シルハへの旅路
昨日両親が用意してくれたテントを馬車にしまう。
色々準備をしていたら、結局昼前に出発することになってしまった。
御者をこれ以上待たせるのも忍びないし、準備が出来次第出発することにした。
「・・・行くのか」
「ああ、次は・・・いつ戻るか分からないな」
親父が俺を手を握る。
「無事に戻って来い。うちの借金なら気にするな。
いつでも戻ってきていいからな?」
「・・・ああ、親父も元気でな」
コトハは、お袋と何か話しているが。
何やら笑っている。
「・・・やれやれ、女の話は長くなって仕方ねえ・・・ちょっと待ってろ」
呆れたように二人に近づくと、何やら話している。
コトハが何か話、頭を下げると、こちらに走り寄ってきた。
「いくのか?」
「ああ、シルハ国に・・・」
馬車を見る。
コトハは二人に手を振ると、馬車に乗っていった。
俺も、一度手を振り、場所に乗り込む。
「・・・行っておいで、レオ」
「死ぬんじゃないぞ」
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馬車が出発して、数時間。
川を越え、丘を越え。
シルハ国の国境が見えてくる。
シルハ国は、商業国家。
そのほとんどが交易や貿易によって、成り立っている海洋国家でもある。
そのため、首都近郊の繁栄は大陸一とも呼ばれ、
ここで手に入らないものは、大陸のどこを探しても無いと言われるほどだ。
道中で一泊挟み、首都に着く頃には昼前になっていた。
「おおー」
コトハが感嘆の声を漏らす。
それもそのはず・・・目の間に広がるのは、大陸一の街。
シルハ国首都「キンカシャ」だ。
発展しているとは聞いていたが・・・。
立ち並ぶような高い建物、整備された地面。
話によると、水道というものが整備されているようで、
一部の地域だと、家で水が供給できるとか。
まずは、冒険者ギルドに向かった方がいいか。
御者に指示を飛ばし、ギルドの前に止めるように頼む。
御者が頷くと、馬車は右へと曲がった。
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キンカシャ冒険者ギルドは2つある。
一つは、金持ちや貴族の依頼を中心にこなす、上級者用ギルド。
もう一つはそれ以外の依頼を扱う、通常ギルドだ。
巨大な街ゆえ、その依頼量も多く、分割しているとは聞いていたが。
その見た目も、天と地の差だった。
上級者用の施設は、煌びやかな装飾を施された、立派なものだが。
通常ギルドの施設は、壁の補修の色がそのままで、階段も一部が壊れている。
直さないのか、という印象が出るほど、痛んでいた。
まあ、俺達は通常の方にしか用事はないだろう。
腰に下げたEランク冒険者の証がそれを示す。
ギルドに入ると、受付は3つ。
・・・張り出されている依頼書も多いが、人数はそこまでいない。
とりあえず、自分のパーティーがこの街にいるという事を言っておかないと。
「すまん、『白狐』のパーティーだが」
「『白狐』ですね・・・えーと」
緑色の髪をした女性が、隣に置いているバインダーを確認する。
指でなぞるように確認している。
「ありました、確かに。Eランク冒険者ですね・・・。
あら・・・でも、レオハルト様?」
「ん?」
「あなた、Dランクへの要求条件を満たしているようですが・・・
どうしますか?適性試験、受けますか?」
・・・そうだったのか。
確かに、色々していたので、ギルドへの貢献度は上がっていたのだろう。
それに、リザードマンを討伐したという実績もある。
「ああ・・・だけど、後でいいか?まず、用事を済ませておきたい」
「分かりました・・・それでは、また後でお越しください」
そういうと、女性は頭を下げた。
「主様、よいのか?」
「ランクアップは後でもできる。その前に・・・エルフを探さないと」
「ああ、そうじゃな。確か・・・首都のどこかに住んでいるとは聞いておったが」
詳しい場所は分からないと。
・・・だが、精霊文字を研究しているという人物だ。
聞きこめば、何か分かるかもしれないな。
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しばらく聞き込みをして、ある程度の情報は集まった。
エルフで研究している人物は、首都の東区域のどこかにいるという事。
女性で、普段から白衣を着こんでいるという事。
・・・そして、人前に出ることが少ないという事。
「・・・見つかるのか、主様?」
「ああ・・・まずは、東区域に行ってみようか」
東区域は、商店街から結構外れた場所になる。
貧民層や日雇い労働の人間が多く住む、スラム街のような様相だ。
すれ違う人も、肉体労働者や、身なりの汚れた人物がほとんど・・・。
「・・・空気も汚れておるな」
「ここは、キンカシャの汚点だと言われていたな・・・まあ・・・」
しょうがないだろう。
これだけ大きい街だ、こういう場所も生まれる。
しばらく歩くと、広場のような場所に出た。
その場所は公園のようになっており、複数の人間がベンチの上で寝ていたり、
ゴザを敷いて商売をしている人もいた。
そして、その中で見つけた。
・・・分厚い眼鏡をかけ、白衣を着てベンチで寝ているエルフ。
目の前まで近づいても、起きる気配がない。
いや、初めて見るな・・・ここまで無防備なエルフは。
「主様、もしかしたら、このエルフが」
・・・翻訳家かもしれないと?
まあ・・・話しかけてみるか。




