地下へと続く階段があるだけの広い空間だ。
・・・しかし、ドギーとセオドアの姿は見えない。
「いないな・・・」
階段の下にでも降りて行ったのだろうか?
持ってきた松明に火を灯し、階段を照らす。
火で照らされた階段。
しかし、下までは見えない。
「行ってみるかの?」
「ああ」
松明を左手に持ちながら、階段を降りて行く。
右手は、腰に下げた剣の持ち手に掛けながら。
そこそこ長い階段を降りて行くと、真っ暗闇が目の前に広がる。
その先に、松明の光が複数見える。
「・・・なんだ?」
目を細めて、その先に何がいるのかを見ようとするが。
その行為は、後ろからの衝撃で中断された。
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「ぬぁ・・・!」
首に手を回され、後ろへと引きずられる。
その腕には見覚えがあった。
「何してんだお前ら・・・!」
ドギーの声が響いた。
階段の影まで引きずられると、離された。
そこには、セオドアの姿もあった。
「げほ・・・何するんだ、ドギー」
「静かにしろ、あの先にいる奴ら・・・やばいんだよ」
さっき見えた、松明の奴らの事だろうか。
だが、遠すぎて何も見えなかったが。
「この遺跡に地下迷宮が広がっていたのは知っていたが・・・
まさか、ゴイア教がこんなところにいるとはな」
「ゴイア・・・奴らがここにいるのか?」
「ああ」
セオドアが頷いた。
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俺達と合流する少し前の話。
ドギーとセオドアは先にこの遺跡で薬草の採取をしていたらしい。
必要量の半分が集まったぐらいの時。
全身黒づくめの男女が複数人、遺跡に入ってきた。
そして、この遺跡の地下に広がる地下迷宮へと入っていたと。
後を追いかけ、隠れていたら・・・俺達が降りてきて、見つかりそうだったから、
口を押えて後ろに引きずったらしい。
「・・・じゃあ、あそこにいる奴らは」
ゴイア教の奴らか。
「お前の言っていた、精霊文字に関係あるのか?」
「あるかもしれないが・・・今の所は奴らの狙いが分からん」
だが、この遺跡に何かあるのだろう。
四大精霊の遺産にも関係あるかもしれない。
「主様、どうする?」
「・・・隠れて、様子を探ろう」
「賛成だ。あいつらと関わるのは避けた方がいいけどな」
ドギー達と階段の傍から離れ、壁伝いに彼らの後を追う。
少しずつ近づくと分かってきた。
彼らは十数人で、地下迷宮をうろついている。
まるで、何かを探すように。
「・・・一体、何を探してるんだ」
「さあな・・・だが、嫌な予感がするぜ」
すると、黒いローブの動きが一つの流れになった。
・・・何か、見つかったのか、そちらに向かっているらしい。
俺達は、陰に隠れながらゴイア教の奴らの後ろをついていった。
嫌な予感が頭によぎりつつも、後を追う。
すると、ある大扉の前で彼らの動きが止まる。
「精霊の門」
「おお、精霊の門だ」
何人かが片膝をついて祈りはじめ、一人の男が扉に触れる。
「シルフの鍵は見つかったか?」
「いえ、この地下迷宮のどこかにあるとの話ですが」
「・・・すぐに探し出せ、遺産を手に入れるためにも、彼女の力が必要だ」
「は・・・!」
黒いローブの人物が複数、その場から離れる。
その様子を見たドギーが呟く。
「シルフだって?あの、伝説の四大精霊の事か?」
「そのようだな・・・」
セオドアも、その様子を見て呟いている。
シルフ・・・か。
「だが、コトハの話だと、四大精霊は既に姿を消しているって聞いたが」
「ああ、そのはずじゃ・・・シルフも姿を消したはず」
だったら、彼らの狙いは何なんだ?
シルフが遺した、何かを狙っているのだろうか?
「だが、これ以上はまずいな・・・一度、下がろうぜ」
ドギーがそう言うと、セオドアは頷いた。
俺も、コトハも頷く。
ここでやりあうのは得策じゃない。
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地下迷宮を抜け、階段を上がった先。
警戒しながら外を見たが、誰もいなかった。
どうやら、ゴイア教の奴らは全て地下迷宮の探索をしているらしい。
「心臓に悪いぜ・・・まったく」
「しかし、彼らは一体何を探していたんだ?」
「俺に聞くなよ」
ドギーがやれやれと肩をすくめる。
「・・・だけど、奴らが何かを狙ってるのは事実だな」
セオドアはその言葉を聞いて頷く。
「シルフに関する何か・・・を探しているのだろう」
「主様、どうするのじゃ?
・・・放っておくわけにもいくまい」
「ああ、だが・・・あの数だ、正面切って戦うのは不利だろうな」
奇襲するという手もあるが。
「・・・ちょっと待て、誰か上がってくる」
ドギーがそう言うと、全員に隠れるように言った。
近くの瓦礫に身体を隠す。
しばらくすると、黒いローブの集団が階段から上がってきた。
だが、手には何も持っていない。
「鍵は、『大いなる流れの先』」
「探すぞ・・・」
そう呟くと、遺跡を去っていく集団。
「大いなる流れの先?」
「鍵が見つからなかったって事か」
一安心だ、彼らに何かが手に入るという事態は避けられた。
しかし、大いなる流れの先?
「キーラの解読が頼りかもしれぬな」
「ああ・・・そうだな」
あの紙に、その事も詳しく書いてあるんじゃないだろうか?
・・・今から、行ってみるか。




