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田舎冒険者と白狐  作者: 倉秋
シルハ国編
25/53

研究者キーラとドギー達

目の前の女性。

ベンチで寝ているエルフの女性が、その・・・キーラという翻訳家なのだろうか。

だが、起きる気配がない。


「むう、気持ちよさそうに寝ておるの」


「ああ・・・起こすのも、可哀そうな位にな」


しかし、ベンチはそこまで大きくない。

・・・寝返りを打ったら、地面に落ちた。


「にゅう!」


変な声を上げて、地面に衝突した。

同時に眼鏡が外れ、俺の足元まで転がってきた。


「・・・あ、眼鏡・・・眼鏡は!?」


起きたのか、地面を触っては眼鏡を探している。


「・・・ほら」


足元まで転がってきた眼鏡を拾い、女性に渡した。

受け取ると、眼鏡をかけ直した。


「ああ、助かりました・・・」


服に付いた土を払いつつ、女性は立ち上がった。


「お主、キーラという名か?」


「ええ、そうですよ・・・どうして知ってるんですか?」


意外そうにそう聞いてきた。

・・・この人がキーラなのか・・・精霊文字を解読できるという。


「精霊文字を解読しようとしている、変わり者はお主しかおらんと聞いた」


「ああ・・・ですよね、変わり者ですよね・・・」


落ち込んでいるように見える。


「じゃが、この紙を解読できるのはお主しかおらぬ」


精霊文字の書かれた紙を取り出すコトハ。

その紙を見た瞬間、キーラの顔が変わった。


「ちょ、ちょっと見せてください・・・!」


ひったくるようにコトハから奪う。

それを食い入るように見つめると。


「ほ、本物の精霊文字だぁ・・・すごい」


「・・・分かるのか?」


「解読には時間がかかりますけど・・・ちょっと来てください」


―――――――――――――――――――――


キーラに招かれたのは自宅らしき場所。

書類が大量に床に落ちている。

壁も、ピン止めされた書類ばかり。

机の上も、汚れた皿や山積みの本で占領されていた。


「・・・汚いのぉ」


「言ってやるな・・・」


その中でキーラはある書類と本を取り出し、机の上の物を床に落とした。

そして、本を広げると・・・解読作業に入ったようだ。


「えーと・・・ふむ、そうか・・・む?」


呟きながら、本と紙を交互に見ながら解読している。

・・・しばらくかかりそうだ。


しかし・・・あの紙には何が書かれているのだろうか?

金の女神像に入っていたものだ・・・何か重要なことが書かれているに違いない。


「なあ、主様」


「ん?」


「・・・解読が終わるまで、外を見て回らぬか?」


「それもいいな・・・キーラさん、しばらくかかりそうか?」


「え、ええ・・・ちょっと、時間かかるかも」


・・・なら、外を見て回るか。


――――――――――――――――――――


キーラさんに一言断って、家から出た。

外は昼頃・・・飯の時間だ。


スラム街にも食堂があるはずだと、辺りを探していたら。

見覚えのある顔が目の前を通りすぎた。


「・・・ドギー?」


「え?あ・・・!レオじゃないか!」


やっぱり、ドギーだった。

シルハ国に戻ると聞いてはいたが、まさかここで会うとは・・・。

顔はペンキで汚れているが・・・何してたんだ、こいつ。


「・・・ああ、顔のこれか?実家の手伝いだよ」


「実家?」


「『緑の薬屋』、それが俺の実家さ。今は改装工事中」


そういうと、手に持っていたペンキとハンマーを見せる。

ああ、改装を手伝っていたのか。


「・・・セオドアは?」


「うん?ああ、手伝ってもらってるよ。アイツの方が、力が強いからな」


そうか、無事ならよかった。

・・・そうだ、精霊文字の話をして見るか。


「なあ、ドギー」


「?」


シルハへ来た理由と、現状を話す。

精霊文字で書かれた紙を見つけた事。

ゴイア教が関わっていること。

そして、今現在解読してもらっていること。


その話を聞いたドギーはうんうんと唸っていた。


「面白そうな話だな、乗った!」


「乗った・・・って、いいのか?セオドアに確認取らなくて」


「いいって、どうせ適当な依頼受けて食いつなごうって、思ってたんだからな」


コトハはドギーを見ると。


「なんじゃ、顔が輝きおったな・・・」


「面白そうな話は大好きだからな?」


そういうと、笑っていた。

まあ、こっちとしても仲間が増えるのは有難い。


「じゃあ、着いてきてくれ、俺の実家にセオドアもいるし」


そういうと、ドギーが歩き始めた。

その後ろ姿は楽しみを見つけた子供のように見えた。


――――――――――――――――――――


『緑の薬屋』は、旅人や冒険者用の回復薬や毒消し薬などを扱う、店のようだ。

現在は改装工事を行っているらしいが、商売自体はやっているようで、

客が入っては、紙袋を持って出てきている。


セオドアは店の外で、板に釘を打っていた。

器用なものだ・・・鎧を着ながら大工仕事をしている。


「セオドア、お客さんだぜ」


「む・・・?レオ・・・コトハか」


手を止めると、ハンマーを置いてこちらを向いた。

変わりなさそうだ。


「偶然、さっき会ってさ」


「・・・こんなスラム街でか?」


「まあ、聞いてくれよ・・・あのな」


ドギーがセオドアに何か話している。


「・・・なるほど、精霊文字・・・か」


「ああ、興味あるだろ?」


セオドアは頷く。

ドギーが満面の笑みでこちらを見る。


「セオドアも手伝うってよ!で、いつ出発するんだ?」


「いや・・・解読が終わらないと、動きようがないんだ」


「何が書いてあるかも分からぬ。最悪、ただの落書きという可能性もあるぞ」


それを聞いたドギーは分かりやすい程肩を落とした。


「えー・・・」


「だから、キーラっていうエルフの女性に解読を頼んでるんだ。

 ・・・まあ、手に入った状況を考えると・・・落書きの可能性は低いが」


だが、何を示しているのかは分からない。

恐らくは、何かの地図か・・・場所が書いてあるんじゃないかと思う。

ゴイア教が狙う、四大精霊の遺産とやらにもかかわりがあるだろうし。


「それじゃ、その解読が終わるまでは・・・お前らも暇なんだな?」


「・・・ああ、まあな。時間が空くようなら、ランクアップ試験を受けようかと」


ギルドでもそう言われていた。

試験を受ければいいと聞いたので、時間があるならそれもいいかと。


「なら、俺んちに泊まりな。その代わり、改装工事を手伝ってもらうけどな」


・・・それは有難い。

まだ宿は取っていないし、キーラの場所には・・・泊まれないよな。

あの汚さだと、誰も寝れない気がするし。


「しかし、いいのか?」


「いいのいいの、こっちは人手が足りなくててんやわんや。

 手伝ってもらえれば有難いんだからな」


そういって、店を見る。


「俺の婆さんが営んでるんだよ、ここ。

 親父とお袋は、ここから離れた場所で他の薬局を営んでるんだよ」


「お前・・・薬屋の家系なのか?」


「意外か?」


ニヤニヤ笑って俺を見ている。

・・・まあ、意外だったな。


「だから、こうやって、婆さんの手伝いをしているのさ」


そう言うと、ペンキを取りだし、壁を塗り始めた。


「・・・」


こいつもこいつで、色々考えてるんだな。

・・・軽薄そうな男だと思ったのは少し訂正―――


「あ、そこのお姉さん。今改装中だけど、今度寄っててよ、安くするからさ」


近くを通った若い女性にそう声を掛けていた。

・・・ナンパするのか、この状況でも。


そして、セオドアに後頭部を殴られていた。


「・・・馬鹿者め」


コトハの呟きはスラム街に消えて行った。


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