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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
28/53

竜の目とシルハの女武具屋

コトハと歩きながら話したことを、ドギーにも話した。


「明日?ああ、いいぜ。改装工事もほとんど終わったし」


快諾してくれた。

・・・後は、何の仕事をするかだが。


「なあ、ドギー・・・Dランクの仕事は、Eランクとは変わってくるのか?」


「ん?基本変わらないぞ。ただ、魔物の強さが上がるけどな」


じゃあ、オーガやメイジゴブリンなんかともやりあう可能性があるのか。


「まあ、俺が何個か見繕ってやるから、任せな!」


そう言って親指を立てるドギー。

・・・多少不安もあるが、まあ・・・任せてみるか。


――――――――――――――――――――


次の日の朝。

俺は隣に寝るコトハを起こすと、リビングに向かった。

既にドギーの婆さんは起きており、食事の支度をしていた。

それを見たコトハが手伝いに行く。


椅子には、ドギーとセオドアが座り何かを話している。


「だから、こっちの仕事の方が割がいいだろ?」


「・・・それは危険だ、『竜の目』に近すぎる」


「いやいや、近づくだけで入るわけじゃないだろ?」


「ウィンドワイバーンの巣も出来たと聞く、危険だ」


・・・どうやら、依頼書を何枚か持ってきたようだ。

セオドアと言い合っているドギーと目が合う。


「おお、起きたか。早速仕事を探してたんだけどよ」


俺にも何枚かの依頼書を見せてくる。

昨日のと同じ薬草の採取作業や、荷駄車の警備任務。

そして、セオドアが濁していたらしき、討伐任務。


「はぐれオーガの討伐?」


「ああ、群れからはぐれたオーガが、近くの畑を荒らし始めた。

 そいつの討伐なんだけどさ、セオドアが反対するんだよ」


「・・・そいつのテリトリーが『竜の目』に近すぎる。

 私は、反対だ・・・危険が大きすぎる」


セオドアはそう言うと、他の依頼書も確認し始めた。


「竜の目?」


「ああ、そっか。レオはシルハの出身じゃないから分からないか。

 竜の目は、シルハ国の名物みたいなものだよ」


名物?

セオドアは危険だと言っていたが、なんなんだ?


「元々、シルハ国は渡り竜が多い国。

 竜が重点的に巣を作る場所を、竜の目と呼んでいる」


渡り竜、か。

渡り鳥と同じように、寒い気候に弱い竜達が一斉に別の大陸や、

温暖な気候の場所を目指す「渡り」を行う竜達の事だ。


「ゆえに、強い魔物が巣の跡に巣食うことが多い。

 ・・・竜の目には、魔素が溜まりやすいからな」


「魔素じゃと?・・・厄介な言葉を聞いたの」


魔素は、魔物が大量に集まったり、巨大な巣を形成すると溜まる、物質だ。

紫色のクリスタルで、魔物にとっては自らの力を高める、ドーピングアイテムだ。

そうか、渡り竜が集まることで、魔素が形成され。

居なくなった後に、魔物がそれを求めて集まる・・・ということか。


確かに、それは危険地帯だな。

通常よりも強化された個体がいてもおかしくないだろう。


「だけど、キンカシャに近いからってことで、近いうちに討伐作業が始まるだろ?」


「それまで待てばいい。・・・我々がリスクを負う必要はない」


そう言うと、セオドアが立ち上がる。

ドギーはつまらなさそうに、セオドアを眺めていた。

・・・まあ、色々言っても、セオドア言うことは聞く。

いいコンビだよな・・・。


「竜の目はどのあたりにあるんだ?」


「え?ああ・・・あそこ」


壁に飾ってあるキンカシャの地図のある部分を指さすドギー。

その部分は、俺が依頼を受けた、不死の薬草の場所に近かった。


「・・・あの時のオーガ」


ハーピーに襲われていたあの集団にいたオーガ。

まさかと思うが、はぐれオーガというのは奴か?

だが、オーガと言ってもかなりの数がいる。

・・・まさかあいつではないだろう。


――――――――――――――――――――


セオドアと一緒に、ギルドに向かった。

採取依頼を引き受けるためだ。

ドギーとコトハは改装工事とその片付けをしている。


ギルドから出てくる俺達。

採取するのは、青い薬草とのことだが。

・・・場所が分からない。

依頼書にも書いていないのだが、セオドアには心当たりがあるようだ。


「キンカシャの外れの遺跡跡に生えている。

 竜の目からも遠い、安全だろう」


「なるほど、それなら簡単そうだな」


セオドアが俺の身体や顔を見る。


「なんだ?」


「いや・・・そろそろ、武器や防具を新調した方がいい。

 ボロボロになってきているぞ」


「あー・・・そうだな」


剣も、防具もボロボロになりつつある。

剣もしょっちゅう研いではいるが、刃こぼれが直りにくくなってきた。


「いい武具屋を紹介する。今からでも、見てきた方がいい」


「そうするよ・・・ありがとな」


「・・・いい武器と防具は所有者を守る。

 コトハさんを悲しませないためにも、気を付けるべきだ」


「あ、ああ・・・わかった」


驚いた。

普段何を考えているか、分かりずらいセオドアだが。

こう言っては悪いが、セオドアは恋愛事には疎いと思っていた。

・・・まあ、コトハを悲しませたくないのは事実だ。

武具屋に行ってみるか。


――――――――――――――――――――


セオドアに勧められた武具屋。

それは、スラム街の外れに存在していた。

見た目は普通の武器屋に見える。

武器の看板を掲げているし、これと言って普通だと思うんだが。


店のドアを開くと、ベルがチリンチリンと鳴る。


「いらっしゃーい」


店の主人は若い女性だ。

顔を煤で汚しながら、溶鉱炉の前で鉄を打っていた。

真っ赤に熱した鉄を何度か叩くと、溶鉱炉の中に戻した。

首に掛けていたタオルで顔を拭くと、こちらを見た。


「何をお探し?」


「ああ、実は・・・武器と防具を探している」


そう言って、自分の剣を差し出す。

女性はそれを受け取ると、鞘から引き抜いて、刀身を見ている。


「大分使い込んでるね、何度も研いだ跡が残ってるし。

 刃こぼれも・・・かなり進行してるね、買いなおした方がいいよ」


そう言うと、鞘に戻し、手渡してくる。


「ああ、だから・・・見繕ってほしいんだが」


「うーん、そうだね」


俺の全身を舐めるように見る女性。

・・・少し恥ずかしいんだが。


「なかなか鍛えてるね、だとしたら・・・もう少し重い剣でも大丈夫じゃないかな」


そういうと、剣が大量に置いてある、円筒状の物入れから、何本か取り出す。

それを手渡される。


「試しに振ってみなよ」


「ああ」


一本目は、前使っていた物よりも長めの剣。

振ってみるが、確かに重い。

いや、重さ自体はそこまで変わらないが、長いせいか、振った際の重みが全然違う。


「ふむ・・・なるほど。じゃあ、次だ」


剣を交換する女性。

次は長さは一緒だが、重い。

振ってみる。

今度は重すぎだ・・・振った後の構え直しに隙が出来る。


「・・・重すぎだね、だけど。

 君の力ならこれくらいの剣の方が合ってるはずだけど」


「軽い剣の使いすぎか?」


「だと思うよ、まあ・・・それも悪くない選択肢だけど」


そう言うと、次の剣を渡してきた。

先ほどのよりは軽いが、それでも少し重く感じるな。

だが、取り回しは良さそうだ。


「・・・これならよさそうだね、ふむふむ」


俺から剣を取り上げると、その剣を机に置く。

そして、何やら図面を書き始めた。


「何してるんだ?」


「新しく作るんだよ、あんたに合った剣を作るためにさ」


既存品を買うつもりでいたんだが・・・。


「・・・ちなみに、いくらだ?」


「ん?そうだね・・・」


俺の腰のあたりを見る。

Dランクの証を見ると、にっこりと笑った。


「安くしとくよ、Dじゃ、稼ぎも少ないだろうからね」


・・・それは、助かる。


「まあ、すまないと思うなら、稼げるようになってから返しにくればいいさ」


そう言うと、図面を引き始める。


「ただ、私の作る武器は癖があるからね。・・・返品は効かないから、そのつもりで」


「あ、ああ・・・」


図面を引きながら唸る彼女を見て、俺は武具屋を後にした。


・・・あの人なら、いい武器を作れる。

そんな感じがする女性だ。


まあ・・・稼げるようになったら、必ず返そう。

出世払い、というやつで。


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